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    長谷山 崇彦
    農学博士
    乾 一宇
    乾 一宇
    元防衛研究所研究室長
    加瀬 みき
    加瀬 みき
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    茅原 郁生
    茅原 郁生
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    濱口 和久
    濱口 和久
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    菊池 英博
    菊池 英博
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    小松 正之
    小松 正之
    東京財団上席研究員
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    高永喆
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    新田 容子
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    岡田 真理
    岡田 真理
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    杉山 蕃
    杉山 蕃
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    竹田 五郎
    竹田 五郎
    元統幕議長
    田村 重信
    田村 重信
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    上岡 龍次
    上岡 龍次
    戦争学研究家
    呂 永茂
    呂 永茂
    南北戦略研究所所長

    米朝首脳会談を巡る諸問題とアリソンの『決定の本質』

     米国トランプ政権は、6月12日に開催を予定していた米朝首脳会談を、5月24日に突然キャンセルすると言い出した。ところが翌日になって再び会談を行う方向で動き始めた。

     この問題に関して、まず国際政治学の理論に基づく理性的な分析を行い、その後にトランプ氏登場前後から問題になっている理性批判的な立場からも考察し、その二つを可能な限り統合して見ようと思う。

     まず国際政治学と危機管理論の古典的名著グレアム・アリソンによる『決定の本質』の中で提唱された“第3モデル”の見地から、分析して見よう。この“第3モデル”とは、超単純に言ってしまえば、官僚のマニュアル(アリソンはStandard Organizational Proceduresという用語を使った) 通りにしていたら、核戦争に発展していた可能性のあるキューバ危機を、ケネディ政権の閣僚達が、個人ベースで動くことで、核戦争の危機を回避したことを理論化したものだ。

     この見地からすると今回の一連の動きは、どのように分析されるだろうか?米国メディアの報道を参考にしつつ、トランプ政権内部の状況を見てみよう。

     もともと対イラン強硬派で、イランとの二正面作戦を避けたい考え方が強く、また米朝和解を歴史的手柄にしたいポンペオ国務長官が、この首脳会談の準備を進めていた。そこへ同じ対イラン強硬派でも北朝鮮とも安易な妥協をすべきではないと考えるボルトンNSC担当大統領補佐官が「リビア方式」という表現を使った。すると北朝鮮から強い反発が起こった。そこで恐らくポンペオ長官のアドバイスを受けたトランプ大統領が、一旦は「『リビア方式』を否定する」と発言した。だが政権内部の和を尊ぶペンス副大統領が、ポンペオ、ボルトン両氏の調整のため、アドバルーン的に「リビア方式」という表現を再び使って見た。そうすると北朝鮮から更なる反発が来た。そこでトランプ大統領も一旦は米朝首脳会談のキャンセルを言い出した。

     以上のように理解することが可能なように思われる。では北朝鮮は何故このような反応をしたのか?

     そもそも「リビア方式」という表現に厳密な定義があったのか?確かにリビアは大量破壊兵器を自ら放棄した8年後にカダフィ指導者が米国が後押しする反政府派に殺害されている。だが、それは米国との和解で国が豊かになり、多くの若者がインターネットで国外事情に触れられるようになり、外国と同じ自由を求めて反乱を起こしたためである。そこにCIA等の工作がなかったとは言えないが、アメリカと和解して国内が豊かになれば、どこの独裁国家でも起こりうる現象だったと思う。だからかトランプ大統領も一度は「体制保証」という言葉も使っている。上述のようなことは北朝鮮も分かっていなかったわけではないのではないか?自国民を抑圧できる力を温存しておくくらいのことは考えていたのではないかとも思う。

     その北朝鮮が何故ある段階から過剰反発をして見せたのか?それは日本国内でも報道されているように中国の圧力だろう。

     ここからは国際政治学の“力の均衡”論で考えてみよう。

     私は今までロシア系ユダヤ人が多くなったイスラエルが、エルサレム首都宣言と引き換えに、イラン封じ込めのために米国は中東方面に専念してもらうためにも、ロシアへの影響力を使って北朝鮮に影響を与えてもらい、そこで米朝首脳会談が実現したのではないかという仮説を何度も書いて来た。この仮説を今の段階では修正する必要を感じていない。と言うか、そうだからこそ米露と北朝鮮の“挟み撃ち”に会うことを恐れた中国が、金正恩を二回も呼びつけて叱責し、圧力を掛けた。そこで北朝鮮は米国に対し過剰な反発を演じて見せざるを得なくなったのではないか?

