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訪日客過去最高 地方誘客、コト消費に知恵を

 日本政府観光局が発表した2019年の訪日外国人数(推計値)は、2・2%増の3188万2100人となり、過去最高を記録した。伸びが鈍っているため、20年4000万人の目標達成は厳しい状況だが、東京五輪・パラリンピックの開催で注目が集まる中、できるだけ多くの外国人客を呼び寄せ、観光日本をアピールしていきたい。

韓国人客減少で伸び鈍化

 伸びが鈍化したのは、韓国人客が前年比25・9%減の558万4600人に留まったことが大きい。東日本大震災があった11年以来、8年ぶりの減少で、日韓関係の悪化が背景にある。

 511万人の訪日客のうち韓国人が240万人(18年統計)も占める九州などは影響が大きい。しかし、インバウンドを他のアジアの国々や欧米などに広げる好機と捉えるべきである。

 佐賀県がタイに照準を当て3年間で同国からの観光客を15倍に増やした実績もある。九州に限らず顧客の多様化への取り組みは、日本の観光産業の地力を増す絶好の機会である。

 4000万人達成の鍵は、リピーターの増加と地方への誘客だ。幕藩体制下、日本は個性的な地方文化が育まれた。東京や大阪、京都のゴールデンルートだけでなく、中部圏では、伊勢神宮のある三重県から名古屋、岐阜県の白川郷そして石川県の金沢、能登半島へと昇る観光ルート「昇龍道」も開発された。

 外国人に地方文化の魅力をどう知ってもらうか知恵を絞っていきたい。8万人強の人口の6倍以上、55万人の外国人が宿泊するようになった岐阜県高山市の成功には大いに学ぶべきものがある。国によって関心が異なることを十分調査した上での魅力の発信や受け入れ態勢の整備などを参考に、それぞれの地方独自の取り組みを期待したい。

 観光庁によると、19年に訪日客の旅行消費額(速報値)は6・5%増の4兆8113億円だった。政府が20年の目標としている8兆円には遠いが、滞在日数を増やすなどして目標に近づけたい。消費を増やすポイントは、いわゆる爆買いなどのモノ消費から体験型のコト消費への移行と言われる。滞在型の観光資源は都市部より地方の方が豊かだ。日本の伝統文化や里山、里海の自然と触れるような観光開発を進める必要がある。

 一方、訪日客の増加でホテルの予約を取りにくくなり、日本人観光客が敬遠するなどの問題も出ている。とりわけ受け入れ態勢の整わない地方で、オーバーツーリズム(観光公害)による問題も生じている。道端にゴミが捨てられ、地元の人々の負担となっているところもある。

「郷に入っては郷に従え」

 訪日客を温かく迎え、もてなす心は、相当に育ってきた。一方で、日本のルールを守り慣習に従うように導く毅然(きぜん)とした姿勢も必要だ。

 訪日客が急増している金沢市では、観光名所の茶屋街を中心に「ぽい捨て等防止重点区域」が設定され美化に努めている。「郷に入っては郷に従え」は、普遍的なルールだ。まずは住民が励行することで、外国人にもそのルールを尊重する姿勢が生まれる。これも一つの日本文化の体験になるはずである。

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