ワシントン・タイムズ・ジャパン

中国経済の減速を歓迎するのがむしろ正解

膨張にブレーキが世界のため

 中国の経済成長率が2四半期連続で低下しました。私は中国経済が減速し、各国経済の過度な中国依存度が下がり、中国の軍事的な膨張にもブレーキがかかるならば、世界にとって好ましいと思います。

 日本の新聞を見ていると、「黄信号が灯った中国経済の減速」(日経社説、10/19日)、「不動産大手、恒大集団の株急落」(読売、22日)のように、中国の当局や国民と同じ目線で心配している様子が分かります。

 確かに中国経済が減速すると、貿易や直接投資の対中依存度が高い諸国は困るでしょう。恒大の経営破綻をきっかけに、不動産バブルが崩壊すると、世界の株価下落につながります。

 「電力、不動産危機に共通するのは、中長期的に必要な措置でも、性急で強権的な手法が混乱をもたらした点だ」(読売)はどうでしょうか。こうした手法が中国の方式です。

 不動産バブルは早く解消したほうがよい。富裕層が投資目的で2、3件ものマンションを買う。損さしても構わない。本当に住宅を必要とする庶民を保護すればいいのです。

 マネー市場の関係者、投資家からすると、天井にきている世界の株価が下落に向かうことは歓迎できないでしょう。中国経済が減速すれば、対中輸出も減り、対中依存度の高い国ほど影響を受けます。

 習近平が率いる共産党独裁政権にとっては、成長減速、住宅バブルの崩壊、株価急落は歓迎できません。多くの日本メディア、識者も同じ目線で見ているとすれば、それは違うのではないか。

 もちろん、世界のマネー市場が混乱に陥ることは歓迎できません。そうした目先の懸念より、中国経済の減速の長期的な意味を重く考えたい。

 中国にとっては「黄信号が灯った」のであっても、日本や世界にとっては「歓迎できる黄信号」か「歓迎したい青信号」かもしれないのです。中国の目でなく、自分たちの目線で今起きている現象を考察する。

 バイデン米大統領が次期中国大使に指名したバーンズ元国務次官が上院外交委の指名公聴会で、「中国は米国の安全保障に対する最大の脅威だ」と証言しました。「台湾への威圧」「新彊ウイグル自治区への集団殺害」なども挙げ「不当である。止めなければならない」と、強調しました。

 中国の軍事的拡大、帝国主義的膨張は、中国経済の凄まじい成長が可能にしてきました。軍事費は2000年が1200億元、2020年が1兆2700億元と、膨張しました。露骨な海洋進出を進め、日本の尖閣諸島を「中国の領土だ」と宣言する振る舞いは許せません。

 日本の2020年のGDP(国内総生産)は、2000年の530兆円とほぼ同じで、成長が止まっています。一方、中国のGDPは20年前に日本の4分の1だったものが今や日本の3倍です。

 中国の急速な経済膨張とともに、日本も対中貿易、直接投資の規模が大きくなり、中国経済の存在なくして、日本経済はやっていけません。ですから米国と同じように「中国は最大の脅威」などと、叫べないのです。

 そう叫べなくても、日本国内で「中国経済の減速は歓迎できる」くらいの指摘があってよさそうなものなのに、あまりお目にかからない。中国側と同じ目線でしか考えていないように見えます。

 中国の温室効果ガスの年間排出量は、世界全体の4分の1を超え、米欧印の合計に匹敵する量です。日米欧の排出量はピークを過ぎ、年々減る段階に入ってます。中国は経済膨張により、排出量はまだ増えていいます。

 「30年以前に排出量はピークに達する」「60年以前に排出量をゼロにする」が目標です。つまり30年まで増え続ける。日米欧が脱炭素化を目標通り達成しようとすれば、成長率は鈍化し、中国経済は独走する。

 その間、中国は石炭火力を増強し、原発は稼働を続けるのですから、逆の方向を目指している日本との経済格差は開き、対中依存度が高まる。ですから中国が低成長経済に入ることが望ましいのです。

 中国経済の減速の理由は「不動産開発投資の鈍化、地方政府の電力供給制限による工場稼働率の低下、感染拡大を止める新型コロナ対策のための移動制限」(読売、10/19)などです。

 人口減少、高齢化が進めば、構造的にも中国は成長率は鈍化していきます。中国という巨鯨が地球で暴れ、混乱が起きるのは困る。巨鯨化は望ましくない。中国の低成長化を歓迎する声がもっとあがってほしい。


「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」より転載
https://blog.goo.ne.jp/jinn-news

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