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米中の覇権が南シナ海で激突する

■フィリピンからの撤退

 アメリカ軍はフィリピンに有力な軍事基地を置いていた。クラーク空軍基地とスービック海軍基地である。ここはアジアで有力な軍事基地だったが、フィリピンの反米活動とピナツボ火山の噴火でクラーク空軍基地は1991年に撤収、スービック海軍基地も翌92年に撤収した。

 中国は呼応するかの様に、92年以後から急速にスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)での活動を開始する。アメリカの覇権がフィリピンから消えると、代わりに中国の覇権が拡大した。中国は常に南シナ海の勢力を拡大し、今では人工島を有力な軍事基地に作り上げた。

■海洋戦略の喪失

 フィリピンでの反米活動は深刻で、しかもピナツボ火山の噴火でクラーク空軍基地が使用不能に陥ったことは仕方がない。だがアメリカがスービック海軍基地を手放したことは、後に禍根を残した。それは覇権が縮小すると、別の覇権が進出する歴史的な教訓を再確認させられた現実と、そして海洋戦略の基本が今でも有効であることを再確認させた。

 海洋戦略=目的(制海権の獲得)・手段(敵艦隊+敵基地ネットワークの破壊)・方法(艦隊と基地ネットワークの造成)

制海権=艦隊+基地ネットワークの継続利用
制空権=戦闘機隊+基地ネットワークの継続利用

 制海権と制空権は、基地から戦場まで継続的に往復できる範囲。さらに敵よりも60%優勢利用で獲得できる。これを実現するには、方法である基地ネットワークの存在が不可欠だ。アメリカ海軍はフィリピンから撤収したことで、南シナ海で制海権を獲得することが困難になった。これが原因で、中国の南シナ海進出を手助けしたことは否定できない。

■軍事演習では無意味

 フィリピンとアメリカは南シナ海で拡大する中国を脅威と見なし、99年から合同軍事演習を再開した。だが定期的な軍事演習では、中国の覇権拡大は阻止できなかった。軍事演習は威嚇にはなっても、制海権を獲得するだけの機能を持たないことを証明するだけだった。

 軍事演習で戦力を集めても、次の軍事演習までの期間は中国の覇権に戻ることになる。それに対して中国は、基地から継続的に南シナ海を往復した。ならば海洋戦略の基本に従い、南シナ海の制海権・制空権は中国が持つことになる。

■アメリカ海軍のインド洋・南シナ海回帰

 中国が南シナ海の覇権を拡大すると、中国の脅威は拡大した。フィリピンとアメリカは、2016年にアメリカ・フィリピン相互防衛条約を修正し、フィリピン軍基地5カ所を使えるように修正した。だがこれでも中国の覇権拡大は止まらず、海洋戦略に従い基地から戦場まで継続的に往復しない限り効果は出ない。

 アメリカ海軍は2018年5月30日、太平洋軍をインド太平洋軍に改名した。これはアメリカ海軍が、南シナ海とインド洋に覇権を復活させる意思を示している。アメリカ海軍は1992年から海洋戦略を忘れたが、中国の脅威で海洋戦略に回帰した。だが代償は大きく、これからインド洋と南シナ海で制海権を取り戻すことは容易ではない。

 それには第一にフィリピンに有力な海軍基地を置く必要がある。この海軍基地を日本の海軍基地と相互支援し、日本とフィリピン間の制海権と制空権を獲得する。これによりフィリピンの後方連絡線が維持され、フィリピンの海軍基地は継続的に活動できる。

■日本も利用できる軍事条約が必要

 南シナ海とインド洋は日本も使う海上交通路が存在する。日本も海上自衛隊を用いて海上交通路を守る必要がある。アメリカ海軍がフィリピンに戻るのであれば、日本もフィリピンの軍事基地を共有できる条約を作るべきだ。

 一つの軍事基地をフィリピン・アメリカ・日本の3カ国で利用すれば、基地の運用負担を分割できる。これはお互いに良いことで、節約しながら軍事行動を行うには有益だと思われる。さらに一つの軍事基地に3カ国が駐留すると、仮に中国軍がフィリピン軍基地を攻撃した場合は、駐留するアメリカと日本を同時に敵に回すことになる。

 この様なことは、中国は余程の覚悟がなければ軍事基地を攻撃できない。だからこそ軍事基地の共有は有益なのだ。日本は国益を守るためにも、アメリカ海軍とフィリピンで協力すべきである。

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