
昭和13年(1938年)生まれ。35年防衛大学卒業(防大4期)後、北部航空方面隊司令官、航空総隊司令官を経て、平成6年7月航空幕僚長。8年3月統合幕僚会議議長となり、9年10月退官。
急速な中国海軍膨張に思う
元統幕議長 杉山 蕃
懸案の安保関連法も決着がつき、誠に結構と考えている。今回は米中首脳会談の次なる課題の日中韓首脳会談の実現等を睨み、中国海軍の急速な膨張について紹介し、懸念とともに中国の目指すところについて所見を披露したい。

終戦70年に建設的な視点を
元統幕議長 杉山 蕃
8月は慰霊の月である。終戦記念日、今年の靖国神社は、若人・外国人を含め多数の参拝者で賑わった。例によって、参拝する閣僚・国会議員をターゲットにマスコミが例年以上の放列である。前日発表された安倍総理の「70周年談話」、佳境に入った参議院での安保関連法案審議の状況もあり、マスコミの取材も力が入ったものと考えている。こんな中、筆者の思いは例年になく複雑である。それは、終戦記念日に対するマスコミの報道ぶり、あるいは焦点の絞り方といった面で、果たしてこれで良いのか、もっと掘り下げないでよいのかという懸念である。若干の所信を披露したい。

那覇空港管制トラブルに思う
元統幕議長 杉山 蕃
先日、那覇空港において離発着する航空機の管制上のトラブルが発生した。目前の滑走路をまたぐ格好で離陸していく自衛隊ヘリを視認した離陸操作中の民間機が、滑走路上で停止。続いて着陸してきた民間機が、離陸を中止した民間機の後ろに停止するというヒヤリ事件である。本件いろいろの問題点があり、深刻な事態も考えられることから、若干の分析と所見を披露したい。

日本孤立化狙う戦略的動向
元統幕議長 杉山 蕃
前回意見を披露した日米防衛協力の指針の再見直しについては、予定通りの運びとなり、安倍首相の訪米、首脳会談での合意、米両院議員総会での演説、その後の反応等、日米同盟の一層の充実を各国に見せつける事となった。誠に結構な成り行きと考えている。特に安倍総理の演説は極めて好評で、中国・韓国の「歴史修正主義者」とする事前工作にもかかわらず、アジアで最も信頼できる同盟国総理の位置づけを不動のものにした成果は大である。

日米防衛指針見直しに期待
元統幕議長 杉山 蕃
安倍総理訪米に際してオバマ大統領との間で合意される「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)の見直し作業実施について報道されている。先の集団的自衛権一部容認に係る閣議決定、関連法整備に係る検討の進捗(しんちょく)、中谷防衛大臣とカーター国防長官の会談など一連の事前調整の下で合意されるもので、誠に結構な成り行きと考えており、若干の所見を披露したい。

終戦70年を巡る報道に思う
元統幕議長 杉山 蕃
終戦70年の今年、先の戦争に関する多くの報道がなされている。いずれも戦争の被害が如何に大きなものであったかを生存者の証言を加え、二度と起こしてはいけないと訴える態度であり、誠に結構な事と考えている。しかし、後期高齢者になった筆者は、最近、報道している皆さんにやや頼りなさに似た感じを持つようになってきた。それは、報道する人達が、経済成長・豊穣(ほうじょう)の時代に育って、戦争とはやってはいけない悲惨なものという通常の社会心理を根拠とし、戦争の実体験がないことによるものと考えている。

ISの日本人虐殺事件に思う
元統幕議長 杉山 蕃
年初からシリア・イラク国境地帯の「イスラム国」(IS)を名乗る過激派武装集団支配地域で拘束された日本人2名人質事件で、マスコミは一斉にトップニュースの扱いをし、各様の報道がなされた。結果は2名の虐殺という悲劇で終止符を打ったが、犠牲となったお二方の冥福をお祈りするとともに、報道・政府対応・邦人の海外での安全の面で大きな教訓を残したことから、若干の所見を披露したい。

