«
»

下期の日本経済回復の展望

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士 鈴木 淑夫

設備投資・輸出リード型に
非製造業・中小企業は低迷続く

鈴木 淑夫

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士
鈴木 淑夫

 1~3月期のマイナス成長に続き、4~6月期もマイナス成長と予想される日本経済は、欧米に比べてコロナ禍からの立ち直りが遅れてしまったが、ここへ来て、5月を底に下期に向かって回復し始める兆しが出て来た。

鉱工業生産指数が漸増

 欧米に比べて回復が遅れた最大の理由は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐ決め手と言えるワクチン接種が欧米に比して遅れ、5月を中心に感染症の第4波が起こり、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を発出して個人消費を抑えたためである(6月17日の本欄参照)。

 これを反映し、5月の「景気ウォッチャー調査」では、「家計動向関連」が大きく落ち込み、このため全体の「景気現状判断DI」も急落した。しかし同じ「調査」の中でも、「企業動向関連」の「現状判断DI」は、5月には早くもやや回復し、「先行き判断DI」は大きく回復に転じている。

 企業の生産活動を鉱工業生産指数によって見ると、コロナ禍の影響で昨年1~3月期と4~6月期に急落したあと、7~9月期からは毎四半期回復している。工場の立地は地方に散らばっているため、都市中心の消費活動停滞とは異なり、生産活動は緊急事態宣言などの人流抑制の影響を受けにくいのであろう。

 最新計数である5月の鉱工業生産は、前月比マイナス5・9%と3カ月ぶりの減少となったが、これは特殊事情である。もともと世界的に品薄気味であった半導体の国内生産が、ある半導体製造工場の火災事故によって落ち込み、これに伴い半導体を大量に使う自動車生産が止まり、裾野の広い自動車工業に部品を納めている電気・情報通信機械や汎用・業務用機械など広汎な業種で減産が玉突き的に発生した。

 しかし製造工業生産予測調査によると、6月の生産は5月の事故減産の反動で、前月比プラス9・1%と著増する見込みで、4~6月期もこれまで同様、前期比増加を続けることは間違いない。

 このような状況の下で、本年下期以降の日本経済はどのような形で回復するであろうか。6月調査「日銀短観」を見ると、製造業と非製造業、大企業と中小企業の間に、今後の回復の歩みに大きな格差がある。本年度の大企業の売上高計画では、製造業が前年比プラス6・0%であるのに対し、非製造業は同プラス0・4%とほぼ横這(ば)いである。

 また同じ製造業でも、「業況判断DI」は、大企業が「良い」超14%ポイントと既にコロナ禍前の2019年の水準を上回っているのに対して、中小企業はまだ「悪い」超7%ポイントに低迷している。また非製造業の中でも「業況判断DI」の企業規模別格差は大きく、大企業がプラス1%ポイントの「良い」超であるのに対して、中小企業はマイナス9%ポイントの大幅「悪い」超となっている。

 このような製造業と非製造業、大企業と中小企業の格差は、業種別構成の違いから生じている。大企業製造業では、汎用機械、電気機械、生産用機械など「業況判断DI」の「良い」超が26~34%と極めて高い設備投資、輸出関連業種が多い。

 これに対して中小企業製造業では、繊維、食品、木材・木製品、紙パルプなど、コロナ禍の影響を強く受け、「業況判断DI」が「悪い」超19~48%ポイントの家計消費関連のウエートが高い。また中小企業非製造業は、「悪い」超20~74%ポイントの宿泊・飲食サービス、対個人サービス、運輸・郵便などのウエートが高い。

家計消費の増加まだ先

 下期の日本経済回復は、設備投資・輸出リード型となろう。「短観」の製造業・非製造業・金融業合計の21年度設備投資計画(ソフトウエア・研究開発を含み、土地投資額を除く)は、ポストコロナのデジタルトランスフォーメーション(DX)もあって3月調査より3・2%ポイント上方修正され、プラス9・4%に達している。また大企業製造業の21年度年度輸出計画は、世界景気の回復を背景に5・9%ポイント上方修正されプラス8・5%となっている。この間、これまで控えられてきた家計消費(旅行、飲食、観劇など)の反動的増加(ペントアップ効果)が本格化するのはまだ先であろう。

(すずき・よしお)

0

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。