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G7を巡る諸問題=鉄鋼関税、米露関係、イラン核合意離脱を繋ぐ糸―イラン=サウジ戦争への布石か?

 G7でトランプ大統領はロシアを再びG7に参加させるべきと提案し紛糾した。またG7参加国を含む今までの米国の重要同盟国に対する高額な鉄鋼関税にも拘り紛糾を深めた。イラン核合意離脱に関しても関係する英仏独から合意に戻るよう促される場面もあったようだが、これも相手にしていない。

 以上の諸件は実は一本の糸で繋がっているのかもしれない。それはシェール・オイルのお陰で米国が産油国になろうとしている問題である。

 いま米国ではシェール・オイルの油田建設、シェール・オイルのためのパイプラインや道路の建設、それらを行う労働者の住宅の建設等で空前の好景気というか史上最も失業率が低い状態になっている。このままならトランプ大統領の再選の可能性は高い。

 そうなると産出されたシェール・オイルを出来るだけ高く売れる環境を整備する必要がある。イラン核合意からの離脱も、米国内の宗教保守派の票固めだけではなく、むしろ国際的な資源価格の上昇が目的かもしれない。そして米国製のシェール・オイルを購入してくれた国に関しては鉄鋼関税を安くするといった取引が今後に提案されるかもしれない。

 ロシアも冷戦後は地下資源と兵器の輸出で経済が成り立っている状況である。ここで米露の利害が一致する可能性があると思う。米露が協力すれば資源価格が高騰するような国際紛争を起こすことも、関係の深い国に自国の地下資源を高額で売りつけることも難しくない。

 例えばイランは上海機構で結ばれたロシアの同盟国の筈だが、イスラエルの空軍がシリア領内に駐屯するイラン軍を空爆しても、シリア領内にいるロシア軍は地対空ミサイルを使って迎撃できる筈なのにしていない。やはり私が示唆して来たイスラエルが間に入った米露の裏協調は、資源戦略とも相待って、存在している可能性はあると思う。

 ロシアとしてはイランの原油輸出が難しくなれば国際資源価格が上昇し自国が儲けることが出来る。そのためなら上海機構の同盟国イランを捨て駒に使うくらいは、プーチンならば考えても不思議ではない。

 米国も実は長年に渡ってサウド王家の支配を米国的価値観から見て北朝鮮の金王朝同然の体制として非常に不快に感じていた。だが石油の問題があるので今までは我慢して来た。

 しかし自国が産油国になれば、もう我慢の必要はない。むしろサウジの石油の輸出が難しくなれば、やはり自国が儲かる。

 この“米国に見捨てられそうだ”という不安が過去1年のサウジの動きの背景にあるのではないか?今の皇太子は強力なー見方によっては少しでも近代的な王政を目指していると理解できなくはなく、女性の運転免許も認めた。

だが同時に米国に見捨てられた場合に備えた保険のつもりか中国にも接近し石油を人民元で売ることまで考えている。これは石油をドルではなくユーロでフランスに売ろうとしたことがイラク戦争の真の理由だったという説を思い起こさせる。もちろん今の皇太子の国内引締めは、見方によっては金正恩以上に、危険な独裁者のように米国の価値観からは見られる部分も小さくない。何れにしても繰り返すがサウジの石油輸出が難しくなれば今後の米国にはメリットだ。

(トランプ氏とカナダのトルドー首相がG7を巡って対立したのは、カナダも資源国家であることと無関係ではないのではないか?)

 もしかしたら米露の裏協力によるイラン=サウジ間の何らかの小さくない軍事衝突が、この秋の米国中間選挙までに起こされるかも知れない。トランプ氏は本気で米軍を出来るだけ海外で使いたくないようだが、これならイスラエルの防衛を米軍は行うだけで良い。それは米国内の宗教保守派の票を、ますます固められるだろう。ロシアも国際的資源価格が上昇すれば国家としてもメリットなら、ロシア系ユダヤ人の人脈等でプーチン氏にもメリットがあるのかも知れない。

 なおイラン、サウジ両国とも北朝鮮、パキスタンから、それぞれ核兵器を貰える密約があるとされる。核戦争に発展する可能性さえあると思う。

 イラン=サウジ戦争後は戦争で疲弊した両国を、イランはロシア、サウジは米国が、1940年代後半の日独のような形で復興支援(?)する。これなら海外での米軍の軍事負担も多くはない。こう考えるとトランプ大統領の「中東版NATO」構想も違った角度から見えて来る。現実主義者でもあるトランプ氏は正常化したサウド王家を残すかも知れない。日本の皇室が生き残ったこととも似ていなくはない。今までの多くの米国の政治家や官僚達が陥っていた“投票による民主主義体制の国同士の同盟”という考え方から“国益同盟”の考え方への、米国外交の転進である。

 何れにしてもイランもサウジも相当の打撃を相互に与え合うように仕掛けられる可能性が低くない。イランもアラブもキリスト教世界とは並行的に同様か同様以上の高度な文明を築いていた。今の米憲法には古代イラン文明の法典の精神も反映されているという説もある。エリートが多い亡命イラン人が以上のような歴史問題等を米国内で喧伝したりもしている。彼らは今のイランの体制には批判的なものの、母国がイラクやシリアのようになるのを見たくはないようだ。

 そのような歴史的背景もあるのか日本には以前からアジア民族主義的立場から米国に盲従せず、イランの石油を率先して購入するべきだという考え方がある。その考え方は今、強くなりつつあるようにも感じられる。

 しかし今まで述べて来たことからすると、むしろイランやサウジからの石油購入を当面は縮小し、アメリカからシェール・オイルを購入した方が、今の時点では日本の国益だと思う。今後に北朝鮮情勢が急変したり、中国の脅威が今まで以上に高まった時に、アメリカから見捨てられる可能性を減らすことが出来る。シェール・オイル関係の利益によって…。もちろん鉄鋼関税等を低くしてもらう取引も可能かも知れない。少なくとも中期的には、その方向で行くのが日本にはベターなように思う。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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