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立ち直る世界経済と日本

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士 鈴木 淑夫

大規模な対策実施が奏功
設備投資と輸出が回復を牽引

鈴木 淑夫

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士
鈴木 淑夫

 新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延(まんえん)で、世界中の株価が暴落したのは、昨年1~3月のことであった。しかし、その後各国の株価は反発に転じ、昨年夏頃の一時的足踏みや本年2月の波乱を経ながら、今日まで大きな上昇トレンドに乗っている。米国のダウ平均株価は、今月も史上最高値を更新した。中国、台湾、韓国など東アジア諸国の株価も、昨年のコロナ暴落からの反発率が200%を超えている。日本はやや遅れているが、それでも反発率は185%である。

ワクチン接種の効果も

 このような世界的株価の上昇トレンドの背景には、少なくとも次の三つの要因がある。

 第一は、コロナ禍で落ち込んだ経済に対する例を見ない大規模な経済対策の実施である。米国ではバイデン政権の1・9兆ドル(約200兆円)の財政支出計画が実施に移された。また連邦準備制度理事会(FRB)も、ゼロ金利政策を少なくとも今後3年間続ける方針を示し、市場の緩和縮小観測を退けた。日本では、昨年度中、総額73兆円に達する第1~3次補正予算を実施し、その執行は本年度にずれ込んでいる。日本銀行は、消費者物価上昇率が物価目標の2%を超えて持続するまでは、現在の超金融緩和を続ける方針を崩していない。日米共、一部にはインフレやバブル発生を懸念する声が出ているほどだ。

 第二は、新型コロナウイルスに対するワクチンが開発され、接種が始まっていることだ。その効果は完全ではないにせよ、なお猛威を振るうコロナ禍に対し、一定の歯止めが掛ってくることは間違いないと見られる。

 第三に、第一と第二の動きを背景に、現実の実体経済に改善が見られ始めていることだ。今月公表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによると、本年の世界全体の経済成長率は、今年1月に公表された成長率に比して、0・5%上方修正され、6・0%となった。その内訳を見ると、米国は1・3%上方修正されて6・4%となり、中国は8・4%の高い成長率に達するとされている。

 以上、第一~第三のような世界情勢の下、今後の日本経済はどうなっていくであろうか。

 鉱工業生産を見ると、昨年4~6月期にコロナ禍で前期比マイナス16・9%と大きく落ち込んだあと、7~9月期から本年1~3月期まで3四半期連続して回復し、製造工業生産予測調査によると、4月には落ち込み前の水準を上回り、今回景気後退直前のピークである一昨年9月の水準にまで戻ると見られている。

 同じ回復傾向は、3月調査の「日銀短観」にも出ている。大企業製造業の「業況判断DI」は、5%の「良い」超となったが、これはコロナ禍以前で消費税率引き上げ直前の一昨年9月と同水準であり、業況感はそこまで回復したことを意味する。

 業種別に見ると、業況判断が目立って好転しているのは、電気機械、生産用機械、汎用機械などの機械工業、自動車工業、素材関係の非鉄工業などである。このことから、日本経済の回復を牽引(けんいん)している需要は、国内の設備投資と輸出であることが分かる。

 製造業、非製造業、金融機関の2021年度設備投資計画合計(ソフトウエア・研究開発投資を含み、土地投資額を除く)は、前年比プラス2・4%と前年度のマイナス4・9%から増加に転じ、特にDX(情報技術を使った事業変革)の進展を反映してソフトウエア投資額は前年比プラス7・3%と大きく伸びる。

K字型脱出は下期以降

 また大企業製造業の輸出計画は、前年度下期から前年比プラスに転じ、本年度上期は同プラス5・7%と国内の売上計画(同プラス3・8%)を上回る。これと比べると、非製造業の売上計画は本年度に入ってプラスに転じるものの、上期は3・2%にとどまる。対面型サービス、宿泊・飲食、運輸などでコロナ禍の影響がなお大きく、立ち直りは遅い。

 格差の大きいK字型回復から抜け出すのは、ワクチン接種の効果が出てくる本年度下期以降であろう。前記のIMF見通しでは、本年の日本の成長率は3・3%である。

(すずき・よしお)

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