平成27年度防衛予算に思う
元統幕議長 杉山 蕃
選挙で中断していた平成27年度予算編成作業が整い、政府案がまとまった。防衛予算については「11年ぶりの高い防衛費」といったフレーズが目につく。確かに4・9兆円の予算は平成16年(4・8兆)以来の数値であり過去最高ではある。しかし、改めて11年間の低迷を考える必要がある。端的に言うと、中国の国防予算は11年前、2000億元であったが、年率10%の進捗(しんちょく)から、昨年の予算は8000億元、実に4倍の予算規模(防衛白書)となっている。

第3次安倍内閣の安保課題
元統幕議長 杉山 蕃
選挙が終わり、第3次安倍内閣が発足した。同内閣へ期待する政策について若干の所見を披露したい。第一は当然アベノミクスすなわち、経済、財政の着実な回復である。

密漁、軍事と理不尽な中国
元統幕議長 杉山 蕃
中国漁船の小笠原海域での不法な赤サンゴ密漁が問題となり、政府・海上保安庁は重い腰を上げ、取り締まり強化に動き出した旨報道されている。他方、比・越・台等と領有権について係争が続く南シナ海群島での中国の本格的基地整備も急ピッチで進んでいるようである。我が国の領土である尖閣諸島への理不尽な行動は勿論、尖閣上空への中国防衛識別圏(ADIZ)の公告が非難される。ADIZ自体は、当該国防空上の見地から設けるもので、基本的にはその国の勝手である。しかし、今回のように軍への事前通告を必要とする等の処置を義務付ける行為は国際航空協定上理不尽な公告であるし、我が国領空主権への侵害でもある。

中国利するウクライナ情勢
元統幕議長 杉山 蕃
今回は、膨張著しい中国軍事力と、ウクライナの情勢について所見を披露してみたい。まず中国海軍であるが、世界が注目する最大課題は国産空母の建設である。中国が保有する空母「遼寧」は、周知の如くウクライナから巧妙な手口で購入した旧ソ連空母「ワリャーグ」を復旧・改造したものだ。

朝日新聞社謝罪会見に思う
元統幕議長 杉山 蕃
「慰安婦問題」の根拠として、長く虚偽・捏造(ねつぞう)報道であるとの批判を受けていたにも拘わらず、朝日新聞が事実として報道していた「吉田発言」にかかる報道は虚偽捏造のものであるとして撤回し、撤回時期が遅きに失したことを謝罪する公開会見があった。本「吉田発言」は、吉田清治なる怪しげな作家が捏造した「軍令による慰安婦強制連行」を事実として取り上げ、日韓の追跡調査により事実無根であることが判明、吉田本人も95年捏造であることを認めたにも拘わらず、朝日新聞は以降19年にわたり撤回せず、国連報告、米下院決議、韓国系国民による慰安婦像建立など我が国にとって極めて不名誉な国際的風潮を醸成する発信源となり続けてきたものである。公正を旨とするマスコミ大手としてあってはならない不祥事であるが若干の所見を披露する。

英霊に誠を尽くす遺骨収集
元統幕議長 杉山 蕃
8月は戦没者の慰霊に一入(ひとしお)思いが深まる。終戦後69年、御遺族・戦友の方々の高齢化、少数化が進む中、戦没者慰霊は次世代・次々世代へと移り変わっている。そんな中で先日、天皇・皇后両陛下のパラオ方面への行幸が来年実施されるべく検討が始まった旨報道された。誠に有り難い御心である。さる慰霊行事の会合で90歳を超えた旧軍人の先輩が、「是非実現を」と万感の思いを述べておられたのが印象的だった。今回は戦没者慰霊のうち、遺骨収集について所見を披露したい。

閣議決定した集団的自衛権
元統幕議長 杉山 蕃
7月1日の安倍内閣による「集団的自衛権に関する憲法解釈の変更に関する閣議決定」が行われ、我が国の安保態勢は新しい段階に入った。憲法9条をはじめとする一連の法制体系が、国際環境の変化に対応せず、旧態依然たる一国平和主義と言われる我が国独特のものであることは事実である。そのため、国際協調の見地から、自衛隊が海外において行動する場合、所謂(いわゆる)「グレーゾーン」的状況の生起を考慮し、その都度「特別措置法」を制定、厳重な制約を設けて、特別な場合として対応してきたのもご存じの通りである。

