
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。
機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。
創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。同取締役退職後、日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。
また、国内では東国原英夫氏など自治体の首長・議会選挙の政策立案・政治活動のプランニングにも関わる。主な著作は『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)
ピート・ブティジェッジという社会実験は成功するのか
米国大統領選挙に向けて、保守派が支えるトランプ大統領とリベラル左派が支える民主党候補者らの亀裂が深まり、米国人は自らの国がアイデンティティー政治によって徹底的に分断されていくプロセスを受け入れざるを得ない状況に陥っている。
トランプ大統領が保守派にアピールする言動を繰り返す中、民主党側はエリザベス・ウォーレンやオカシオ・コルテスがリベラル派にアピールする言動で無為に応酬する不毛な状況が継続している。両者の対立は徐々にエスカレートしていき、最近ではトランプ大統領の弾劾調査にまで発展した。弾劾調査の直接的要因はウクライナをめぐる問題であるが、弾劾をめぐる背景にはそれ以上の根深い対立関係があることは誰が見ても明白だろう。

トランプ大統領弾劾がもたらす政局上の地殻変動
民主党のナンシー・ペロシ下院議長がトランプ大統領の弾劾に関する調査を開始することを宣言し、米国の政界は大きく揺れている状態となっている。一見してトランプ大統領にとって、かつてない危機が発生したように見えるが、実はこの弾劾騒ぎは同大統領にとってはプラスに働く可能性も十分にある。
筆者は疑惑内容の信憑性は完全に政局マターとなっているため、それを問うことは取るに足らない議論だと思っている。むしろ、本当に重要なことは「弾劾」がもたらす政局上の地殻変動を見極めていくことだ。

ペンス副大統領の「第二の天安門演説」へのステップ
2019年8月、トランプ大統領は従来までの中国との交渉姿勢を明確に転換し、貿易交渉の妥結を半ばあきらめたように見える。当初、9月1日からの関税引き上げに言及し、中国を為替操作国認定した際には、トランプ大統領は中国との間で農産物を含めた貿易合意を目指していた様子がまだ存在していた。
しかし、中国が農産物に対する報復関税を表明したことで事態は全く異次元の方向にステップアップすることになっている。

トランプ大統領の手のひらの上で転がされる米国政局
米国下院本会議は、7月25日にトランプ大統領が指示する超党派予算・債務上限合意案を可決し、同案は上院に送付されて早々に可決する見通しとなっている。予算は政治そのものであり、この出来事はトランプ大統領の政局運営手腕の辣腕ぶりを示す「取引の芸術」が披露されたものと言える。
今回下院を通過した予算案は、既存の予算上限を裁量的支出が約3200億円上回るものであり、債務上限引き上げに反対する共和党下院議員らから強烈な反対に直面した。実際、共和党議員197人中132人が反対票を投じており、予算が成立した理由は野党民主党の多くの議員が賛成に回ったからである。トランプ政権の野党との表面的な対立を眺めているだけでは理解できない現象だ。では、なぜこのようなことが可能だったのだろうか。

アイデンティティー政治色を強める2020年米民主党大統領予備選挙
6月26、27日、米民主党の2020年大統領予備選挙最初のテレビ討論会が開催された。一定以上の小口献金を獲得する登壇条件を満たした20人の候補者が前半・後半10人に分かれる形でディベートを行った。
テレビ討論会は知名度・人気が足りない候補者に、トップランナーに対する“ジャイアントキリング”(番狂わせ)の機会が与えられるため、民主党側の大統領予備選挙の行方を占う上で非常に重要なイベントである。

米中協議、知的財産権をめぐる2つの視点
米中関係は急速に対立の度合を深めており、両国による報復合戦の火花が散っている。しかし、現在の米中関係がトランプ政権発足時から予定されていたものと単純に想定することは早計であろう。このような急激な変化は徐々に米国内の認識が修正されてきた帰結として起きたと捉えることが妥当だ。
米中協議の焦点は知的財産権をめぐる諸問題にある。しかし、米中協議における知的財産権に関する取扱いは「経済」と「安全保障」の2つの側面を持っており、局面に応じて強調されてきたものが異なっている。米中協議という表面上の文脈が同じであっても、その内容の質的変化を知ることは今後を予測するために極めて重要である。

“超新星”ピート・ブティジェッジ、民主党大統領予備選に旋風起こすか
2020年米大統領選挙にバイデン元副大統領が民主党予備選に出馬表明し、同党側の予備選挙候補者がほぼ出揃った。バイデン氏は Me Too 運動の煽りを受けて、そのブランドイメージを早くも傷つけながらの立候補ということになった。
米大統領選挙は、予備選挙の実質的な期間も含めると約1年半に及ぶ長丁場だ。そのため、現時点で最有力候補だからと言っても、早期に目立ちすぎることは対立候補者やメディアからの集中砲火を浴びるリスクに身を晒すことになる。

