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    仲村 覚
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    仲里 嘉彦
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    西田 健次郎
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    豊田 剛
    豊田 剛
    那覇支局長
    宮城 能彦
    宮城 能彦
    沖縄大学教授

    オール沖縄がその看板をおろす時、ルーピーの呪縛から解放される

    翁長氏の偽装から始まったオール沖縄

     「オール沖縄」の瓦解が止まらない。翁長雄志知事を支えて来た建設流通大手金秀グループ、ホテル大手かりゆしグループの2大企業グループがオール沖縄会議から脱退した。脱退理由がいろいろ取りざたされているが、そもそも「オール沖縄」は、そのスタートから実体を伴わない単なる掛け声に過ぎなかったことは周知の事実である。

     翁長氏は知事になる前から「保革が薄く一致できる政策」を求め、その中で生まれて来た政策(政策と言えるものではないと思うが)が「オスプレイ配備反対」である。彼が那覇市長時代の2012年9月9日「オスプレイ配備に反対する県民大会」が開催され、10万1000人(主催者発表)が集まった。与那国町を除く県内40の首長らも参加。超党派での開催が実現した。翁長氏は沖縄県市長会の会長として実行委員会の共同代表を務めた。民主党野田政権時のことであるが、翌月オスプレイは計画通り配備された。

     その後、政権は交代。自民党第2次安倍内閣が発足した翌2013年1月27日。今度はオスプレイ配備撤回東京行動が実施された。この集会へは4000人(主催者発表)が参加し、代理も含め沖縄県41市町村の首長が全員参加した。これがオール沖縄の原型となった。保守政治家のはずであった翁長氏は一躍「反基地運動のリーダー格」とメディアに持ち上げられるようになった。彼はこれに味を占めた。彼が次に「保革が薄く一致できる政策」として選択したのが「普天間基地の辺野古移設反対」であったのだ。

     翁長氏が「保革が薄く一致できる政策」を探していた理由は、彼が政策通だからではない。むしろ「政策には全く興味がない」「彼が関心あるのは政局だけ」(関係者談)であったためだ。彼は何が何でも県知事になりたかったようだ。2014年11月の県知事選は現職の仲井眞弘多氏が自民党推薦候補として3選を狙い立候補した。翁長氏は「オスプレイ配備撤回東京行動」時に安倍首相に提出した建白書を大義として「オール沖縄」の名称を使い、県知事選に出馬した。建白書への署名は41市町村長がそろい踏みしていたので、「オール沖縄」と名乗ったのだろう。しかし、この建白書には実は重大な偽装があった。「オスプレイ配備撤回」を求めた建白書なのに、最後に以下の一文が明記されていたのだ。

    【米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること】

     翁長氏自身は保守政治家として普天間基地の辺野古移設推進派議員であったわけで、「保革が薄く一致できる政策」として選択した「普天間基地の辺野古移設反対」には相当な無理があったのだ。それは単に革新勢力の政策を丸飲みしたに過ぎなかったためである。当時、中山義隆石垣市長は建白書への署名を拒否した。それでも実行委員会側からの再三の署名依頼に最終的には確認書を作成した上での署名に応じた。確認書には「県外への移設を理想とするものの、普天間基地の早期移設と周辺住民への危険性の除去を最優先と考えており、県内移設の選択肢を否定するものではない」と明記された。この確認書には翁長氏も立会人として署名押印をしている。中山市長は当時「オスプレイの強行配備に反対する内容の要請活動のはずだったが、要請書が建白書に変わり、なおかつ普天間の県内移設断念の文言が入っていたので署名できないと伝えた。41市町村長の署名押印をそろえたいと言われ、確認書をつくった。県内移設断念についてはオール沖縄ではなかった」と八重山毎日新聞の取材に答えている。

     その後、知事選直前に県内保守系9市長が確認書の存在を明らかにしたうえで建白書に疑義があると翁長氏に対する9市長連名の公開質問状を送った。2014年10月28日には、そのうちの5市長が公開質問状を発表する記者会見を開いた。翁長氏が「県内移設の選択肢を否定しない」との文言の確認書に署名押印しながら、「辺野古に新基地は作らせない」とし、建白書を大義として県知事に立候補したのは大嘘だと批判した。つまり、既に建白書作成の段階から、「普天間基地の辺野古移設反対」という「保革が薄く一致できる政策」は破たんしており、オール沖縄は偽装から始まったのだ。前南城市長の古謝景春氏は建白書をまとめる際に翁長氏が「反対することで振興策が多く取れる」と発言したと暴露している。翁長氏は県知事になるため保革からまんべんなく票を獲得することを目論み、革新派の毒まんじゅうを食らい、偽装工作で作られたのがオール沖縄の正体なのだ。

