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今年の日本経済を展望する

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士 鈴木 淑夫

悪材料出尽くし反動回復か
事業変革や脱炭素などが課題

鈴木 淑夫

鈴木政経フォーラム代表、経済学博士
鈴木 淑夫

 2021年の年頭に当たり、今年の日本経済を展望してみたいと思う。

 振り返ると、この2年間の日本経済は散々であった。19年は、13年から6年間続いた景気上昇が終わって、緩やかな自律的後退局面に入り、最後の10~12月期には景気後退下の消費税率引上げという失政と大型台風に襲われ、マイナス成長に陥った。その揚げ句、20年は年初から新型コロナウイルス感染症が流行り始め、4~6月期まで、3四半期続けて実質国内総生産(GDP)は落ち込んだ。

 7~9月期からは緊急事態宣言の解除やGo To キャンペーンでようやくプラス成長に戻ったが、10~12月期には再びコロナ感染症の第3波に襲われて成長が鈍化したと見られるので、年末までには3四半期連続落ち込みの半分程しか回復していないのではないか。

3度の補正の効果は大

 このような雰囲気の中で2021年を迎えたので、どうしても暗い気分になりがちであるが、冷静に考えてみると、自律的景気後退、消費増税、コロナ禍と続いた悪材料は昨年までに出尽くしており、新たな悪材料がまた出てこない限り、今年はこれまでの悪材料からの反動回復が期待できる局面に入るのではないだろうか。

 19年に日本経済が自律的後退局面に入った時、企業は設備ストックの蓄積と雇用量拡大の行き過ぎに気付き、設備投資と新規雇用を抑制し始め、本格的な総需要減退=景気後退が始まった(昨年7月14日の本欄参照)。この景気後退は、設備ストックと雇用量が今後の低下した需要見通しに見合う水準まで調整されたと企業が判断した時に終わり、再び設備投資と雇用が高まることによって自律的景気回復が始まる。

 今回はこのメカニズムにコロナ禍による需要減退が重なったため、設備ストックと雇用量の調整は20年中に大きく進み、21年の初めにはほぼ調整が完了して自律的景気回復の素地が整ったように見える。

 景気後退下の消費増税という財政政策の逆噴射も、6兆円程度の負の効果を発揮したが、昨年の第1次、第2次補正予算と本年初めに成立する見通しの第3次補正予算は、合計73兆円の規模に達する。中身を議論すればいろいろあるが、19年10月の消費増税の負の効果に比べれば、比較にならないほど大きい正の効果を今後の日本経済に与えることは疑いない。

 新型コロナウイルスについては、欧米で取りあえず2種類のワクチンの開発・接種が始まり、日本でも本年1~3月期から接種が始まる。もちろん、思わぬ副反応などで計画通り進まないリスクはあるが、本年上期中にはかなり普及しよう。

 そこに、7~9月期の東京オリンピック・パラリンピックが開かれる。これは日本経済に、一定の刺激を与えるだろう。

 以上のように、この2年間の日本経済を大不況に陥れた三つの悪材料は、いずれも本年の日本経済にとってはマイナス要因ではなくなってくる。その点で、今年は久しぶりに明るい展望の持てる年になるのではないか。

 ただし、21年を単なる反動回復の年に終わらせてはならない。この不況の中で、日本経済の中期的課題が浮かび上がっている。日本経済の中期的停滞の主因は、金融緩和による総需要刺激の不足という需要側ではなく、構造改革の不足による生産性向上の停滞という供給側にあることが、誰の目にも明らかになった(昨年9月7日の本欄参照)。

構造改革で生産性向上

 コロナ禍の中で普及した在宅勤務(テレワーク)は、日本における電子商取引(EC)や情報技術を使った事業変革(DX)の遅れを浮き彫りにした。脱炭素の取り組みも急務だ。雇用面では、従来のメンバーシップ型に代わってジョブ型の雇用契約を導入すべき分野が広範に存在すること、正規・非正規の雇用条件の格差を合理的に見直すこと、最低賃金を欧米並みに引き上げることなどが、課題として浮かび上がっている。

 これらの推進こそが21年以降の日本経済の生産性向上の決め手となる構造改革である。

(すずき・よしお)

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