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安倍首相の予定通りの消費税率引き上げ表明に総じて肯定的な各紙論調

◆積極的に評価の読売

 「来週の秋の大運動会は予定通り開催します」。

 日経の1面コラム「春秋」(16日付)はこんなお知らせが回ってきた気分だと言う。「中止の告知ならともかく、予定通りというのにあえてアナウンスに及ぶとは珍しい」からだ。

 安倍晋三首相が15日の臨時閣議で、来年10月から消費税率の8%から10%への引き上げを改めて表明し、増税に備えた景気対策の具体化を指示したことについての感想は言い得て妙である。これまで2度の増税延期で「今回も見送られるのでは」との見方を封じたと言える。

 既定方針の確認だから消費税率の引き上げそのものに対する反対論は、翌日の各紙論調には見当たらない。実施方針を積極的に評価した読売は「社会保障制度を全世代型に転換するため、安定した財源を確保する。その決意を明確に示したもの」と首相の表明を後押しした。以下、積極的な評価順に、毎日「増税を予定通り行うのは妥当だ」、産経「将来世代に対する無責任なつけ回しを防ぐためにも、現在の世代が一定の負担増を受け入れるのは避けられまい」、小紙「増税は好ましくはないが、やむを得まい」と続くが、これについて朝日、日経は特に言及がなかった。

◆産経は景気失速懸念

 そこで消費税率引き上げの影響とその対策についての各論になる。

 懸念されるのは景気への影響だが、毎日、日経、小紙はやや楽観的な見方を示した。「景気への目配りは大事」だとする一方で毎日は、今回の上げ幅が14年の3%より小さい2%であることや、食料品などは軽減税率の導入で8%据え置きとなることから「家庭の実質的な負担増は全体で2兆円強で14年よりかなり少なくなる」とした4月の日銀試算を示した。

 日経も日銀試算を基に「家計の負担増は2・2兆円と前回(8兆円)の3分の1にとどまる」と指摘し、むしろ「反動減を心配しすぎて、不効率な歳出を増やす」ことによる財政健全化の逆行を懸念した。

 小紙も前回の増税時に比べ「増税による負担増は、約3分の1から4分の1にとどまる」とした上で「対策に万全を期すことは大事だが、過大になっては主客転倒である」と結論付けた。妥当な見方と言えよう。

 一方、産経はこうした楽観的な見方に対して「だが、平成26年4月に税率を8%に引き上げた際には個人消費が大きく落ち込むなど影響が生じた。景気が大きく失速すれば、税収増にはつながらない」としてやや慎重な見方を示した。政府には「増税を実施できるように経済環境を整えるだけではなく、駆け込み需要や反動減などに目を光らせた経済対策を講じる」ことを求めた。

◆事前準備の遅れ危惧

 政府がこうした景気対策に万全を期すことは当然であるが、産経も一方で「ただし経済効果の薄いばらまきは、厳に慎まなくてはならない」とクギを刺している。この点については日経が「消費増税の前後で消費需要が急変動しないようにならすことは望ましいが、その対策を財政支出に過度に頼るべきではない」と指摘。さらに具体的に「耐久消費財の消費を喚起する補助金や減税は、需要の先食いでその措置が打ち切られた時には、再び反動減が起こる可能性がある。財政支出に依存する経済体質を助長しないことが大切だ」と指摘している。

 さらに、対策が「その名目で野放図な歳出拡大につながっては困る。対策は効果を吟味し厳選すべき」「真に必要なお金をきちんと出せるように、消費増税対策に名を借りたバラマキは慎むべきだ」と強調する。同感である。

 「財政出動に頼りすぎてはならない」と訴える毎日が、増税しても安定的な成長が続けられる経済にするために「賃上げの拡大や正社員の雇用促進などを通じて」の消費活発化の必要を説いていることにも留意したい。

 いずれにしても、軽減税率の適用に関わる事前準備などの遅れも気掛かりだ。「政府は周知徹底に努める」(読売)ことが重要である。

(堀本和博)

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