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    宇佐美 典也
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    北核問題を外交で解決できるか

     ドイツのメルケル首相は10日付けのドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ(日曜版)とのインタビューで、「ドイツは願われれば、北朝鮮の核問題交渉の調停役に加わる用意がある」と述べた。

    アントニオ猪木

    訪朝したアントニオ猪木参議院議員(2017年9月7日 アントニオ猪木氏のツイッターから)

     メルケル首相は、国連安保常任理事国5カ国にドイツが加わり、イランの核交渉に参加し、イラン側との妥協案が成立した実績を挙げて、「北の核問題は外交で解決されなければならない。イランとの核交渉のような外交が北の核問題にも適応できると信じる」と述べている。同首相は米主導の軍事解決には明確な距離を置いている。

     メルケル首相の北核問題への調停役申し出には、今月24日に実施されるドイツ連邦議会選挙(下院)を意識し、有権者に積極的な外交姿勢をアピールしたい狙いがあることは間違いないだろう。ただし、それだけではない。北が開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程距離が欧州まで及ぶことが明らかになった現在、北の核・ミサイル問題は欧州の安全保障問題でもある。そこで「欧州の盟主」メルケル首相は北問題に積極的に関与する政策に軌道修正してきたのだろう。

     メルケル首相だけではない。北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長は英BBCとのインタビューで、「北朝鮮の蛮行は国際社会の脅威となっている。国際社会は連帯、結束して対応しなければならな」と警告。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「世界は最も厳しい危機に直面している。北朝鮮の核・ミサイル開発を止めさせなければならない」と主張している、といった具合だ。

     一方、民間レベルでは、元プロレスラーで参議院議員のアントニオア猪木氏(74)が訪朝した。9日の北朝鮮の「建国記念日」に招待されたもので、同氏にとって32回目の訪朝だった。北の朝鮮中央通信(KCNA)によると、前外相の李洙墉(リ・スヨン)朝鮮労働党副委員長が8日、猪木氏と面会したという。11日に帰国した同議員によると、李副委員長は、「核・ミサイルの開発は続けていく。われわれは最後の目標まで頑張る」と述べたという。

     スポーツ界出身のスターの訪朝といえば、米プロバスケットボール(NBA)のデニス・ロッドマン氏の名前を直ぐに思い出す。ロッドマン氏はトランプ米大統領とも交流がある。スポーツは政治や経済界とは違い、大衆受けする世界であり、スターの知名度は国境を越えている。北朝鮮との人的交流を活発化させるという意味からもスポーツ外交は一定の効果が期待できる。

     ここにきて、宗教指導者による調停外交も動き出している。朝鮮半島の危機に対して、韓国の文在寅大統領はフランシスコ法王に調停役を要請。それを受け、バチカン法王庁は韓国と北朝鮮間の仲介に動きだした。フラシスコ法王は早速、南北間の仲介役に南米エルサルバドル出身のグレゴリオ・ローサ・チャベス枢機卿を任命している。

     世界最大キリスト教宗派、ローマ・カトリック教会の総本山バチカンの外交は、米・キューバ間の外交雪解けに貢献したばかりだ。独裁国家の北朝鮮に対し、バチカンがどのような役割を演じられるかは不明だが、北の首都・平壌は昔、“東洋のエルサレム”と呼ばれた時期があったことを思いだすと、宗教指導者の関与も無視できない。

     朝鮮半島の危機に対峙し、世界の外交が動き出してきた。米朝間で非公式な外交交渉が続いていると聞く。ただし、北との外交・対話には限界がある。北は核・ミサイル開発を放棄する考えがないからだ。とすれば、外交の舞台裏で何を話し合い、何を解決できるのだろうか。考えられるシナリオは、核開発・実験の一時停止(核実験モラトリウム)か、それとも北の「核保有国」入りを間接的に容認する道か。いずれにしても、北は核・ミサイル開発を続行するだろう。時間は北側に有利に働く。外交・対話はその時間を北に提供することにもなる(「金正恩氏とのディ―ルは実りなし」2017年5月15日参考)。

     多くの犠牲者が出る軍事介入以外、北の核・ミサイル開発を停止させる道はあるだろうか。不可能と思える課題を可能とする外交が果たして存在するだろうか。グテーレス国連事務総長が呟いたように、国際社会は今、最も厳しい挑戦に直面しているわけだ。

    (ウィーン在住)

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