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「迷いのない結婚」

 先日、地元のある婦人同好会に呼ばれて「結婚と家庭」をテーマにした小さな講演会をした折、話の枕に、映画「いま、会いにゆきます」を紹介し、「これには、実は後日談があります」と、話を進めたのです。

 後日談というのは、映画では相思相愛、純愛の夫婦役を演じた2人がその後、実際に結婚したものの、3年後に離婚に至ったという現実です。つい最近ネットで知って、理想と現実の乖離を示す象徴的な話だなと思って取り上げたのですが、参加者たちの反応はちょっと予想外でした。

 みんな一様に、「それ、知ってますよお」と言うのです。

 「おいおい、本当ですか! なんと、知らなかったのは講師ばかりなり( ;∀;)」

 映画は15年も前のものながら、男優は中村獅童、女優は竹内結子という、ともに有名な役者ですから、考えてみれば世間の人たちが知っていて当然。知らなかったのは世間知の乏しい講師だけということが、図らずも判明したのです。

 それにしても、映画は確かに夫婦愛、家族愛について考えさせてくれる幾つかの貴重なテーマを含んでいると思われるのです。参加者には、それを提示してみました。

 第1。
 2人は相思相愛だったが、妻が若くして他界した。その妻がもう一度生き返って(わずか6週間だけですが)夫と息子のもとに帰ってくる。しかしその時彼女は記憶をなくしているので、かつて夫婦であったということを知らない。

 その妻が、6週間のうちに、「私はやっぱり、この人の妻で良かった」と思うようになるです。

 このストーリーは、「もし生まれ変わっても、あなたはもう一度同じ相手と夫婦になりたと思うほどに愛を深めたか」という問いを、観る者に提起します。

 統計的には、日本の独身女性の6割以上、独身男性の4割以上が、「結婚して、もし満足できなければ、別れても構わない」と考え、そして実際に、36%の夫婦がその考え通り実行しているのが現状です。

 しかし、そういう数字の次元とは別に、夫婦はどのように愛したら互いの満足度を高められ、別れるどころか、死んでも一緒にいたい思えるような関係になれるか。それを考えてみるのは貴重なことだと、この映画は静かに教えてくれているように感じられます。

 第2。
 女性は20歳の時に交通事故に遭い、ベッドの中で不思議な体験をする。自分の未来を見たのです。それによると、この好きな男性と結婚すれば、8年後の28歳で一人息子を残して自分は死ぬ。別の男性を選べば、違う未来があり得るかも知れない。それでも、この人と結婚をするか。

 少し悩なんだものの、心はすぐに決まる。結婚し、そして、かつて見た幻想の通りに死んでいくのです。

 このストーリーも象徴的に考えると、「結婚生活は決してバラ色ではない。いくつも山や谷のあることを覚悟した上で、それでも結婚するか」という問いとして受け取ることができます。

 この女性が運命に従ったのは、一つには、「この男性しかいない。互いに1人の相手だけを愛するように出会った気がする」と思ったからです。

 そしてもう一つは、「この人との間に、子どもをこの世に送り出してあげたい。その子のためにも私たちは出会った」とも思った。

 映画の中の2人には、出会い方に迷いがない。まるで聖書に出てくるエデンの園のアダムとイブのように、相手を他に探す選択肢がない。そんなふうに「この人が宿命の人だ」と思えれば、それがある意味、理想でもあるでしょうが、現実には選択肢があり過ぎるので、迷う。

 講演会では、この映画を枕として、「恋愛と愛とは、似て非なるものである」という話をしました。

 恋愛が「感情」であるとすれば、愛は「意志」である。恋愛が「理想の相手」を探そうとするのに対して、愛は「理想の相手」を作ろうとする。この愛が作動すれば、夫婦が別れる確率はぐんと下がるだけでなく、結婚というものが極めて崇高な価値として意識され得ると思われるのです。

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