ワシントン・タイムズ・ジャパン

北朝鮮の「1000年の敵」は中国!?

1月9日から始まった南北会談

 北朝鮮から韓国への呼びかけにより、2年1ヵ月ぶりに南北会談が開催された。議題は2月の平昌冬季五輪に代表団などを派遣する話で、米中露そして日本はこの〝暫定的な雪解けムード〟を歓迎はしたものの、まるで北朝鮮の主導による朝鮮半島の統一(連邦制化?)のプロセスを見せつけられているようだ。

 米海軍は、攻撃型原子力潜水艦《テキサス》が1月中旬に補給・休養目的で釜山港に入港することを韓国側に打診したが拒否された。文在寅大統領は、盧武鉉政権時代に大統領秘書室長を務めた人物である。中国と米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)システムの追加配備をしない約束をしたとされる媚中・従北の文大統領の狙いは、盧元大統領と同様に「在韓米軍撤退」なのだろう。

 そして、南北会談が設定された1月9日のこの日時についてだが、たまたまこの日だったのだろうか? というのも昨年9月、北朝鮮による6回目の核実験を受けて国連安全保障理事会で決定した制裁決議に〝便乗〟した中国商務部(省)は、「制裁決議の採択日から120日以内に、北朝鮮の個人・団体が中国に設立した合弁企業や全額出資企業の閉鎖を命じる」「中国企業が北朝鮮の個人・団体と共に、中国以外で設立した合弁企業も閉鎖対象」との通達を出した。

 この「120日以内」のデッドラインは1月9日だった。金正恩・朝鮮労働党委員長は「習近平政権との決別」「朝鮮半島のことは我々朝鮮人で決める」との〝主体思想〟で、南北会談を同日から始めることに決めたのかもしれない。北朝鮮メディアは「民族自主」「わが民族同士」の原則と「外国勢力排撃」を連日、主張している。

 北朝鮮の官製メディアは、昨年後半から、「安保理制裁」という表現を「中国による制裁」へと変えた。さらに最近は「中国は1000年の敵」とのプロパガンダを強めているという。米国や日本は北朝鮮にとっての「100年の敵」と位置付けられているが、未来永劫の敵は覇権主義・膨張戦略で「民族浄化を続ける中国」なのだ。金王朝は、満民族、ウイグル民族、モンゴル民族、チベット民族、そして在中国の同胞の悲劇や差別の実態を熟知しているからだろう。

 この5年余り、親北朝鮮の江沢民派最高幹部らを次々と刑務所や鬼籍に送り込んできた習近平国家主席と金正恩労働党委員長の関係は史上最悪となった。現体制が続く限り、両国の関係改善はありえないだろう。ただ、核・ミサイル開発に心血を注ぐ北朝鮮への資金源を断つべく、中国を含む国際社会が厳格な制裁に乗り出したとはいえ、「完全な遮断」は無理難題である。

 年末にも(中国外交部は否定したが)、中国の船舶が海上で北朝鮮の船舶に石油を供給していたことが報じられ、国籍を偽装した船の存在も指摘されている。中国東北3省の市場には、輸入規制をしたはずの北朝鮮産のカニなども出回り、瀋陽にある北朝鮮系レストランの営業は依然、続いているという。

 順法精神のカケラもない中国社会は、規制が強まれば、「上に政策あれば下に対策あり」の慣習から、抜け穴を見つけての裏技、裏経済のスキームが発展する。北朝鮮も同じで偽装、闇ルートが常態化し拡大していく。ロシアも似たり寄ったりである。

 しかも、プーチン大統領は1月11日、ロシアの記者団との会合で、金正恩委員長について「やり手の成熟した政治家」「今回の対決に明らかに勝利したと思う。核兵器を保有し地球の大半が射程に入るミサイルを開発するという戦略上の任務を完了した」と発言したという。金王朝にとっての最高の味方であり、巨大な後ろ盾はやはりロシアでありプーチン大統領なのだ。

香港は〝闇利権のホットスポット〟

 〝皮包公司〟も暗躍している。事務所・資本・人員がおらず事業活動の実態がない幽霊会社(ペーパー・カンパニーやダミー会社などと言う)のことで、英語ではその他シェル・カンパニー(空殼公司)やフロント・カンパニーなどとも記される。その存在自体は合法だが、不法資金の助成やマネーロンダリング(租税回避)、所有権隠蔽など悪用されていることが多い。

