ワシントン・タイムズ・ジャパン

米国の量的緩和縮小に日銀も出口探る議論始めよとする毎日の先走り

景気回復に向けてアメリカの市場の変化に常に向き合う必要がある。

景気回復に向けてFRBはアメリカの市場の変化に常に向き合う必要がある。

経済状況異なる日米
 米連邦準備制度理事会(FRB)が、新型コロナウイルス禍への危機対応で2020年3月に導入した異例の量的金融緩和の縮小開始を決め、金融政策の正常化に踏み出した。

 新聞では東京と本紙を除く5紙が社説で論評を掲載、見出しは次の通りである。

 5日付毎日「危機対応の出口一歩ずつ」、日経「米量的緩和の縮小は経済見極め慎重に」、6日付読売「物価動向見極め慎重に進めよ」、朝日「注意深く軟着陸果たせ」、7日付産経「リスク見極め正常化図れ」――。

 列挙した見出しの通り、毎日を除く4紙は似た言葉が並び、論調も大同小異という感じもするが、米経済の現状把握の正確性という点で日経、読売を評価したい。

 毎日はFRBの決定を受け、また他の先進国の金融当局も政策転換を図っているとして、「日銀も、危機対応の出口を探る論議を始めなければならない」としたが、先走りというか短絡的にすぎよう。産経が指摘するように、「景気回復が遅く、デフレ懸念も残るため大規模緩和を継続せざるを得ない日本とは異なる」からである。

 毎日は米経済の状況把握でも、正確さに欠ける。同紙は今回のFRBの政策転換の背景について、「ワクチン接種の進展などを受けた景気回復がある」「雇用も堅調だ」と指摘する。

米景気回復既に鈍化

 確かにその通りなのだが、最近ではその「堅調な雇用」で回復ペースが鈍化してきており、また、読売が指摘するように、物流の混乱や半導体不足などの供給制約が響いて、米国の7~9月期の成長率は減速している。

 日経も「雇用者数はコロナ前より500万人少ない。経済がまだ本調子でないうえ、感染を恐れて職場に復帰しない人びとも多いためだ」と指摘する。

 だからこそ、日経が強調するように、「物価の急上昇と景気回復の鈍化で、金融政策のかじ取りは難しさを増している」わけであり、「国内外に十分目配りした慎重な政策運営」が求められるのである。先に現状把握の正確性で日経、読売を評価したと述べたのは、この点である。

 もちろん、毎日も「正常化の本丸であるゼロ金利政策の解除にあたっては、難しい判断を迫られそうだ」と述べ、「インフレ圧力がさらに高まれば、早急な利上げを迫られる可能性もある」と指摘。

 早過ぎる利上げは消費や投資を冷え込ませ、米景気の回復を阻害しかねない、と懸念を示すのだが、既に米景気は回復が鈍化しており、それだけにFRBは最近のインフレ率の高止まりに神経をとがらせているわけである。

 この点で、「いつまでも危機対応を続けると、金融市場が過熱しバブルを生む危険性がある」とした毎日は、「今回の決定は、正常化への一歩となるものだ」との評価に喜び過ぎて、米景気の鈍化をさらに強めてしまう別の危険性には疎かったといえる。朝日や産経にも、毎日と同様、米景気の回復鈍化についての言及はなかった。

 各紙とも米金融政策の世界経済への波及、影響を懸念し、FRBに慎重な運営を求めた。当然である。

 その運営だが、日経の指摘の通り、「物価高に対応し金融を引き締めるべきか、回復途上の雇用を緩めの政策で支え続けるべきかの見極めが難しい」状況である。

市場の関心は利上げ

 FRBのパウエル議長は量的緩和の縮小を決めた後の会見で、「雇用最大化の目標に達しておらず、利上げする時期ではない」と表明したが、市場の関心は次のステップの利上げに移っている。

 日経は、FRBが早期の利上げを否定し続けても、市場でさらなる物価上昇の観測が広がり、長期金利が急騰するといったリスクもあると指摘し、「経済・物価の動向を予断なく見極め、市場とも粘り強く対話を続けてほしい」と訴えたが、さすがに経済紙である。

(床井明男)

0

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。