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日本経済について「学び直し」を推奨して特集を組んだエコノミスト

◆第二の人生設計必要

 「人生100年時代の到来」という言葉が随所で聞かれる。定年が65歳、70歳に延長されたとしてもその後、数十年生きるとすれば、第二の人生設計が必要。その際に心掛けなければならないのは「学び直し」という作業であろう。もちろん、ビジネスマンとして第一線で働いている時は世の動向、世界の潮流に関心を持っていなければならないのは当然で、その点で言えば人生は「常に学び直し」ということになる。

 一方、経済に目を転じると今日ほど変化の激しい時代はない。経済そのものが国内政治に限らず国家間の政治経済の影響をもろに受け、国民生活に衝撃を与えることから、経済動向は常に注視しておかなければならないのは言うまでもない。

 そういった視点を踏まえて週刊エコノミスト(6月19日号)は、わが国の経済動向に着目し「学び直し日本経済」と題して特集を組んだ。表紙の見出しには、「アベノミクス最大の弱点」「『サービスは無料』で物価低迷」「保有しないのに『株高』の恩恵?」といった文言が並ぶ。記事の内容は、「学び直し」とあるように、為替や物価、株価、金利など経済の動向に対して、分かりやすく説明しようという思いがみられる。

◆為替や通貨など説明

 例えば、為替について言えば、「為替レートはそれぞれの通貨を使う国や地域の経済を結び付けている。為替レートが動けば、双方の国で、立場によって損得が生じる」(上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)と説明し、その例として「円高になるのは、消費者にとって短期的には得な話だ。輸入品の値段が下がり、海外旅行にも安く行けるからだ。現地価格で20㌦のワインは、言え1㌦=110円の時は2200円だが、1㌦=90円まで円高が進めば、1800円になる」(同)といった具合に、中高生でも理解できるような書き方になっている。

 よくテレビや新聞などで「円は安全な通貨として買われた」との表現を見掛ける。直近では2016年6月23日、英国の欧州連合(EU)離脱に対して行われた国民投票で離脱が決定的になった際、英国ポンドを中心に新興国の通貨が下落。その一方で、円相場は1㌦=99円台まで上昇した。

 こうした「安全な通貨としての円」について、上野氏は「投資家のリスク回避志向が高まり、保有財産のうち価格変動が大きかったりする資産を売ってリスクを減らそうとする動きが活発になる」とし、さらに「リスクの高い資産を売った投資家が資金を投じることが多いのが日本円、米ドル、スイスフラン。これらは相対的にリスクが低いと見なされており、『逃避通貨』と呼ばれる」と説明する。世界的なショックが起こると円高になると言われる理由はここにある。

◆アベノミクスは健在

 ところで、同誌は「アベノミクスの最大の弱点」について、「賃金が上がらないこと」を挙げる。「企業業績が改善する一方で、賃金が上がらないことが、消費者が景気回復を実感しにくい要因になっている」と主張する。

 そもそもアベノミクスは金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で構成され、それまで沈滞していた経済環境を好転させる狙いを持っていた。金融政策としては黒田東彦日銀総裁による異次元的緩和によって為替を円安に誘導し株価を引き上げ、企業収益を引き上げる。企業収益の上昇は賃金上昇につながり、消費が活発化していくというシナリオを描いていた。

 そして、そのシナリオは意外に順調に推移しているのである。第2次安倍晋三政権がスタートした12年12月以降、景気拡大が続き既に57カ月続いた「いざなぎ景気」(1965年11月~70年7月)を超えている。賃金も緩やかであるが上昇基調にある。むしろ、急激な賃金上昇は企業(中小企業を含めて)にとってもマイナスの影響を与えることになる。ある面、経済は急激な変化を好まないのも事実なのだ。

 政府の経済政策の二大柱は「物価の安定」と「雇用の創出」である。特に物価は「緩やかなインフレ状態」を持続することが求められる。そういう意味でアベノミクスは決して失敗していないのである。

 ただ、「経済は生き物」とも言われる。起こり得る事態を想定しながら、それに対処するすべを持ち合わせておかないといけないのは言うまでもない。

(湯朝 肇)

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