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    元全国紙経済記者
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    イラン核物理学者が処刑された

     独週刊誌シュピーゲル電子版7日はイランの核物理学者(39)が今月3日、処刑されたというニュースを報じた。絞首刑にされた学者はシャラム・アミリ教授だ。同教授の名前に覚えがあった。当方は「『イラン核物理学者連続殺人事件』の謎」2011年9月15日参考)というコラムの中で、同教授がメッカ訪問中に行方不明となったと報じたことがあるからだ。その教授が米国のスパイ容疑で処刑されたのだ。

     イラン国営通信IRNAは7日、同国法務省報道官のコメントとして、「シャラム・アミリは米国とつながり、わが国の貴重な情報を敵国に渡した」とし、処刑の理由を説明している。同教授の母親によると、教授は3日に処刑され、6日、教授の遺体が引き渡されたという。

     同教授がメッカの巡礼地先で行方不明となったと報じられ、イスラエルのモサドの拉致説が一時有力視されていた。その後、教授は2009年夏、米国に逃亡したと報じられたが、2010年7月、テヘランに帰国した。帰国当初は英雄のように迎えられたが、その後、拘束され、「米国のスパイ」として裁判を受け、10年の有罪判決を受けたところまでは知られていた。本人の説明によると、「09年の夏、メッカの巡礼先でサウジアラビアのCIAに拉致され、自身の意思に反して米国に連れていかれ、イランの核計画の情報について尋問を受け、拷問を受けた」という。それに対し、ワシントンは教授の拉致説を否定した。教授はテヘランのMalek-Aschtar-Universitat に勤務、機密の研究に従事していた。米紙ワシントン・ポストは、教授は約500万ドルで情報をCIAに売ったと報じた。もちろん、教授は米紙の報道を否定していた。

     イランは2011年9月、国際原子力機関(IAEA)の第55回年次総会の開催中、テロで殺害された同国の核専門家の未亡人を招き、その核テロの実態を報告するイベントを開いた。「最近、わが国の核科学者を狙った先例のない醜いテロ事件が多発している」と告発した。

     例えば、シャハリアリ博士はシャヒード・ベンシュティー大学工学部で核物理学の教鞭を取り、イラン原子力庁のプロジェクトにも関っていた。同博士は2010年11月29日、テヘラン北部の爆弾テロ事件で殺された。それに先立ち、同年1月12日には、テヘラン大学の核物理学者マスード・アリモハンマディ教授がオートバイに仕掛けられた高性能爆弾で殺害された。そして11年7月23日には、テヘランの自宅前で同国の物理学者ダリウシュ・レザイネジャド氏が何者かに暗殺されている。

     ところで、「イラン核物理学者連続殺人事件」について、当時、2通りの全く異なる見方があった。一つは、イランの核開発計画を懸念するイスラエルがモサドを送って暗殺したという「イスラエルの犯罪」説。もう一つは、殺害された核物理学者は反体制派活動に近かったこともあって、イラン当局がテロに見せかけて粛清した「イラン当局の犯罪」説だ。

     国連安保常任理事国(米英仏露中)にドイツを加えた6カ国とイランとの間で続けられてきたイラン核協議は昨年7月14日、最終文書の「包括的共同行動計画」で合意し、2002年以来13年間に及ぶ核協議はイランの核計画の全容解明に向けて大きく前進した。その外交世界の裏で様々な情報工作、スパイ活動が展開されてきたわけだ。シャラム・アミリ教授の処刑はテヘランの米国への警告と受け取って間違いないだろう。

    (ウィーン在住)

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