ロシアゲート問題の6つの敗者は誰か
いわゆるトランプ米大統領の“ロシアゲート”を捜査していたモラー特別捜査官の報告概要が提出されたことで、ロシアゲート問題自体は一旦収束することになりそうだ。筆者はこの捜査は政治的意図を持った捜査だと思っていたので、もう少し疑惑が残る形での決着となるかと思ったが、米国の民主主義や司法の健全性が証明される形となって良かったと思う。
モラー特別捜査官の報告によって生まれた政治的敗者は5つ。

2020年大統領選挙に向けてマイノリティー票を狙うトランプ陣営
トランプ米大統領による国境の壁をめぐる非常事態宣言の動向をめぐって、昨年末から今年2月半ばまで米国政治に関する話題が独占された状況であった。メディアは政府閉鎖によってトランプ大統領の支持率が低下したことに着目し、彼が壁に関する幾つかの妥協をしたことで民主党下院に対して壁をめぐる戦いで事実上敗北したと強調した。
ただし、大統領選挙の約2年前の現段階における大統領の支持率低下は元々それほど気にする必要はない。実際、トランプ大統領の一般教書演説後、同演説が視聴者に高く評価されたことを受けて大統領支持率は政府閉鎖前の水準にまで回復している。

トランプ大統領が「政府閉鎖で勝利した」と言える3つの理由
トランプ米大統領が国境の壁に関する予算計上の確証なく政府閉鎖を解除する繋ぎ予算に同意したことで、メディア各社は「トランプ大統領敗北、民主党ペロシ勝利」と報道している。しかし、これは非常に短絡的なモノの見方であると言えるだろう。
トランプ大統領にとって最も優先すべき事項は、2020年の大統領選挙で再選することだ。もちろん公約の達成なども重要なことであるものの、政治家の本能とは常に自身の政治生命を保つために全力を注ぐものと考えるべきだろう。トランプ大統領は2019年1月を通して米国の政治シーンを覆いつくした政府閉鎖によって、2020年大統領選挙に向けた前哨戦を制したと言える。以下、その理由を3つのポイントから解説しよう。

日本政府は韓国の防衛産業弱体化という報復措置を徹底すべきだ
韓国が火器管制レーダーを日本の哨戒機に発したことに逆切れし、日本の対応に逆に謝罪を要求してくるというトンデモぶり、の背景には何があるのか。最近の韓国政府や韓国海軍の日本に対する一連の横暴な振る舞いは朝鮮半島情勢の変化から生じていると考えることが妥当だろう。韓国人の民族的メンタリティーなどの矮小な問題に物事を帰結するのではなく、現在の東アジア空間がどのような状況にあるのかを冷静に分析し、その上で日本政府は断固たる対応を実施すべきだ。
韓国が日本に横暴な振る舞いを行うことができる環境は、米朝首脳会談による米国と北朝鮮の対話ムードによって形成されている。つまり、米国による北朝鮮への軍事力行使という選択肢が排除された状態において、韓国にとって日本との連携を重視する必要性が落ちていると思うべきだ。韓国にとっては米朝衝突の可能性が極めて低いと判断するなら、日本との友好関係の構築は政治的にはデメリットしかない。

2018年は陰謀論者完敗の年、2019年から政治議論の健全化を!
2018年は近年政治に関心がある市井を賑わせてきた陰謀論者が完敗した年であった。
その代表的な陰謀論は、TPP亡国論や水道法改正反対論である。

政局情勢から見たシリア・アフガニスタンからの米軍撤退の意味
トランプ大統領が2018年末に公表したシリア・アフガニスタンからの米軍撤退開始、そしてそれに伴う形で発表されたマティス国防長官辞任は世界に驚きを持って迎えられた。しかし、2020年大統領選挙を見据えた場合、この決断には一定の合理性が存在している。
トランプ政権は中間選挙の下院敗北を受けて、政権運営の正統性にやや疑問が生じるようになってきている。トランプ大統領が自らへの支持を再度固めるために「選挙公約」に依拠した政権運営を行い始めることは理にかなった行為と言える。国境の壁閉鎖をめぐる政府閉鎖(シャットダウン)問題の発生もその一環と看做すべきだ。

米政治の今後占う共和党保守派とトランプ大統領の減税政策めぐる攻防
11月6日の中間選挙で共和党は上院議席増、下院過半数割れという結果になった。今後、上院では主流派のミッチー・マッコーネル院内総務の力が増大し、下院では民主党主導の議会運営が行われることになる。共和党保守派は主に下院勢力を梃子にして影響力を行使してきたが、今後は戦略の変更が迫られていくことになるだろう。
トランプ政権はインフラ投資、薬価の引き下げなどの様々な点で民主党側と妥協をしていく必要が出てくるであろうが、差し当たりの議会調整は減税政策をめぐる交渉も深刻化していくことになる。

