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「女性のほうが、ちょっとだけ優秀かな」

 気鋭のテックジャーナリスト、サラ・レイシーによれば、母親が育児を通じて身に着ける強さには4つある。そしてその4つともが、さまざまな形でキャリアプラスにもなるという。

その4つとは、

① 生産性
② スタミナ
③ 創造性
④ 共感的なマネジメント

 女性は学業の過程を終えて就職しても、数年内に結婚して家庭を持てば、ふつうには出産を経験する。そうすると、育児はどうしても女性のほうに負荷がかかるから、仕事との両立が難しくなる。それは、仕事という面から考えれば女性が不利な立場にあると見做されそうでありながら、必ずしもそうではない。

 確かに、一時的には幼い子どもの世話に明け暮れれば、他には何もできない。短期的に何かを生み出すという意味での生産性は低下するとも言える。しかし、その育児を通して身に着けた状況処理スキルは、子どもの世話から解放される段階になると、仕事の上でも大いに発揮される可能性がある。

 大体そんな論旨です。

 育児は確かに、かなり高い能力を必要とするマルチタスクです。言葉をしゃべらない赤ん坊が泣き出せば、それはお腹がすいたのか、おしっこしたいのか、あるいはどこが具合が悪いのか、それを赤ん坊の仕草、様子で的確に判断しなければならない。夜中に寝入りかけても、赤ん坊が泣き出せば、即座に起きて対応しなければならない。歩き始め、動き回るようになれば、あらゆる危険を先回りして察知し、対応しなければならない。

 母親の仕事はマルチタスクであるとともに、極めて犠牲的でもあります。

 このような仕事を10年以上上手くこなせば、お母さんの共感性は磨かれ、対応能力は相当に鍛えられ、犠牲的なことにもタフになる。これは当然の成り行きだと思われます。

 しかし実は、女性は育児で鍛錬されるという前に、そもそも生まれながらにして能力が高い。能力が高いので、育児というようなハイレベルなマルチタスクをこなせる。神様が元来そのように女性を設計されたのではないかと、私には思えます。

 例えば、女性が持つ「タフさ」について、レイシーはこんな例を挙げています。

 陸上部の男女を比べると、競技の時にケガをした場合、「今は出るな。座っていろ」と言うと、男子は割と素直に従う。

 ところが女子は競技に戻りたがる。テーピングをしてでも、競技を続けさせてほしいとコーチにせがむことが多いというのです。

 元々女子のほうが筋力が弱いので、男子以上に鍛える必要がある。そのため靭帯が疲弊してケガをしやすいのに、それでも危険を押して競技を続けようとする。

 それをレイシーは、「戦う少女の気風」と呼び、育児に一区切りがつけば職場復帰しようとする母親たちにも通じる「タフさ」だと考えるのです。

 軍隊でも同様の傾向がある。女性は男性よりも負傷の頻度が高いのに、男性が比較的軽い負傷であっても辞めていくのに対して、女性はかなり大きなケガをしないと退役しないのです。

 そもそも出産という大業は、男性は頼まれてもできないでしょう。自分のお腹の中に命を宿して、10カ月間休まず栄養を供給してやり、通常であればとても通過できそうにない産道を開いて産み出す。

 私の母方の祖母は11人の子どもを産んだ女性です。私もよく覚えていますが、本当に小柄な女性で、その体のどこにそれほどのエネルギーが潜んでいるのか、想像を超えています。

 当時としては珍しく自分が女学校まで出たので、娘たちにもできるだけの教育を受けさせたいと、朝3時に起きて藁をなって学費を作ってくれた。呑兵衛の夫には、終戦間もないころはどぶろくを密かに作って飲ませてやったりもした。そんな祖母の思い出を母は度々回顧しては話してくれるのです。

 レイシーの記事の中で、メンズウェア会社のCEOのこんな述懐が出てきます。

 「男性と比べれば、女性はそんなに変わらないが、ちょっとだけ優秀かな。女性のほうが判断力に優れ、共感的でもある。財政面でも抜かりがない」

 「それなのに、我々は男性が女性の1.6倍も重用される世界に生きている。何千年も女性が抑圧される歴史が続いた。しかし今それが変わり始めている。次の100年は、女性優位が進むだろう」

 私もそんな気がします。

 もっとも、男性と女性の関係は、能力で競い合うような、支配とか被支配とかの関係ではないでしょう。女性らしい能力を生かしてどんどん社会進出して企業の収益を上げ、国の富を増やすのが悪いことではない。しかし、優秀な女性はその力を支配のために使うのではなく、優秀なのにさほど優秀でもなさそうに振る舞いながら、男性をうまく引いたり押したりする。

 それがお母さんを通過した女性の本当の強さ(賢さ、優しさという意味での)ではないだろうか。

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