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    井上 政典
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    トランプの外交方針で中東は安定へ?

     大方の予想を裏切り、米大統領選はトランプ氏が勝利した。私自身、クリントン氏の勝利で落ち着くのだろうと決めつけていたので反省しているところである。アメリカの白人中間層や無党派層の支持を多く集め、米国民全体の政治への怒りがこの結果に結びついたといえよう。結果が出てしまったことを国際社会は受け入れ、来年1月の大統領就任までに「トランプ詣で」がさかんに行われることだろう。

    強いアメリカと孤立主義は共通する

     トランプ氏はしきりに「偉大なアメリカを取り戻す」と訴えてきた。それは政策論で勝負することを避け、米国民の心を揺さぶる「政治運動」をすることで、政治経験のないトランプ氏はそれがクリントン氏に対する大きな武器になると考えた。

     その「偉大なアメリカ」とは一体何のことなのだろうか。オバマ大統領の方針により、米軍が世界の警察官を拒否して久しいが、やはり軍事的影響力を行使する、しないの違いは絶対的に大きい。アフガン撤退や在日米軍の再編、さらには中東への米軍単独での軍事介入が無くなったことは、国際社会における影響力の低下を招く結果となった。しかしそれらは米国民の大多数が望んでいたことであり、過度な軍事介入で国民が疲弊した事実をよく理解していたとも言えよう。

     トランプ氏は「偉大なアメリカ」をどう実現していくつもりなのか。それは米国民のナショナリズムの高まりを背景にした孤立主義を貫くことで、米国民に偉大な国という考えを植えつける戦略なのではないか。一見強いアメリカとは軍事力を背景にした帝国主義をイメージするが、トランプ氏は日韓の米軍基地の経費負担ふたんを両国に求めているし、中東政策への言及は一切ない。政治運動で得た国民の支持と熱狂を背景に、トランプ氏がどのような外交政策を実施していくか注目したい。

    中東は安定へ?

     国際社会を揺るがすニュースの中で、常に話題になっているのが中東情勢である。中東情勢をチェックしていれば国際社会の動向がわかると言われる通り、とても重要なトピックスではあるが、トランプ氏が大統領に就任すれば中東は一体どんなふうになるのだろうか。

     先にも述べたように、トランプ氏は中東への関与や政策を発表していない。先行き不透明な状態である。日本でも大きく株価を下げたように、アメリカの政策が全く見えないことへの不安からやってくる「トランプ・ショック」は中東にも影響しており、株価が下落したり、なぜかドバイの原油までもが下落している。

     中東情勢が常に混乱している原因は、欧米各国による介入が大きな原因として挙げられる。私は以前にもビューポイントで主張したが、元々欧米文化が根付いていない地域に無理やり西側諸国の考えや思想を植えつけようとしてもそれは無理な話なのである。中東各国に住む住民は民族や部族で団結しており大きな政府による介入は求めていないのだ。

     世俗主義が合わない地域ももちろん存在するし、ジハード理論や過激思想を用いることなくイスラム教スンニはの厳しい規律を守って生きていく人々が多く存在する。そこに欧米各国が日常的に介入することは絶対に間違いであるし、それは地元の部族や住民に対して非礼なことなのだ。

     独裁政権による弾圧や人権を無視した行動は絶対に許されるものではなく、その部分に対しては国連を中心に介入すべき事案だが、肝心の国連も機能不全であり、西側諸国の過度な介入が混乱に拍車を掛けることに繋がっているのだ。

     トランプ氏は中東への関与について語っていないが、恐らく過度な介入は控えると考えられる。そうなったとき中東に影響力を持つのはイランとロシアになるだろう。しかし元々両者は中東、中央アジアのプレーヤーであり、ロシアに関してはシリア介入移行、ユーラシア主義を進めており、地域の安定にはそのシナリオのほうが混乱は収まるだろう。

     つまり欧米文化の強制を強いられてきた中東各国はその呪縛から解き放たれるかもしれない。欧米の介入が減るということはISやアルカイダなどの過激派組織の存在意義が消滅することになる。さらに中東の住民は、それぞれの文化、宗教観、伝統を失わずに済むことになるかもしれない。

     未知数で先の見えないトランプ氏の外交手腕だが、「中東への関与縮小」を掲げることに私は期待したい。現在の中東に関しては手法は別として、残念ながらロシアのほうが圧倒的に貢献している。アメリカが孤立主義を掲げるのであればそれはそれで大歓迎である。日本にとても独立した外交方針を掲げることができ、「アメリカの犬」と揶揄された過去の屈辱から脱却できる。これは日本にとっても変わるための大きなチャンスなのである。

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