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米中日の建艦競争と日本の空母

■建艦競争

 人類史を見れば、紀元前の時代から建艦競争が行われている。海戦で有利に戦うには、軍船の数が第一になる。だから古代から現代まで建艦競争の歴史は長い。帆船の時代が終わり鋼鉄艦の時代になっても、軍艦の数が海戦では求められた。

 敵艦隊と戦うことを目的とした戦術でも数は有利になるが、広大な海を継続的に管制するにも軍艦の数が求められる。自国海軍の支配海域が増えれば、支配海域に合わせて必要な軍艦の数も増加する。勝利を追求する目的は国ごとで異なる。今の平和を維持するための勝利と、新たな平和を勝ち取るための勝利で違いが出ている。それがアメリカと中国。21世紀はアメリカと中国を中心とした建艦競争の時代に突入している。

■アメリカ海軍の長所と短所

 アメリカは海洋国家であり、今の平和を現状維持したい強国である。国際社会の平和は強国に都合が良いルールだから、アメリカ海軍の勝利は今の平和を維持することが目的になる。アメリカ海軍は戦いながら経験を積み重ね、第二次世界大戦では日米海軍が空母艦隊を運用した。日米海軍の空母艦隊運用は苛烈で双方に損害を与えている。

 アメリカ海軍は日本海軍との戦闘で空母艦隊運用のノウハウを蓄積し、他の海軍には無い優位性を維持している。これはアメリカ海軍の長所だ。しかしアメリカの覇権が世界規模になると、アメリカ海軍の戦力でも広大な世界を維持することは困難。アメリカ海軍を世界に展開させると、今度は軍事費が負担になった。

 平時であれば対応できたとしても、2001年に発生した9・11(同時多発テロ)以後から変化が出ている。アメリカは対テロ戦争を開始し、毎年莫大な軍事費が消えた。対テロ戦争では地上部隊が主役であり、アメリカ海軍は脇役の支援になった。だが脇役でもアメリカ海軍を苦しめていた。それは長期化する対テロ戦争により、軍事費が消費されたこと。これでアメリカ海軍に必要な軍事費が減少し、訓練不足などの弊害が生まれるようになる。

■中国海軍の短所と長所

 中国は大陸国家であり、今の平和を否定して新たな平和を構築したい現状打破の国だ。中国海軍の勝利は、新たな平和を構築することが目的になる。しかし中国人民解放軍は国家の軍隊ではなくいわば共産党の「私兵」である。これが中国軍の致命的な欠点で、重要な基地は北京付近だけ。地方には中央直轄の基地しか展開できておらず、中国軍は外国軍との戦闘で不利な立場を最初から持っている。

 中国の省は国であり、中国は国が集まった連邦国家である。だから北京以外の省は外国も同然で、反乱候補の国。だから北京の共産党政府は、他の省に大規模な基地を作ることができない。仮に作れば、現地の省が反乱を起こすと奪われる可能性がある。だから北京の共産党政府は、国境付近の省には必ず中央から直接人民解放軍を派遣する方式にしている。

 これは中国が外国軍と戦うと負ける原因となる。国境付近に重要な基地が不足しているので、中国軍は継続的に戦闘できない欠点を持っている。しかも中国海軍は、大半の艦艇を北京付近の基地で整備しなければならない。これは戦闘の度に、必ず黄海を通過しなければならないという欠点となる。これは戦略上中国海軍の欠点で、出撃も帰還も同じルートだから、日米が黄海に機雷を敷設すれば容易に封鎖されることを意味している。

 中国海軍は急速に建造しているが、大陸国家の主役は陸軍。大陸国家は隣接する大陸国家と戦闘するので決戦は陸戦になる。そのため大陸国家の海軍は脇役に回らざるを得ない。大陸国家では海軍は決戦には無関係だから、決戦に必要な陸軍の資金・人材を海軍が奪っていることになる。このことで陸軍から不満が高まるのが欠点で、中国海軍の急速な建造は中国内部で陸軍と海軍の対立を高める欠点を持っている。

 中国海軍は急速な建造で大規模化している。だが中国海軍には洋上での戦闘ノウハウが欠落している。これも短所であり、アメリカ海軍との海戦でノウハウの違いが出るのは明らか。だがアメリカ海軍は積極的に中国海軍に挑んでいない。これは中国海軍の急速な建造により、アメリカ海軍は南シナ海とインド洋で戦力バランスが崩れ、米軍海軍が不足しているからだ。このため、急速な建造は中国海軍の長所として作用することになっている。

 中国政府は日米に戦争を仕掛ける瀬戸際外交を行い、日米は戦争を回避して譲歩する。中国海軍の急速な建造は、戦争を嫌う日米に譲歩させる長所となっているのだ。

■空母は戦艦の後継者

 火力・速力・防御力の揃った戦艦は艦隊の主役だった。戦艦は艦隊決戦の要と思われたが、第二次世界大戦から空母が主役になった。空母が運用する艦載機は、爆弾や魚雷を抱えて飛行する。すると戦艦の主砲よりも射程が長くなり、しかもパイロットが終末誘導を行うから、戦艦が放つ砲弾よりも命中率が高くなった。

 こうなれば艦隊決戦は、戦艦ではなく空母と艦載機が行う様になる。戦艦は防御力を活かして艦隊防空を行うか、上陸作戦で火力支援する脇役になる。戦後になると戦艦は各国の海軍から消えていった。ミサイルが軽量小型化すると、駆逐艦でも運用できるようになる。すると汎用性の高い駆逐艦の需要が高まり、汎用性が低くコストが悪い戦艦は消えたのである。駆逐艦でも対艦ミサイルを装備すれば、射程は戦艦の主砲よりも長く火力も戦艦並み。しかもコストが良いから戦艦の必要性が低下したのだ。

 戦艦は海軍から消えたが、空母が戦艦の後継者になった。空母は艦載機を用いて火力を投射でき、艦載機で防御力を艦隊に提供できる。空母単体では戦艦の装甲に及ばないが、艦隊陣形による防御が疑似的な重装甲を空母に提供している。だから空母は戦艦の後継者なのだ。

■空母の建艦競争

 空母は戦艦の後継者だから、艦載機が火力を投射する。火力の投射は戦艦と同じで、空母の保有は海戦で火力を敵に叩き付けることになる。そのため空母の保有は、海戦で有利になることを意味する。

 中国海軍は苦労しながら空母を保有する。空母艦隊の運用としてはアメリカ海軍に及ばないが、空母の数が多くなれば艦載機の数も増加する。すると艦載機が放つ対艦ミサイルの数が増加するので、短期的にはアメリカ海軍に対抗できる火力を持つことが可能となるのである。

 これがアメリカ海軍には迷惑で、初戦の対艦ミサイルの飽和攻撃は危険なのだ。これさえ対抗できれば、アメリカ海軍は蓄積したノウハウで中国海軍を圧倒できる。だが海戦は決戦しか発生しないから、一時的でも大火力が重要。その火力を提供するのが空母なのだ。

■日本の空母艦隊

 日本が求められるのは空母艦隊。護衛艦を改修した疑似空母を保有しても、艦載機の数が不足している。航空戦力は25機から戦力になるので、空母の艦載機は30機から50機運用できる空母が求められる。

 日本の国防は中国とアメリカの建艦競争に巻き込まれたので、日本は嫌でも空母を保有し空母艦隊で挑まなければならない。そうしなければ中国の瀬戸際外交に屈し、日本は中国の属国になる。これが嫌なら、日本は正式に空母を保有しなければならない。

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