 米国の複数のシンクタンクは、中国と北朝鮮が緊密に連携する企業は、中国に300社以上、香港にも百社以上あると推測している。米ワシントンD.C.の金融制裁分析の専門会社サヤリ・アナリティックスも、「100社を超える香港企業が北朝鮮の制裁対象と関連がある」とし、専門家らは「これらの企業は社主や役員を共有するなど、大規模な北朝鮮ネットワークの一部として運営されている」「香港が北朝鮮の中心的な資金流入の経路」「正体と国籍を隠そうとする北朝鮮にとって香港はうってつけ」と解析している。

 北朝鮮との違法取引により、2016年9月に摘発され、馬暁紅董事長兼総経理らが金融制裁を受けた「丹東市百強企業」の超有力企業の鴻祥実業発展は「13社のペーパー・カンパニーを香港に設置」と報じられている。中朝の一部は、中国が統治する「一国二制度」の香港を重要な拠点としてきたことが分かる。

 内外の有識者らは「中国共産党がこの20年来、香港行政にたえず介入し、今や全面的に管理統治権を握っている」と解析しており、中国政府に批判的な香港の民主活動家らの拘束も続く中、中国当局が北朝鮮の核・ミサイル開発に関与する闇企業の存在を知らないはずがない。それどころか幇助や公安がみかじめ料を徴収するなど、表裏で連動していると考えられる。
ただ、長年、その香港を支配してきたのは習一派の敵、江沢民派である。香港マカオのドンであり「江派二号人物」の曽慶紅

 元国家副主席(2002年11月の第16回党大会で序列5位に昇格)の流れを引き継いできたのは、前政権でチャイナセブン(中央政治局常務委員7人)の序列3位に昇格した張徳江・全国人民代表大会(全人代)常務委員会委員長だ。
〝北朝鮮エキスパート〟で〝吉林幇〟の彼は、香港を主管する中国政府の最高機関「中央香港マカオ工作協調小組」の組長である。「香港・中国経済貿易緊密化協定」(CEPA)が締結された2004年、広東省書記として香港を初めて訪れた彼は汎(拡大)珠江デルタ区域フォーラムの呼びかけ人となり、香港の中国化工作の先陣を切った。

 香港が江沢民派に掌握されているジレンマなのか。習主席は返還20年の行事に合わせて、昨年6月29日から7月1日まで、9年ぶりに同地を訪問したが、複数のメディアは、「江沢民派と表裏一体で張徳江と近い」行政長官の梁振英との握手を、習主席が2度、拒んだことを報じた。新たに行政長官に就任した林鄭月娥(キャリー・ラム)も、「張徳江が推した人物」とされる。

 ただ、その張徳江も今年3月に開催予定の全人代で常務委員会委員長を退職するはずで、中央香港マカオ工作協調小組の組長には、習主席の側近中の側近でプーチン大統領とのホットラインを構築してきた栗選書(現序列3位)が就任すると専門家らは見ている。

 とすれば、香港は徐々に江一派から習一派の牙城になるのだろうか? 
いずれにせよ、国際社会が香港を「自由と民主と健全な資本主義が栄えた地域」と勘違いしていないことを祈りたい。同地は所詮、中国など権力者が牛耳る〝闇利権のホットスポット〟なのだ。

 さて、北朝鮮の今後について、「平昌五輪閉幕後に、米国が斬首作戦を実行」などの説も飛び交うが、「奇襲攻撃は非現実的」との論調も目立つ。習主席としては金王朝の崩壊を画策しているはずだが、北朝鮮から難民が怒涛の如く流れ込めば、ただでさえコントロールが効かない東北3省がますます〝化外の地〟になりかねない。

 米中露は〝同床異夢〟ながら、「日米韓の協力体制を阻止し、朝鮮半島からの米軍の撤退を目指す」点で中露は一枚岩で、「朝鮮半島(南北)が中国の植民地と化すことを是が非でも阻止する」点では米露は一致しているはずだ。

 事実上、「中朝軍事同盟」は形骸化しているが、「日米韓外交・安全保障協力」も怪しい雲行きの中、振り上げた拳をどう下ろすべきか、袋小路に追い込まれた感があるのはトランプ政権なのかもしれない。日本は憲法改正も重要だが、今こそ軍需拡大を果敢に進め、名実共に独立主権国家を目指し、そして「不戦の誓い」をすべきでないのか。

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