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「やりがい搾取のブラック企業」では東京五輪ボランティアは集まらない

 先日、平昌冬季五輪が終わり、日本人選手が冬季としては最多となるメダルを獲得しました。2020年の東京オリンピックへの期待が高まるところですが、オリンピック開催のためには多くのボランティアが必要になります。平昌五輪では1万8000人のボランティア参加者が大会を支えていました。東京五輪のボランティアについて先月末、ボランティアの募集要項案が発表されました。しかしSNS上で、ボランティアにとっての負担が大きすぎると批判の声が上がっています。

●ボランティアへの負担が大きすぎる条件

 東京五輪のボランティアを募集するホームページによると、「8万人の大会ボランティアと東京都が募集する3万人の都市ボランティア、およびそのほかの競技会場が所在する自治体が募集する都市ボランティアを合わせて11万人以上の活躍を想定しています」として、大会の運営に直接かかわる「大会ボランティア」は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)が募集するとあります。大会ボランティアの募集要項案にある応募条件には、以下の6点が含まれています。

① 2002年4月1日以前に生まれた方
② 東京2020組織委員会が指定する全ての研修に参加可能な方
③ 活動期間中において、日本国籍を有し又は日本に滞在する在留資格を有する方
④ 大会期間中及び大会期間前後を通じて、合計10日以上活動できる方
⑤ 東京2020大会の成功に向けて、情熱を持って最後まで役割を全うできる方
⑥ お互いを思いやる心を持ちチームとして活動したい方

 活動時間と期間は、オリンピック・パラリンピック大会期間中及び大会前準備期間で、1日8時間程度。活動にあたり提供されるのは、ユニフォームと、活動中の飲食と、ボランティア活動向けの保険で、東京までの交通費及び宿泊費は自己負担・自己手配となるとあります。

 これに対してSNS上では、1日8時間、10日間以上という縛りがあることに「やりがい搾取のブラック企業?」、「8万人ものドMを募集するらしい」、「一般的に言って奴隷以下だよね」、「強制での派遣か、暇とお金をもて余している人以外、無理」、「スポンサーたくさんいるんだから有償にしろ」、「競技場にアホみたいに金掛けるのにボランティア募集するん?金掛ける所間違ってないか?」、「東京マラソンも毎回約1万人の無償ボラに支えられているので、世紀のオリンピックならもっと集まると見込まれているのではないでしょうか」、「通訳ボランティアに興味ありましたが なかなか厳しい」という批判の声が相次いでいます。

 一方で、「無賃金でも納得して行ける人が行けばいいんじゃない?」、「就活だかなんだかに有利になるとかいって集まってくるでしょ」、「好きな選手と握手&記念撮影券付ければ少しは需要あると思うよ?」といった肯定的な投稿も。

 大会組織委員会は、今年の7月下旬に正式な募集要項を公表し、9月~12月にかけて募集を行い、それから面接や研修会を2019年2月~2020年6月まで行う予定としています。教育的価値が高く、スポーツボランティアのすそ野を広げるという観点から、中高生のボランティア参加も検討しているとのことですが、発表された募集要項案では中高生が安全に活動を行えるのか不安な部分もあります。現在、中高生向けの活動時間、内容などについて検討中とのことですが、中高生のボランティア活動だけでなく、全体的なボランティア活動に対しても再検討してもらいたいところです。

●多様なボランティア参加者が参加しやすい条件へ

 活動期間については、10日間以上連続でなくとも結構ですとの注釈はありますが、社会人が参加するためには会社からの理解が必要で、学生が参加するには活動場所までの交通費や宿泊費を捻出することが課題となってきます。ボランティア側に負担が大きい現状ですが、平昌五輪でも、厳しい寒さに加え、「100人の宿舎に洗濯機が3台しかない」、「居室の温水シャワーが出ない」などと不満が続出し1万8000人登録されていたボランティアから2000人が離脱していました。

 それでも平昌五輪自体は無事に終わりましたが、各国で開催された五輪を通して、東京五輪でのボランティア活動の課題が見えてくることでしょう。 また、多様なボランティア参加者の募集も視野に入れているようで、障がい者、都内の小学生が親子で参加、働く世代、子育て世代などがボランティアに参加できるよう検討していくとしています。まだまだ案の段階なので、多様なボランティア参加者にどの程度譲歩されるか分かりませんが、公式な募集要項が発表される7月までにきちんと検討してもらいたいものです。

 自国で五輪が開かれることが貴重な体験で、観戦だけでなく、ボランティアに参加して大会を運営する側の経験をしたいという人も多くいることでしょう。積極的にボランティアに参加してくれる人を組織委員会も求めていると思います。

 しかし、募集要項案を見る限りただ体験したいからという理由だけでは気軽に応募できず、多様な参加者を求めている割にはまだまだ配慮が足りないことが見受けられます。ボランティア参加に慣れている人でもちょっと条件が厳しいという意見もあります。11万人以上という大規模なボランティアを募集する予定であれば、批判の声が大きい今の募集要項案ではそれほどの人数が集まるかどうか疑問です。多くの外国人が東京に集まる大祭なので、多くのボランティアと共に笑顔でおもてなしができることを目標に、組織委員会や東京都には案を詰めていってもらいたいです。

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