     この記者会見は離島ローカルの話題でもないのに、八重山日報、八重山毎日の石垣島を拠点とする2紙のみが報道し、沖縄タイムス・琉球新報の沖縄2紙は一行も報じなかった。

    県知事選で翁長候補と沖縄2紙に騙された沖縄県民

     翁長氏には個人的恨みもあったようだ。翁長家は県知事を輩出した名門西銘家の裏方として常に後塵を拝して来た政治一家であった。知事選への出馬が個人的恨みを解消し、表舞台に立ちたいという欲求だけで行われた疑いがある。そうなると私たち沖縄県民は私利私欲の動機だけで知事になりたい人物を選出したことになる。なんと不幸なことだろう。

     2014年11月の県知事選は、県民の目には「保守分裂」選挙に映った。前年12月に仲井眞氏が辺野古の埋め立てを、法に基づき承認した。その後、タイムス・新報の沖縄2紙は彼を「裏切者」として連日ネガティブ報道を繰り返した。そのうえ、前述の通りオール沖縄が翁長氏の偽装から始まったことを2紙は報じず、逆に翁長氏を持ち上げ、間接的に、あるいは直接的に翁長氏の選挙を支援した。沖縄保守は翁長氏が革新政党と共闘していたことに気がつかないで投票した人が多数いた。翁長氏の選挙戦略は功を奏し、保守票の一部と革新票の大部分から票を得て、仲井眞候補に圧勝した。公明党が自主投票となったことも仲井眞氏の惨敗の原因の一つとなった。沖縄県民は翁長氏や沖縄2紙に半ば騙された形で県知事を選択せざるを得なかったのである。

    落日の翁長知事「応援すると負ける?!」選挙で連戦連敗のオール沖縄候補

     翁長氏は知事就任以来、「普天間基地の辺野古への移設をあらゆる手段を持って阻止する」と明言。埋め立て承認を取り消し、国との裁判闘争に打って出た。結果は周知の通り敗訴。知事就任当初こそ、直後の衆院選では4選挙区をオール沖縄候補が勝利(候補者9名全員が復活などで当選)、2016年参議院選挙ではオール沖縄候補が現職大臣の自民候補を打ち破るなど連勝したが、2017年からの首長選では連戦連敗。翁長知事誕生の土台となった那覇市議グループ「新風会」も2017市議選で惨敗。その結果を受け「新風会」は解散し、社民・社大(沖縄社会大衆党)と合流。選挙に強いとされていた翁長氏だが「応援すると負ける」とまで揶揄されるほど求心力は低下した。

     2018年に入ると翁長氏の健康問題が勃発。早期退陣も噂され“翁長王朝”は崩壊寸前に。それでも革新勢力は翁長氏の2期目に期待を寄せている。なぜだろうか? それは実は沖縄県は本当は保守王国であるためだ。翁長氏以前の沖縄県知事選挙では保革一騎打ちで保守系候補が4連勝していた。革新候補では勝てない。これが革新陣営の本音であり、「オール沖縄」の看板をメッキが剥げ落ちても手放さない理由なのだ。

    翁長氏がトリックスターとなった原因

     那覇市議グループ「新風会」については前述したが、今回、その中枢にいた屋良栄作前市議(知事選の翌月に新風会脱会)にオール沖縄側の視点で話を聞くことができた。彼は翁長氏を担ぐことで自民党から除名処分を受け、2017年の市議選では6期務めてきた市議の立場も失うこととなった。それだけ翁長氏とオール沖縄にかける思いは強かったはずである。

     彼の翁長氏人物評を尋ねると県会議員時代は「自民党タカ派」であり「ザ・自民党」のような人物。自民党というメガネで物を視るような人物だったとのこと。そんな人物がなぜ変容し、自民党と事を構えるようになったのか? それはやはり民主党鳩山由紀夫元首相の「最低でも県外」発言が大きかったようだ。政局に強い翁長氏は「(民主党)政府が県外移設」と言っている以上、「県外移設」に方針を変えるよう自民県連を説得に回ったそうだ。その結果、一時期沖縄県内では確かに県外移設への期待が高まり、各政党や当時の仲井眞知事までもが県外移設を公約とした。この時点では「オール沖縄で県外移設」の機運が高まっていたのだ。

     ところが鳩山氏はあっさり前言を撤回。梯子を外された沖縄政界の大混乱はここから始まった。その後何年もこの“ルーピー”の呪縛で沖縄政界は身動きが取れなくなった。民主党政権になったからこそ、翁長氏も(民主党)政府との対決姿勢を強め、オスプレイ配備反対の県民大会へつなげた。ところが、沖縄に寄り添うと思われた民主党政権はあっさりとオスプレイ配備を認めた。

     翁長氏が知事選出馬の大義とした前述の建白書は実は、当初、民主党・野田佳彦首相にあてたものだったそうだ。誤算だったのは予期せぬ政権交代が起きたことだ。建白書の宛先が急遽自民党安倍首相へと変更された。一度挙げたこぶしをおろし損ねたのだ。屋良氏はこの混乱の収拾を図れる人物として百戦錬磨の翁長氏の政治的手腕に賭けたのだという。しかし、当選後の翁長県政は屋良氏の期待とは裏腹に革新に取り込まれてしまい、軒を貸して母屋を取られる状態になったようだ。

