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秋田から国産ドローン

高性能で信頼される日本製

東光鉄工株式会社UAV事業部シニアマネジャー 鳥潟 與明氏に聞く

 今や「ドローン」映像は日常的にあふれている。が、その多くは外国製機器によるものだ。秋田県大館市に本社を置く東光鉄工株式会社(=虻川東雄(あぶかわさきお)会長)は、建築鉄骨や橋梁(きょうりょう)、クレーン、南極昭和基地のドーム、防災シェルターなどを手掛ける創業80年の中小企業だ。近年、農業用ドローンの製造・販売に続き、多目的防水ドローンの開発を手掛け商業化を目指す。国産ドローンの開発と課題について、秋田県大館市の鳥潟與明・東光鉄工UAV事業部シニアマネジャーに話を伺った。
(聞き手=伊藤志郎)

救難や災害時に威力
悪天候・夜間も飛行可能

後ろにあるのが、開発中の多目的防水ドローンですね。本体重量5・3キログラム。アーム展開時のローター間が1・1メートルで高さは50センチ。折り畳み時は46センチとコンパクトだ。

鳥潟與明氏

 とりがた・ともあき 1952年秋田県生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒業後、情報関連の民間会社2社を経て、93年から秋田、首都圏、北海道の職業能力開発短期大学校、同大学校などで教授、教材研究室室長、能力開発部長、副校長、企業支援総括マネジャーなどを歴任。UAV(無人航空機)の利用に関わったことが縁で2015年に東光鉄工UAV事業部シニアマネジャーとなり、17年同社取締役。趣味は50歳から始めた社交ダンスで、妻と踊るのが楽しみ。

 中国産の安いドローンに対抗するためには、オンリーワン、差別化できる製品でないといけない。幸い、秋田県の「ものづくり中核企業成長戦略推進事業」の認定(3年計画)を受け、今年は最終段階となった。

 最初の2年間で、IPX5の完全防水と、毎秒15メートルの風に耐える試作機を開発した。標準装備として、静止画・動画カメラ、高出力スピーカー(100ワット)、サーチライト、物資投下装置(5キログラム)が同時装着可能。飛行時間は標準で40分と長く、天候・昼夜を問わず遭難者の捜索や災害現場で威力を発揮する。

 加えて、大阪のベンチャー企業との協業で可能となった特殊カメラは超高感度(ISO100万相当)、光学31倍ズームと赤外線カメラを搭載した仕様で、漆黒の夜間でも視認性が高い。近年、豪雨、台風、地震等の自然災害が増えており、国内での防災・減災の強力なツールとして多くの公的機関から問い合わせをいただいている。

鉄骨製造の御社がどうして農薬散布のドローン製造に携わったのか?

 開発当初は橋梁の保守点検にドローンが使えないかと考えたが、橋梁背面での飛行制御が難しかった。当時、私は大学の企業支援総括マネジャーをしており、虻川会長から農薬散布のドローン事業化に手を貸してくれないかと言われ、移籍を決意した。準備室を立ち上げ、2015年9月に事業部の管理職を任された。

16年度に農薬のドローン散布が本格化し、農水省の調査では18年度、延べ防除面積が約2万7千ヘクタールと前年の2・8倍にも増えた。

 農薬散布用の3機種を販売している。すべて農林水産航空協会の認定機で、優れた散布性能を有する。最も大型の機体(TSV-AH2)では、10リットルの液剤タンクを積み、約12分で1・25ヘクタールに散布できる。飛行方法は手動操縦の他、飛行安定性を向上させる独自のTアシストモードを備えた。

 秋田県内、青森県、岩手県を中心に東北一円で約200台出荷している。弊社の強みはワンストップ、つまり研究開発から組み立て、製造、免許取得の教習、定期点検、保険サービスまで全て弊社内でできること。メンテナンス部品も揃(そろ)っているのでアフターサービスでの評価も高い。

ここの社屋は、1996年に建てられ、2014年に廃校となった「大館市立雪沢小学校」を活用している。

 18年しか使われず建物はきれいで、秋田杉をふんだんに使うなど建築物としての価値が高い。しかも、廃校直後から雪沢地区の方々が会をつくり、芝生の管理や植栽をしてくれていた。今も雪沢地区運動会や「星を見る会」を開いている。私たちも校内の版画や賞状はできる限り当時のままとしている。

 現在、大館市より施設全体を借り受けている。グラウンドではテストフライトができ、夜間や雨天時には体育館で飛行も可能だ。教習時の座学は教室で行うので非常に便利だ。

ドローンだけでなく、外国産の安い電気製品が大量に日本に入ってきて、このままでは日本の企業は立ち行かなくなるのではないかという不安がある。

 われわれも安い中国産の部品を一部使用している。しかし、性能や信頼性が高く、差別化できる製品であれば売れると考えているので今後は日本製部品を増やしていきたい。

 現在、ホビー向け及び空撮ドローンの7~8割は中国製で、公共機関でもかなり活用されている。

 国内には「市場競争原理で負けるんだったら淘汰(とうた)されても構わない」という人もいる。しかし職業能力開発の支援を担当してきた経験から、人材育成やものづくり産業の支援制度をもっと使いやすくしてほしいと強く望んでいる。公的補助金制度はたくさんあるが、申請には提出書類の数が多く、決定後にも事務作業に多くの時間が割かれ、開発に専念するのが難しい。

 加えて、外国製品を活用していく場合のセキュリティー上の問題等を十分に評価しておく必要がある。

ドローンでの農薬散布の規制が緩和された。危険な農薬を散布するわけだから、機体の安定性や定期点検、操縦免許、保険はしっかりしているのだろうか? 特に地上散布用農薬に比べはるかに高濃度での散布だ。

 6月までは国が主導的立場でかなり規制をし、農林水産航空協会が機体の認定をしていた。しかし7月に大幅に規制が緩和された。残留農薬や環境汚染、機体の安全性について誰が責任を取るのか大きな懸念材料といえる。

 中国製農薬散布ドローンは100万円以下で入ってくる。弊社の上位機種の半額だ。金額だけが先行する過当競争の時代に入った。このような環境で日本の食の安全が本当に担保できるのか真剣な議論をお願いしたい。

果樹の受粉にドローンを活用する研究を御社では実施している。

 国内では養蜂家が少なくなり、受粉に使用するマメコバチが減っている。人手による受粉作業は高所作業、時間のかかる作業なので後継者がやりたがらない。

 青森県立名久井農業高校と3年間研究を行った。手作業ではリンゴ1本あたり受粉に40~50分かかるが、農業用ドローンでは約8分だった。形も良く立派なリンゴが作れた。改良を加え、1~2年をめどに商用化したい。

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