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    堂本かおる
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    菊田 均
    菊田 均
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    松本 健一
    松本 健一
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    小名木 善行
    小名木 善行
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    大島 直行
    大島 直行
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    時広 真吾
    時広 真吾
    舞台演出家
    渡辺 久義
    渡辺 久義
    京都大学名誉教授

    「初動対応の躓き」はアダム・イブの時に犯していた

     この度の日本大学アメリカンフットボール部の騒動は百家争鳴状態で、アメフトも知らない私の出る幕でもないのですが、素人なりに思うところを少しだけ書いてみようと思います。

     監督とコーチは、「クォーターバックをつぶせ」という指示を出したことは認めた。その上で、「ただ、それは怪我をさせろいう意味ではない。思い切って当たれという意味だ」と釈明したのです。これには「問題は、こちらの言葉を誤解して反則プレーをした選手にある」という含みがある。

     ところが、そんなふうに責任の所在を糊塗しようとして時間が過ぎるうちに、当の選手が記者会見の場に単身で登場した。そして、自分の非を率直に認めたのです。

     いかにもアメフト選手らしい偉丈夫ですが、それでも弱冠(20歳)の若者です。しかしその態度には、腹を決めた者の落ち着きと迷いのなさが感じられました。

     すると、マスコミでもネットでも、監督やコーチ、大学当局を批判する声は止む様子がない反面、加害者選手への風当たりは極めて静かです。「批判を覚悟であの場へ出て、自分の非を認めて謝罪した態度からは、彼の真摯さが伝わってきた」という声も多い。日大の先輩の中には、「あの選手はぜひうちにほしい人材だ」と、獲得に名乗りを上げる人までいるのです。

     どうしてこのような違いが出てくるのでしょうか。

     「自分が何を考えて、何を行ったかという事実を明らかにしたうえで、自分の非を正直に認め、謝罪する」

     これがクライシス・コミュニケーション(危機管理広報)の基本だそうです。この基本を大学の指導的な立場の人たちは実践しなかったのに、20歳の若者が単独で実践した。この違いが、世間の見る目を分けたように見えます。

     考えてみると、このような危機管理の問題は、数千年も昔の聖書の冒頭にすでに描写されているのです。

     神の「取って食べてはならない」という戒めに反して「善悪を知るの木の実」を取って食べたアダムとイブが、神様から、「(どうして)取って食べたのか」と問われたとき、彼らはどちらも、「私が悪いのではない。隣にいた者が私を騙した」と弁明を試みた。これが、人類史で最初にして最大ともいうべき「初動対応の失敗」です。

     主人となるべき2人が責任を回避したので、蛇はサタンとなって、当の2人ばかりでなく、その子孫たちまでも責め始めた。「なぜお前たちは責任を取らないのか。騙されたというが、結局食べると決断したのはお前たち自身ではないか」と言うわけです。

     初動対応での小さな(と思える)失敗のために、時間が経過すればするほど、周囲の批判の声は拡大の一途をたどって、段々と収拾がつかなくなるのです。

     日大の指導部も、これと同様の失敗をしたために、その後で学長が出てきて謝罪会見をしても事態を挽回するのはかなり難しいのです。

     思うに、なぜ多くの人が初動対応に失敗するのかという理由は、その根が人間性のとても深いところに植えられているからです。アダムとイブが最初に戒めを破ってしまったとき、神から離れて自分の良心の声に耳を塞いだ。我々も同じように耳を塞ごうとすれば、彼らと同様、良心の声を押さえるために弁解せざるを得ないのです。

     責任を回避しようとして初動対応を誤る人も、またそれを周囲から批判する人も、すべては同じ根を持っています。ほとんどの批判者はこの騒動の当事者でもないのに、まるで我がことのように、「謝罪が遅い、謝罪が足りない」と言い募る。それはあまりに度を超すように思えるのですが、それもやはり、「非は率直に謝罪すべきだ」という心の奥にある良心の発露とも言えます。

     このような良心は誰にもありながらも、良心の声に従うのは極めて難度の高いことなので、良心の声を聞いて初動対応を正しく行う人には、人は否応なく同情と親しみとを覚えざるを得ない。そして許してやりたくなるばかりか、賞賛さえ惜しまないのです。日大の加害学生に同情ばかりか、支援の申し出さえ出てくる背景にはこうした心理があるようです。

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