山田寛の国際レーダー
トランプさん忘れないで、北の生物・化学兵器の脅威も
来週ハノイで開かれる第2回米朝首脳会談の結果は、日本にも吉と出るか。いや懸念の方が倍も大きい。
会談成功を誇示したいトランプ米大統領の前のめりが気になる。「北朝鮮に核放棄の徴候はない」と、米情報機関や軍の責任者、国連専門家パネルなどが口をそろえても、それに反発する。金家3代の巧みな目くらましDNAにやられ、「この道はいつも来た道」になりかねない。

弔い合戦の歴史戦、北方領土の主権は譲れない
先日、中村登美枝さん(92)の訃報を受けた。
2次大戦終戦の1945年、19歳の中村さんは朝鮮北部に侵攻したソ連軍に追われ、朝鮮最北端から10カ月かかり38度線にたどり着く。途中で両親が死亡、3~16歳の孤児12人(途中合流も多く最後は約50人)を引率しての大逃避行だった。

極貧人口増加、アフリカで米国が中国に挑む
国際貧困モニター研究機関「世界貧困時計」によれば、ナイジェリアは昨年、極貧人口(1日1・90㌦以下で生活)がインドを抜き世界最多になった。12月末には約9090万人(総人口は約2億人)で、世界総極貧人口の15%。毎分4・5人の割合で増加中だ。子供の23%が極貧、70%が一般的貧困という別の調査結果もある。

18年の国際関係、ショックだった言葉
今年の国際関係の中で、衝撃を受けた六つの言葉(群)を並べたい。
①6月の米朝首脳会談の際のトランプ米大統領の金正恩・朝鮮労働党委員長への賛辞は大衝撃だった。「率直」「立派」「有能」「賢明」「民を愛している」「誰にも反対されない強力指導者。皆姿勢を正して彼の話を聞く。米国民もそうしてほしい」

ブッシュ父大統領の米国、勝ち誇らない外交の力
先日94歳で死去したブッシュ父41代米大統領。その在任時に駐米記者だった私なりの思いをつづりたい。あの時代、米国は東西冷戦終結と湾岸戦争勝利で自信と誇りを取り戻したが、ブッシュ氏は誇っても勝ち誇らない外交大統領だった。そして、人間的、家族的温かさを、大統領と夫人が体現していた。

移民問題タブー視をやめよう
外国人労働者受け入れ拡大のための出入国管理法改正案に対し、「拙速」との批判が左右から出ている。だが、少子高齢化社会の助っ人集めと、技能実習、留学、難民申請などを名目にした“ゆがんだ”就労横行の是正のため、必要な治療だろう。ただ、その後一層大きな手術も考えるべきではないか。
私は難民問題に関わり、“ゆがみ”を感じ続けてきた。日本の制度も外国人もゆがんでしまう。

安田純平事件から、後続ジャーナリストへの助言
シリア武装勢力から解放された安田純平氏を、左派メディアは英雄の様に扱い、ネトウヨは「人質プロ」と酷評した。どちらでもなかろう。かつて小突入取材を経験した私は、「第2、第3の安田純平氏」の可能性を持つ後輩達に次の様に助言したい。

ウイグル弾圧問題、対中国のリトマス試験紙だ
マクロン仏大統領が、旧仏植民地アルジェリアの独立戦争(1954~62年)時に、仏軍が組織的な拷問など人道に反する罪を犯し、国に責任があると認めたのは先月中旬。特に57年に独立運動家で25歳のアルジェ大教授、モーリス・オーダン氏を拘束、拷問の末死亡させたと発表し、高齢のオーダン夫人に謝罪した。

ノーベル平和賞決定と日本、戦後70年談話が泣いては困る
今年のノーベル平和賞受賞者は、紛争下の性暴力と闘ってきたコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師と、イラクの少数派ヤジディ教徒の女性、ナディア・ムラドさんに決まった。内戦状態の国で4万人以上のレイプ被害者を助けた医師と、自身を含む同教徒数千人が、過激派組織IS(イスラム国)の性奴隷にされた事実を世界に訴えてきた女性と。

イスラエルとパレスチナ 育て、融和の心の種と芽
米主導の圧力の結果、朝鮮半島の南北融和は急進展。だがパレスチナは、国連パレスチナ難民救済事業機関への拠出停止その他の米国の圧力に強く反発、対イスラエル融和どころか第3次インティファーダ(民衆蜂起)の懸念すら出ている。
だがそんな嵐の中で、融和と共生のための種や芽の存在によけい注目したくなる。日本でも小さな種は播(ま)かれている。

