
昭和19年(1944年)福井県生まれ。昭和47年京都大学大学院文学研究科博士課程終了。哲学者。
『孫子』で読む中国の対米謀略戦
哲学者 小林 道憲
『孫子』というよく知られた兵法書は、今から2500年ほど前、中国春秋時代末期の将軍、孫武によってまとめられたものだといわれる。孫子は言う。戦争は国家の大事であり、国民の生死、国家存亡の分かれ道であるから、よくよく熟慮しなければならない。したがって、無駄な戦いを続けて費用をかけてはならない。
戦わずして勝つ「謀攻」

オーウェルの予言した国家
哲学者 小林 道憲
ジョージ・オーウェルが1945年に出版した小説、『動物農場』は、共産主義革命の過程とその結果を巧みに寓話(ぐうわ)化したものであった。そこでは、「動物たちは人間によって搾取されている。今こそ叛乱(はんらん)を起こして人間を追放すべきだ」という老牡(おす)豚の予言を信じ、動物農場の動物たちは、知力に優れた豚たちの指導のもとに叛乱を起こし、革命に成功する。

デジタル通貨から考える貨幣の本質
ここ10年ほどの間、ウェブのネットワーク上で電子的決済手段として流通しているデジタル通貨の発達には目覚ましいものがある。「Suica(スイカ)」や「PayPay(ペイペイ)」などの電子マネーはデジタル変換された支払い手段で、法定通貨を基準にしている。ビットコインやリブラなど仮想通貨(暗号資産)は法定通貨を基準としない通貨で、ウェブ上で容易に国境を越えて流通している。

「死」の意味を考える
哲学者 小林 道憲
18世紀末のパリの墓地整理のため姿を消したサン・イノサン墓地は、教会広場と納骨堂からなる墓地で、パリの住人たちが幾世紀にもわたって埋葬された聖地であった。誰もがここで永遠の眠りに就きたいと願っていたから、遺体を新しく埋葬する空間を作るために、以前に埋葬した死者の骨を地中から取り出して、それを回廊のアーチの上に積み重ねた。

明智光秀をどう評価するか
哲学者 小林 道憲
「時今也(ときはいま)桔梗(ききょうの)旗揚(はたあげ)」という歌舞伎演目は、江戸時代も爛熟(らんじゅく)期・文化文政期の歌舞伎作家、四世・鶴屋南北の作である。これは、それまで封建時代にあるまじき主殺しの謀反人とされていた明智光秀の本能寺の変での行動を、長年信長に虐(いじ)められていた光秀の積もりに積もった怨念からの復讐(ふくしゅう)であったという逆転解釈でできている。

記紀神話と大嘗祭
哲学者 小林 道憲
わが国の最も古い歴史書『日本書紀』や『古事記』にある天孫降臨神話は、大体次のような話になっている。
ようやく平定された葦原(あしはら)の中つ国(日本)の統治を任せるのに、高天原のタカミムスビまたはアマテラスは、生まれたての孫ニニギノミコトを降ろすことになった。ニニギノミコトは、筑紫の日向の高千穂の峯(みね)に降臨した。

「大嘗宮の儀」を考える
哲学者 小林 道憲
新緑の季節、新天皇が即位され、新元号も公布され、新しい「令和」の時代が始まった。10月には即位礼、11月には大嘗祭が行われる。このうち即位礼は、新天皇が即位を国民に知らせ、これを諸外国に知らせる儀式である。即位礼が終わると、最重要な儀式、大嘗宮の儀が行われる。

諸文明が融合した中国文明
哲学者 小林 道憲
中国文明は、四千年来の一貫した歴史を持ったオリジナルな文明だと思われているが、必ずしもそうではない。中国文明も、その長い変遷の過程で、常に外部からの影響を受けて変動してきた文明である。

今年こそ憲法改正実現を
哲学者 小林 道憲
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

9条加憲より2項削除を
哲学者 小林 道憲
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

統合と分散がせめぎ合う21世紀
哲学者 小林 道憲
21世紀の初頭に当たる今日、交通・通信機関の目覚ましい発達と、そのグローバル化とともに、ヒト、モノ、カネ、情報の巨大な流れが国境を越えて激しく流動し、世界はますます相互依存度を高めている。

執行機関持たぬ国際法の限界
哲学者 小林 道憲
国際法は、世界の平和維持や自国の安全保障にどの程度有効なのであろうか。これまでに形成されてきた一般国際法は、主権平等や内政不干渉、国家領域の統治権や外交特権、条約の拘束力や侵略戦争の禁止などの基本原理を定めてきた。

地球最後の植民地帝国・中国
哲学者 小林 道憲
20世紀ももう遠くなりつつあるが、20世紀はコミュニズムの勃興と終焉(しゅうえん)の世紀でもあった。しかし、変質してではあるが、アジアの共産主義はまだ終焉していない。特に中国の動向が注目されるが、旧ソ連の歴史と並行させて考えてみたい。

21世紀型の新しい戦争形態
哲学者 小林 道憲
今世紀は、2001年9月11日に起きたアメリカ世界貿易センターへのイスラム過激派による自爆テロ事件から始まった。その後、この国際テロ事件は世界各地で続き、昨年末も、IS(「イスラム国」)によるフランスやアメリカへのテロ事件が起きたばかりである。

英歴史家が捉えた対日戦争
哲学者 小林 道憲
イギリスの歴史家・バラクラフは、『現代史序説』(An Introduction to Contemporary History)の中で、次のように言っている。

第2次大戦終結70年に思う
哲学者 小林 道憲
今年は、第2次大戦終結70年になる。第2次大戦とは何だったのだろうか。第2次大戦は、ヨーロッパ地域とアジア地域に分けて考えるべきであろう。ヨーロッパ地域における第2次大戦は、第1次大戦につぐヨーロッパ全体の再度の自決行為であったとも言える。しかし、アジア地域における第2次大戦は、もう少し違う様相を呈している。

新聞と歴史は疑ってかかれ
哲学者 小林 道憲
「すべての歴史は現代史である」と言ったのは、イタリアの哲学者クローチェである。つまり、過去を理解するということは、現代の目を通して過去を見るということである。しかし、そのために、歴史記述は、往々にして、現在からの単純な歴史評価がなされることが多いと言わねばならない。
