ワシントン・タイムズ・ジャパン
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「会話する森の樹木たち」

 昨年来、シリーズで放映されているNHKスペシャルで、「人体の臓器は互いに会話し合っている」という最新の知見には、とても啓蒙される内容が多い。

 脳だけが唯一の司令塔ではなく、すべての臓器はあたかもインターネットのごとく互いに情報を送受し合っているというのです。

 ところで会話し合っているのは臓器だけではない、森の木々もまたそうだという専門家の知見があります。カナダの生態学者、スザンヌ・シマード氏の非常に興味深い話です。

 「土の下には、もう一つの世界、延々と経路が張り巡らされた生物学的世界が、木々をつなげ、互いに交流させ、森をあたかも一つの生き物のようにしていているのです」

 彼女が子どもの頃、飼い犬が湖畔の野外トイレの穴に落ちた。彼を助けようと、祖父と一緒に周囲の土を掘り起こした時のことです。土の中には白菌糸体があり、さらにその下には赤や黄色の鉱物の層があった。その時、彼女は感じたのです。「木の根と土壌が一緒になった層が森林の本当の土台になっているのではないか」

 大学に入って森林学を修めます。研究の結果、彼女が得た結論は、概ねこうです。木々の根には特有の構造を持った菌根という共生体が存在し、この菌根によってネットワークを形成することで、同種の樹木だけではなく、異なる樹木間でも会話が行われている。

 もう少し科学的に言えば、樹木は炭素、窒素、リン、水、防御信号、アレル化物質、ホルモンなどを「言葉」として、情報をやり取りしているのです。森の中には、高木、低木、常緑樹、落葉樹などさまざまな種類の木がある。それらの根を菌根体がつなげて、上に挙げた物質が流れ合うようにするのです。

 そのコミュニケーションを我々の言葉に翻訳すれば、「何か、お手伝いしましょうか?」「それでは、少し炭素を分けてくれませんか?」「どうしたんですか?」「誰かが私の上に布をかぶせて日陰になっているのです」と、こんな具合です。

 樹木ネットワークには、さらにもっと興味深いことがあります。これらの木々のネットワークには、その集合体のハブとなる「母なる木」が存在するというのです。「母なる木」は子どもたち(周辺のほかの木々)を自分の保護下に置き、菌根ネットワークを広げ、自分の子どもたちには地下で多くの炭素を送る。また、子どもたちが根を思う存分伸ばせるように、自分の根が広がり過ぎないように自制する。この「母なる木」が何らかの理由で痛手を負うと、それにつながっているネットワークは元に戻れなくなる。

 土から上の様子だけ見ていると、森の中には偶然的な要因で種々の樹木が雑然と林立していると思えます。しかし地下の世界の様相は、まったく違っているようです。聖書の世界を見れば、言葉を操れるのは神様以外に我々に人間と天使だけだろうと思ってきたのですが、最新の科学的知見によれば、臓器も会話しているし、森の木々も会話している。しかもインターネットのようなつながりを形成して。

 結局、神様の創造した万物は、微粒子から大宇宙の天体まで、どの次元のものもすべて大小のネットワークを作って会話し合っているということになるのかも知れません。「言葉」の意味合いこそ同じではありませんが。

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