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TPP署名、対中牽制も念頭に早期発効を

 日本や米国など12カ国が、環太平洋連携協定(TPP)に署名した。12カ国の国内総生産(GDP)の合計額は世界全体の4割近い。TPPが各国の批准を経て発効すれば、太平洋を囲む巨大な経済圏が誕生する。

 経済活性化に加え、強引な海洋進出で力による現状変更を試みる中国への牽制(けんせい)という意味合いもある。さまざまな利害を超え、大局的な観点で早期発効を目指したい。

米で承認先送りの動き

 TPPは農産品・工業品の関税削減・撤廃のほか、投資や知的財産権など幅広い分野で共通ルールを導入する。世界銀行の試算によれば、TPP発効は12カ国の国内総生産(GDP)を平均1・1%押し上げる。

 今後焦点となるのは日米両国の批准だ。TPPは署名後、12カ国全ての国内承認によって発効するが、2年以内に承認手続きが終わらない場合、GDPで全体の85%以上を占める6カ国以上の批准が発効条件となる。米国のGDPは全体の約60%、日本は約17%を占めるため、日米両国の承認が欠かせない。

 しかし米国では、労働組合などが雇用の減少を懸念するほか、一部の企業が最先端医薬品の開発データの保護期間が短くなることに不満を抱いている。本格化した大統領選でも候補者の大半が「TPP反対」を打ち出し、議会多数派の野党共和党はオバマ政権に選挙前の承認審議には応じない姿勢を示した。

 だがTPPには、中国への牽制という面もある。オバマ大統領はこうした意義を丁寧に説明し、早期発効に向けて議会への説得に全力を挙げるべきだ。大統領選候補者らも米国が世界のリーダーであることを自覚し、内向きの姿勢を改めてほしい。

 日本でも交渉を主導した甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑で審議が紛糾する恐れがある。疑惑の追及は重要だが、TPPの承認や関連法案成立に悪影響を及ぼしてはならない。

 安倍政権は「攻めの農業」を掲げ、2020年に農林水産物・食品の輸出額1兆円という目標を立てているが、TPPに対する農家の不安は大きい。TPPの内容はもちろん、農家の経営安定化のための関連法案についても分かりやすく説明する必要がある。

 安倍晋三首相は、先月の施政方針演説で「美しい田園風景、伝統ある故郷、助け合いの農村文化。日本が誇るこうした国柄をしっかりと守っていく」と表明した。この約束をしっかりと果たしてほしい。

 一方、TPPに沿った改正著作権法案は、著作権侵害を権利者の告訴がなくても捜査当局が摘発できる「非親告罪」とする。これには、アニメや漫画のパロディーなどの「二次創作」が萎縮するとの懸念がある。

 TPPでは、各国が非親告罪の対象を「権利者が経済的被害を受けるもの」に限定できる。政府も海賊版などに対象を絞る方針だ。こうしたこともきちんと周知することが求められる。

繁栄の輪を広げたい

 TPPには、韓国、台湾、タイ、インドネシア、フィリピンの5カ国・地域が参加に関心を表明している。アジア太平洋地域で繁栄の輪を広げたい。

(2月6日付社説)

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