お粗末な中国機の接近事態
元統幕議長 杉山 蕃
東シナ海におけるわが海上自衛隊、航空自衛隊機に対する中国戦闘機の接近飛行が頻発し、その映像が報道されている。空中10㍍、20㍍といった至近距離への接近に、政府・メディアはやや熱くなっている気配であるが、若干の所見を披露したい。

中国の南シナ海軍事拠点化
元統幕議長 杉山 蕃
南シナ海西沙(パラセル)群島における中国ベトナム間の領有・海底資源問題を巡る争いが活発化し、ベトナム国内での反中国デモの激しさが報道され、我が国の在越企業も影響を受けたという。若干の所見を披露してみたい。

特攻隊員の慰霊に心遣いを
元統幕議長 杉山 蕃
今年も北の郷を残し、桜の季節が過ぎて行った。絢爛と咲き誇り、未練気もなく豪華に散っていく桜を見るたび、「靖国神社の桜と成って、咲いて会おう」と健気に散って行った特攻隊の若き戦没者に万感の思いを馳せざるを得ない。筆者の年代からは「お兄さん」世代にあたり、一段と近い感覚がある。隣のお兄さんも、学徒出陣され、飛行訓練を受け、特攻隊員として出撃直前宮崎で終戦、尾羽打ち枯らして復員、「死にそびれました」と両手をついて号泣されていた姿を思い出す。

武器輸出に新基準を定めよ
元統幕議長 杉山 蕃
政府の「武器輸出三原則」改定案が自民・公明の与党プロジェクトチームで了承された。誠に結構なことであり、昭和42年佐藤内閣によって提示された政府方針が47年の長きにわたって継承され、時代の変遷とともに使用に耐えなくなり、その都度、官房長官談話による「例外措置」として処置してきた経緯から、早期に現状に見合った新基準を成立させて欲しいと考えている。関連して所信を披露したい。

尖閣領空侵犯措置に万全を
元統幕議長 杉山 蕃
先日、安倍総理は答弁のなかで、東シナ海での領海・領空主権維持に係る行動を念頭に、航空活動における時間的推移の厳しさから、不測の事態が起こりやすく、確りした対応を準備しなければならない旨発言した。誠に然りであり、領海侵犯に比し、領空侵犯対処は非常に困難な面が多い。関連して所見を披露したい。

安倍内閣の防衛政策に思う
元統幕議長 杉山 蕃
昨年12月、国家安全保障戦略、平成26年度以降に係る防衛計画の大綱(新大綱)、新中期防衛力整備計画(25中期防)が閣議決定され、安倍内閣の防衛政策体系が整備された。あとは、大綱に明記された日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定をもって、我が国防衛の基幹となる政策作業が完成する。誠に結構なことと考えている。

中国防空識別圏公告に思う
元統幕議長 杉山 蕃
11月23日付で、中国国防部は「東シナ海防空識別圏」を設定し当該空域の航空機識別規則を公告した。かなり一方的なもので、航空防衛・航空管制上問題が大きく、報道を見ると日米韓豪など各国・各機関とも非難を基調とするものが殆どである。尤(もっと)もなことだが、誤った見解も見られることから、筆者の見方を披露したい。

中露接近に備えた防衛力を
元統幕議長 杉山 蕃
「防衛計画の大綱(防衛大綱)」見直しに向け防衛力のあり方の検討作業が大詰めを迎えていると推察する。関連して日米防衛協力の指針(ガイドライン)も昨年から日米合意の下で検討が進められている。考えてみれば、現ガイドラインは16年を経ているし、防衛大綱は鳩山政権時に改定され3年を経ているが、社民党との連立のため骨抜きにされ、民主党政権とともに瓦解していると見るべきかも知れない。

2020東京五輪決定に思う
元統幕議長 杉山 蕃
9月は2020年夏季オリンピック・パラリンピック東京開催決定のニュースに沸きかえった。前回64年以来実に56年振りの開催であり、誠に結構で喜ばしい。是非、成功を期したいものである。若干の所見を披露したい。