実は米国民の過半数に支持されているトランプの移民キャラバンへの強硬姿勢
米国のリベラル寄りのメディアがトランプ大統領の中米からの移民キャラバンに対する強硬姿勢を批判(特に選挙目的だと批判)している。日本のメディアや有識者も思考停止したまま同内容を垂れ流している有様だ。
確かに、トランプの対応には中間選挙に向けた意図があるだろう。しかし、そもそも自国の国境に何千人もの人々が無理やり入国しようと迫ってくることを放置することの方が異常だ。日本のメディアや有識者はこれが米国ではなく日本の国境で起きていることだとしたら同じことが言えるのだろうか。彼らのスタンスは相当に疑わしい偽善的な姿勢だと思う。

共和党保守派「水曜会」と自民党「部会システム」の比較
米中間選挙に合わせて渡米し、共和党保守派が毎週水曜日にワシントンDCで開催している作戦会議でスピーチを行う予定となっています。この会議は「水曜会」と呼ばれており、完全内容非公開・参加者非公開・写真禁止・完全招待制というインナーミーティングであり、筆者もここで何を話したかということは多くを書くことができません。

「安田純平」型ジャーナリストへの正しい政府対応
「安田純平」型ジャーナリストに関する是非が盛り上がる
安田純平氏を英雄扱いする朝日新聞などのリベラルメディアや自己責任論を述べるネット世論の双方が沸き上がっている。

マティス国防長官の辞任はトランプ政権の政治リスクを増大させる
トランプ大統領がTV番組の取材中にマティス国防長官の辞任の可能性を示唆した。事実であれば、ニッキー・ヘイリー国連大使に続くトランプ政権を揺るがす辞任になる可能性がある。

カバノー最高裁判事誕生が「トランプ再選」に直結する理由
ブレット・カバノー氏の最高裁判事承認手続きが米国上院で50対48で通過した。
本件を巡って同氏の高校時代の性的暴行疑惑が浮上したことで、9月末の承認が10月頭にまで延期される事態となっていた。そのため、今回の採決はFBIによる追加調査結果を待つ形で10月7日に連邦上院で行われたものである。

SDGS・グローバル社会主義時代の自由主義者たちへ
ある地方自治体関連の会合での「ご婦人」との出会い
先日、地域の文化団体で活躍しているご婦人にお会いした。曰く、地域の学校教育で「SDGsを担う人材を創るためにESDに取り組む必要はないと地方自治体の審議会でガツンと言ってやった」ということ。SDGsとは、国連が定めた「持続可能な開発目標」のことであり、ESDは持続可能な社会の担い手を育てる教育活動を指す。ここ数年SDGsがグローバル企業、政府、社会団体に浸透してきたこともあり、地方自治体においても内閣府から補助金が貰えることもあってSDGsに沿った取り組み云々、という題目を掲げるところが増えている。

リベラルから立ち去ろう!10月27にワシントンD.Cで予定される大行進
ワシントンD.Cで10月27日にWalk Away運動の大行進デモが企画されている。この大行進デモは米国民主党全国委員会本部からキャピトルヒル前まで予定されており、近年の政治運動の中でもかなり大規模のイベントになる可能性が高い。
Walk Awayは、ニューヨークのヘアスタイリストであるブランドン・ストレイカが2018年5月に始めた運動であり、著しく偏ったリベラルなイデオロギーに傾斜した民主党から穏健な民主党員が距離を取ることを主張するものだ。ストレイカ氏自身も41年間、生涯を通じた民主党員であり、共和党からは距離がある人物である。本人がメディアで答えたインタビューによると、彼は「同性愛者の保守主義者だ」ということだ。

2018年中間選挙・リバタリアン大反乱の予兆
11月に控えた米国の中間選挙で面白い現象が起きつつある。米国には共和党・民主党の二大政党の他に第三極のリバタリアン党や緑の党という泡沫政党が存在している。しかし、これらの政党は2016年の大統領選挙を境に泡沫扱いすることが難しくなってきている。もちろん、同政党の候補者が当選することは難しいだろうが、二大政党がぶつかる接戦州での結果を左右するだけの得票を得る可能性が存在しているからだ。

米国中間選挙・接戦選挙区に大量投入されるリベラル系政治広告の影響力拡大
米国中間選挙情勢に関して「The Sixteen Thirty Fund」というファンドが注目を浴びるようになってきている。ファンドの代表を務めるEric Kesslerは、ヒラリー・クリントンの環境政策に関するスタッフを務めた人物であり、New Venture Fundという100以上のリベラル系組織に資金提供している団体のボードメンバーでもある。
このThe Sixteen Thirty Fundが注目される理由は、11月に予定されている中間選挙の接戦州でリベラル勢力の組織に対して大量の資金提供を行っていることによる。Politicoによると、アリゾナ、コロラド、ネバダ、フロリダ、アイオワ、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ニューヨーク、カリフォルニアなどで同ファンドから資金提供を受けたリベラル系の組織が活動しており、共和党の現職が行ったオバマケア見直し及び減税政策について批判的なTV広告を行っている、という。同ファンドは年初から現在まで6885件のTVCMの組成に関与しており、それらは今年前半に中間選挙を対象とした非営利活動の広告主としてトップ5に入る全米商工会議所やAmericans for Prosperity並みの数字となっている。
