米国の分断 第3部 「自虐主義」の源流
社会の亀裂どう克服、愛国心に訴えるトランプ氏
米国内の党派対立は年々先鋭化しているが、トランプ大統領が進めるあらゆる政策や人事に反対する左翼勢力の抵抗運動は、これまで見たことがないほどの激しさだ。
そもそもトランプ氏はなぜ、左翼勢力からこれほど嫌われるのか。暴言や大統領らしからぬ態度が主たる理由ではない。米国をどう見るかという「国家観」の根本的な相違が、彼らの反発を強めているのだ。

変わる公教育の役割、かつては移民の同化を担う
移民国家の米国は、過去に移民が大量に入ってくる時期を何度か経験してきた。それでも国家としてまとまってきたのは、移民を米国民として同化させることを重視してきたことが大きい。中でも、移民に建国の理念や伝統を教え、米国民としての誇りや愛国心を養う上で重要な役割を担ってきたのが公教育だった。

移民の政治利用、民主党支持層増やす手段に
米国で長年、国論を二分する政治・社会論争となっている移民問題。メキシコ国境からの不法移民流入を防ぐ壁建設やイスラム教国からの入国制限を主張するトランプ氏が大統領に就任して以来、その論争は一段と先鋭化している。

揺らぐ大学の価値、学生に「反米」を植え付け
「娘とは政治の話ができないのよ。口論になってしまうから」。ワシントン郊外に住む主婦のMさんは嘆いた。日本出身で米国籍を取得しているMさんは、米国人の夫とともに共和党支持者。一人っ子の娘は保守的な家庭環境で育ったが、ニューヨークにある名門大学のロースクールに進学してからリベラルな価値観に染まり、Mさん夫婦がトランプ大統領を支持していることに強く反発している。

偏向する歴史教科書、主要20冊が全て左翼傾斜
米オハイオ州のデイトン大学教授だったラリー・シュワイカート氏が、共著で『愛国者のアメリカ史』を出版したのは2004年のことだった。教育現場で使われる歴史教科書が左翼の視点で書かれている状況を憂い、米国の歴史を偏向なく教える必要性を切実に感じていたからだ。

筋金入りの共産主義者、党員の過去を偽ったジン氏
故ハワード・ジン・ボストン大学名誉教授の「民衆のアメリカ史」は、マルクスの「階級闘争史観」から米国の歴史を書き直した著作だが、ジン氏は実際、米国共産党に所属していた筋金入りのマルクス主義者だった。ジン氏は生前、共産党員だったことを否定していたが、同氏が亡くなった2010年に連邦捜査局(FBI)が公開した資料で、ジン氏は党員としてさまざまなフロント組織の活動に従事していたことが明らかになっている。

歪んだ「ジン史観」、邪悪な国と一貫して描写
米国民の歴史観に大きな影響を与えた故ハワード・ジン・ボストン大学名誉教授の著書『民衆のアメリカ史』。「共産党宣言」の冒頭で「今日までのあらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」と論じたマルクスの教えに忠実に従うかのように、ジン氏は米国の歴史を一貫して支配階級と被支配階級の対立として描いている。

歴史を書き換えた1冊、人々から国家への誇り奪う
第1部、第2部では、米国で自国の歴史や現代社会を否定的に捉える風潮を示す事例を紹介した。第3部では、こうした「自虐主義」がなぜ浸透したのか、その背景を探る。(編集委員・早川俊行)
「トーマス・ジェファソンら米建国の父たちは、黒人奴隷を所有した邪悪な人種差別主義者だった。だから、米国は誕生から邪悪な国であり、今なお邪悪な国だ。米国をこのように見る米国人が増えている」