     保守の間ではオール沖縄や翁長氏は「左翼」あるいは「売国奴」とレッテルを貼りがちであるが、それは短絡的な見方だと屋良氏はたしなめる。島国沖縄にはかつて島ぐるみ闘争で米軍を相手に軍用地の「一括払い方式」を「地代継続払い」に変更させた成功体験があり、保守・革新を超えた島単位での結束ができる土壌があるとの指摘だ。筆者自身、自著においてそのような指摘をしたことがある。沖縄は日本の一部であるが歴史的に郷土愛が他県より相当強く、高校野球で郷里のチームが出るときには街から人と車が消えるほどである。その郷土愛が日本への愛国心と離れてしまうと危険で偏狭な沖縄ナショナリズムとなってしまう。その沖縄ナショナリズムを接着剤として、あるいは保革の利害の一致によりオール沖縄が生まれる背景になるのだ。売国ではなく沖縄を愛するあまり、そのような状況に陥るのだ。屋良氏は本土の方にはこうした沖縄の歴史的な心のひだを理解して欲しい。沖縄の心をもう少しリスペクトしてもらい、落としどころを探らねばならないと訴える。

     2013年11月、石破茂氏(当時・自民党幹事長)が沖縄県選出国会議員を説得し、辺野古移設賛成へ強引に舵を切らせた。その際に5名の議員が首をうなだれて記者会見に臨んだ姿は、保革を問わず沖縄県民のプライドを傷つける出来事であった。果たしてあのような絵を公開する必要があったのか屋良氏は疑問を呈し、筆者も同様に感じた。もう少しやり方があっただろうと思う。翌年の衆議院選挙で辺野古移設容認への公約の転換よりも、あの構図が選挙区全敗の原因のひとつになったのだろうと思う。

    県政奪還の時は満ちた!

     屋良氏はオール沖縄を例えて面白い表現をした。すなわち、オール沖縄の革新側のご本尊は「辺野古移設反対」。企業側のご本尊は「翁長氏」であり、宗派が違うのだ。つまり、翁長氏が出馬しない限り宗派の違いによる分裂は避けられないわけである。

     2018年5月27日、県議会与党の会派おきなわ(革新)を中心に翁長知事を支持する地方議員や企業などが「翁長知事を支える政治・経済懇話会」を発足させた。驚いたことにオール沖縄会議を脱退した金秀、かりゆし両グループも参加し、安慶田光男前副知事まで参加に前向きな意向のようだ。この動きは「オール沖縄」の看板架け替え作業が始まっているように見える。屋良氏が指摘するご本尊の翁長氏頼りのようだ。沖縄メディアは次回県知事選の争点も「辺野古移設反対」としたいような論調でこの動きを報じた。屋良氏によると辺野古移設反対運動の中心にいる沖縄平和運動センター(山城博治議長)に、組織幹部として沖縄県マスコミ労働組合協議会が参加しているようだ。革新勢力や基地反対運動家、沖縄メディアはご本尊の「辺野古移設反対」を継続して争点にしたいのだろう。

     沖縄県民にとっては、この動きは望ましい流れかもしれない。その理由は第一に2018年2月の辺野古の地元名護市長選において保守系候補が勝利したことだ。県民・市民にとって「辺野古移設問題」は、既に工事に着手していることもあり、いわゆる「オワコン」なのだ。今後メディアや革新候補が「オワコン」に固執すればするほど票は逃げていくと考えられる。第二に沖縄保守にとって翁長氏は既に「革新候補」として認識されつつあるためである。首長選挙での連戦連敗がそれを裏付けている。そして、もし翁長氏が立候補しなければ保革ブリッジは崩壊し、革新統一候補では勝てないと革新側も認識している。いずれにしても保守が県政奪還のチャンスの時は満ちているようだ。保守系候補の選択を誤らず、自公協力をしっかり取り付ければ勝てる選挙となりそうだ。ただ屋良氏は一抹の不安を指摘した。翁長氏がガン治療より選挙を優先し、任期中の殉職覚悟で臨むと同情票が集まらないかと言うことだ。メディアもそれを後押しするであろう。ここは県民の賢明な判断に期待したい。

     安全保障は国の専権事項にも関わらず、沖縄では県や市町村レベルでの選挙で「辺野古移設反対」というシングルイシューでの選挙が展開されるという異常な状態が続いてきた。来たる県知事選においてはこの異常事態に終止符を打たねばならない。屋良氏は次回県知事選の争点は「復帰50周年以降の沖縄振興の制度設計」の議論がメインとなるべきだと訴えている。

     革新勢力、基地反対運動家や沖縄メディアは「辺野古移設反対」のご本尊に今後も固執し続けるだろう。彼らの飯の種でもあるからだ。いずれにしてもオール沖縄が看板を架け替えるにしろ、その看板を下ろす時が、沖縄政界に混乱をもたらしたルーピーの呪縛からようやく解放されるときだろう。

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