北朝鮮報道史の二つの汚点
先月、脱北者5人が東京地裁に北朝鮮政府を人権侵害で初提訴した。1959~84年に、在日朝鮮・韓国人と日本人妻ら約9万3000人を虚偽宣伝で騙(だま)し、帰国させる「国家的誘拐」を行った。朝鮮総連が「地上の楽園」と宣伝したが、現実は劣悪な生活と人権完全抑圧の「地獄」だった。それを世界に訴えたい――という。

フェイク退治を名分に、世界で報道の自由抑圧が進む
世界流行語大賞があれば、今年の1位は「フェイク(偽)ニュース」だろう。
報道を「国民の敵」と呼ぶトランプ米大統領は、先日も「報道の80%はフェイク」と決め付けた。
日本にも例の慰安婦報道などがあるから、トランプ流毒舌も頭から否定はできない。だが少々毒が強すぎる。

スポーツ支援も含めて 東京五輪の真価が決まる
今月千葉で行われた世界女子ソフトボール選手権の予選で、アフリカ代表のボツワナは全7試合コールド負けした。総失点97、得点1。そのチームに日本人コーチ、中村藍子さんがいた。元選手で昨年初めから現地で指導している。

共産・強権独裁国家も、遺骨にもっと敬意を
朝鮮戦争休戦から65年、約55柱の戦死米兵の遺骨が北朝鮮から米国に返還され、トランプ米大統領は「家族たちにとり素晴らしい瞬間。金正恩氏よ、ありがとう」と大喜びした。
戦死・行方不明米兵に懸ける米国の家族、国民の思いは、確かにとても強い。トランプ氏が、米朝会談でとにかく1本ヒットを打てたと喜ぶのも分かる。

日本PKO只今4人、高田警視の千の風を想う
「何しろたった4人ですよ」。長く国連平和維持活動(PKO)に関わった大島賢三・元国連事務次長が心底残念そうに言った。
PKOは現在世界で14ミッションが実施され、10万人以上が従事している。だが日本は昨年5月、5年半で延べ4000人を派遣した南スーダンから自衛隊部隊を撤収した後、司令部要員4人を残しているだけだ。

難民・移民・外国人労働者、日本はウィンウィンの関係を
欧州がまた難民・移民で大揺れだ。
「移民問題が欧州連合(EU)の命運を握る」(メルケル独首相)。
だが、受け入れ大国だったドイツやイタリアも含め、抑止ムードが強まっている。

金正恩氏への小提言、隗より始めて普通の国へ
金正恩朝鮮労働党委員長殿。米朝首脳会談で「安全保証」や「米韓演習中止」を獲得、“後ろ盾”中国との絆も結び直し、満足しておられるでしょう。但(ただ)し非核化は今後の米朝交渉次第。トランプ大統領は日本に非核化費用5兆円を出させると言ったそうです(25日付本紙)が、日本は拉致解決まで1円も出さない強い決意で交渉しようとしています。

米朝首脳会談後、アジアの人権は厳冬期入りか
米国は米朝首脳会談で、北朝鮮の人権問題をなるべく口にしない暗黙の約束をしたようだ。人権抑圧非難などで体制を揺さぶらないことも「安全保証」の一部なのか。トランプ大統領は「素晴らしい人柄」「国民に愛されている」などと金正恩・党委員長を褒め、人権問題は北だけではない、別の目的が優先でそうかかずらえないと言い、一定のお墨付きを与えてしまった。心配である。アジアの人権問題はどうなるだろう。

ベトナム残留日本兵、家族の絆の強さ印象づける
先日NHK・BSで放映された「遥かなる父の国へ ベトナム残留日本兵家族の旅」は、ベトナムに残された家族たちの父親との絆を強く印象づけるドキュメンタリーだった。

今こそバッジの着用を、河野外相と辻元議員に訴える
「千載一遇の最後のチャンスだ」。北朝鮮拉致被害者の家族は今、米朝首脳会談で(またその後あり得る日朝首脳会談で)、事態が大進展するよう必死に祈っている。
私は昨年9月のこの欄で、「河野外相は拉致被害者救出運動のシンボル、ブルーリボン・バッジをつけるべきだ」と訴えた。

南北、米朝首脳会談 北はベトナム式統一を狙う?
43年前の4月、ベトナム、カンボジアの戦争で共産側が勝利し、インドシナ共産主義半島が成立した。今年、その記憶がいつも以上に気になる。27日の南北朝鮮、その後の米朝の首脳会談に臨む北朝鮮の究極の狙いが、「ベトナムコース」と重なって見えるからだ。

習体制と精日と溥傑・浩夫妻
中国に習近平絶対体制が確立され、日中関係はどうなるか。昨年以来、「日中関係改善ムード」が言われているが、あくまで中国の戦術や都合による改善ムードだ。「抗日救国」が中国共産党の歴史的金看板なら、習近平的党支配強化で「反日」の根本がゆるみっこない。反日教育を強めながら、真の関係改善はない。