     そのためトランプ大統領も一度は米朝会談キャンセルを言い出したのではないか?それが一夜で逆転したのは、やはりロシア系ユダヤ人の国際的影響力があった可能性もあると思う。そのためロシアが北朝鮮に対話に戻るように圧力を掛けたのかも知れない。

      実は米朝会談キャンセル宣言の数日前にクシュナー顧問がセキュリティ・クリアランスを完全回復していた。彼に関してはロシア疑惑関係の複数の事案で、ミュラー特別検察官の追求を受けており、真の完全復活は簡単ではないかも知れない。しかし対外的な影響力は回復しつつあるのかも知れない。

     そもそも彼がロシア疑惑関係で特別検察官の追求を受け始めてからエルサレム首都宣言が予定より急いで行われている。彼が動けなければイスラエル本国を使ってロシアの協力を取り付けると言うのがトランプ大統領の戦略だったのだろう。

     今回はクシュナーが動いたのか?イスラエルが動いたのか?あるいはクシュナーもイスラエルもロシアも動いていないのか?時間的な関係を考えると3番目の可能性もあると思う。

     要するにトランプ大統領の交渉術が成功し北朝鮮も対話路線に戻らなければならなくなったのかも知れない。

    トランプ大統領の交渉術は確かに決して理性的で計画性の高いものではない部分も多い。しかし、それは彼の波乱万丈の人生経験によって磨かれたものだ。理性的な専門家の外交と、どちらが優れているかは分からない。

    と言うか今までワシントンの官僚達が行って来た専門的行政が良い結果を生まなかった。つまりアリソンの“第3モデル”で言うマニュアルに囚われ過ぎていた。そこでトランプ氏が必要とされたのである。それを考えると正しい方向に向かっているようにも思われる。

    そもそも欧州大陸の理性一辺倒の考え方に対して、経験則や直感を重んじるのは、アングロサクソン文化の特徴であり優位性だった筈である。少なくともトランプ大統領は、そのような深い背景から出て来たのであって、単なる異常現象のように考えるのはおかしいと思う。繰り返すが理性主義以上に正しい解決に向かって進んでいるとも考えられるのではないか?

     そう考えるとトランプ大統領の政治の結果として大規模な核戦争のようなことが起こる可能性を心配するのは杞憂なようにも思われる。私には残念だが。

     最近、私が大変お世話になって来た複数の相互に知り合いではないが同じ様に憲法9条改正のために人生を捧げた方々が一様に同じことを言われた。もし北朝鮮ないし中国のミサイル攻撃で100万人の日本人が死んだとする。そこで本格的な憲法9条改正が考えられ国会で議論され発議され国民投票が行われるとする。しかし、それには手続き的に3年くらいは掛かると思われる。その3年間の間に被災者以外の日本人は外国のミサイル攻撃のようなことがあったことも忘れてしまう。賛成、反対以前に興味がないので誰も国民投票に来ない。そこで有意味な憲法9条改正も出来ない。日本人が真に覚醒し有意味な憲法9条改正が行われるには日本人の半分6000万人が殺害されるくらいの重大事態が起こらなければ難しいのではないか?

     この考え方には私も賛成せざるを得ない。民族の精神を腐敗させる悪魔的な憲法を70年以上も改正しないで来た。私の愛する日本人は、その程度の民族だった。私が含まれることになっても半分の6000万人が死亡するくらいの天罰が当たっても当然だと思う。それで日本人の真の民族精神が復活するなら、その方が良いようにも思う。

     このような考え方も反理性的な考え方だろう。だがトランプ大統領の反理性的思考とは違うものかも知れないと思う。

     トランプ大統領の反理性的思考とは経験則や直観に基づいて理性的分析では見つけられない自国にとってメリットになる具体的な解決策を見つけるような部分が大きい。彼が前述の私の考え方とも木霊するキリスト教保守主義に基づいた世界終末思想を全く持っていないとは思わないが、バノン氏等に比べれば彼の思考の大きい部分を占めていないのではないか?それを考えると北朝鮮との宥和政策は紆余曲折を経ながらも、このまま進む可能性の方が高いと今の段階では私は思う。少なくともイランの処分が終わるまで…。

     そう考えると日本は(理性主義的な思考に立ち返って考えるならば)、北朝鮮が長距離ミサイルや核兵器を廃棄する代わりに数百発の日本まで届くミサイルを持ったままでいることを許容され、そして在韓、在日米軍が大幅に縮小され、常に北朝鮮の脅迫に屈さざるを得ないような事態を何とかして避けなければならない。そのためには私が今まで述べて来た米国、中国、ロシア、北朝鮮そしてイスラエル、イランといった国々が織りなす“グレート・パワー・ゲーム”=「力の均衡」論を理解して、そこに積極的に関わって行くしかない。

     そのような能力が今の日本人にあるかどうか分からないが、それが一応できたとしたら、そのような国際政治のせめぎ合いで鍛えられることで、部分的にでも偽憲法に殺されたままの民族精神が少しでも蘇るかも知れない。本当に少しの部分的なものでしかないのではないかとは思われるが…。

     具体的には(アリソンの“第3モデル”に立ち帰れば)当面はクシュナー顧問の動きに十分以上に注意した方が良いのではないかとも思う。彼の力が部分的にでも回復して行けば、イスラエル、イラン、ロシア、北朝鮮といった国々との関係性や外交政策には、ペンス、ポンペオ、ボルトンといった人々と同じか、それ以上の影響が彼の動きによって発生する可能性が低くないように思われるからである。


    「GII REPORT」より転載
    http://blog.livedoor.jp/usretail/

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