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  • 彩島 うた
    彩島 うた
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    ココ浅井
    ココ浅井
    ブラジル在住
    きむむ
    きむむ
    大学院生
    三井 俊介
    三井 俊介
    陸前高田市議会議員

    瞬きひとつで安楽死ができる時代に感じる生死の尊厳の曖昧さ

     オランダのアムステルダムで先日開催された葬儀関連の見本市で、驚くべきマシンが登場しました。サルコ(Sarco)という名前の、ボタンひとつで命を絶つことができる「自殺マシン」です。オランダは安楽死を合法化している国の1つで、このマシンも安楽死を望む人のためのもの。発明したのは安楽死を推進するオーストラリア人の活動家で医師のフィリップ・ニチケ氏。安楽死を合法としていないイギリスを中心に、各国で安楽死や自殺ほう助の合法化について賛否両論の意見が飛び交う中、このマシンについても賛否両論の意見が出て来そうです。

    安楽死が身近になるマシン

     サルコは、世界初となる3Dプリンタ製の安楽死マシンです。人が中に入ることのできるカプセル形で、カプセル内を窒素ガスで満たすことで、意識を失った状態で不快な気持ちを感じることなく安楽死させることができます。ボタンだけではなく、瞬きひとつで起動させることもでき、安楽死も自殺のようにできるようです。また、カプセルは取り外すとそのまま棺桶へと変わり、合理的な設計をされています。

     サルコが発表されたアムステルダムでの見本市では、VR(バーチャルリアリティ)ゴーグルを使って、実際に機械に入って最終的にボタンを押すまでを体験することができたようです。

     サルコは、不治の病や、重度の病に苦しむ患者などの安楽死を目的に使用されます。発明したニチケ医師は、22年間にわたって安楽死の分野に従事し、「死神博士」とも呼ばれており、サルコを使って世界各国での安楽死の合法化を目指しています。

     ニチケ医師とエンジニアのアレクサンダー・バニックと、NPOのExit Internationalは、十分なテストを行った後、プリント用プログラムをフリーのオープンソース材料としてインターネット上に設計図をアップして自由にダウンロードできるよう計画しています。そうなれば世界中どこででも組み立てられるようになります。

     ただ、自由にダウンロードできるようになったとしても、誰でも簡単に手に入れられるというわけではないようです。ダウンロードするためには、4桁のコードを入力する必要があります。そのコードを得るには、心理的に責任能力があることを証明するため、オンラインの心理テストをすべて答えなければなりません。とはいえ、それに答えられてしまえば、誰でもダウンロードできるため、死を望む本人でなくても手に入れることができるのではないでしょうか。

     ニチケ医師は、著書の中で「自らの命を断とうと望む人達は現在薬を使いますが、それは入手が難しく、違法です。また、ビニール袋に入れたガスの吸入などの方法も使われますが、これだと人はなかなか死ぬことはできません」と述べています。このような従来の方法に比べると、サルコは違法な薬を使っておらず、精脈注射の挿入などの特別な専門知識も必要なく、数分以内に安らかな死を迎えることができるといいます。ニチケ医師は、「重要なことは、自殺ほう助が世界中でいまだ違法である時代に、愛する人を逮捕の危険にさらすことなく、自分達の人生を合法的に終わらせることができるということです」と述べています。

    生死の尊厳が曖昧になる恐れ

     サルコを使用することに反対する人も多く、生命尊重派の団体は「このマシンは自殺を魅力的で普遍的なものにしてしまう」と、アメリカ中で自殺の数を途方もなく引き上げる危険性があると警告しています。

     一方で、世界で初めて安楽死法を定めたオランダや、安楽死が認められているアメリカの一部の州ではこのマシンが重宝されるでしょう。特にオランダでは、車椅子での転倒や、認知症への不安などの理由でも安楽死が認められ、“安楽死先進国”とも言われているほどなので、サルコの発売を待ち望んでいる人が多いかもしれません。

     安楽死、自殺ほう助が認められている国では、死をも自らの意思で決定したいという思いがあるのでしょう。死が怖いと思うのは、いつ来るか分からない、苦しい、この世から自分がいなくなることへの恐怖があるからだといえます。また、重い病気で生き続けることへの不安、辛さ、介護が必要になった時にかかる家族の負担などを考え、自ら死を選び、死の恐怖から逃れ、誰にも迷惑をかけずに息を引き取ることを願うのでしょう。

     しかし、生と死というものは本来人間が決定できるものではありません。重い病気を抱えて病院のベッドから動けない場合、生きているのに何もできない日々に苦痛を感じ、生きることを放棄してしまいたいという気持ちは理解できます。しかし、生きているからにはどんな状態にあるにせよ、そこには何かしら意味があると思います。人間の意思を優先させて安楽死を合法化してしまうと、生きる意味を何も考えず、死んでしまえば楽になるという人生に対する甘えが生じ、命の尊厳に対する責任が曖昧になっていくでしょう。

     安楽死をすることで、生きていくことの苦痛は取り除かれますが、苦痛と共に得ることのできる深い経験を見過ごすことになります。死に直面した時、自分の命は自分だけのものだと考えて苦痛から逃れるために自ら死を選ぶことが合法だからといって容認されることに違和感を覚えます。自然の流れで生まれて死んでいく。人間の自然の摂理に反した行動が世界的に容認されるようなことになっていったら、本来の人間として持つべき生死に関する尊厳を失うことになりかねません。

     人間は楽な方に、楽な方にいこうとするものです。サルコが世に出て、安楽死が簡単にできるようになれば合法化されている国だけではなく、違法とされている国でも密かに使用される可能性もあるでしょう。安楽死、自殺ほう助には賛否両論ありますが、身近に迫った時、自分の命は果たして自分だけのものだと断言していいのか考えてもらいたいものです。

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