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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    欧州紙が懸念する「朝鮮半島の危機」

     オーストリア代表紙「プレッセ」15日付の1面トップを見た時、驚いた。お馴染みの顔が大きく写っていたからだ。北朝鮮の最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長だ。

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    朝鮮半島の危機を一面トップで報じるオーストリア代表紙プレッセ

     日韓メディアは一触即発の朝鮮半島情勢を連日大きく報じているが、当方が住むアルプスの小国オーストリアの代表紙で金正恩氏の写真が1面デカデカと掲載されて報じられたことはこれまでなかったことだ。

     金正恩氏の義兄・金正男氏暗殺事件(2017年2月13日)の時、プレッセ紙も金王朝の家系図を紹介しながら、かなり詳細に報じたが、15日付のプレッセ紙は1面トップだ。それも金正恩氏の大きな写真付きだ。

     オーストリアは衰退してきたとはいえカトリック教国であり、15日はキリスト教最大のイベント「復活祭」の前日だ。その国の代表紙がローマ法王フランシスコの言動を1面トップで報じるならば分かるが、朝鮮半島の政情を金正恩氏の写真付で緊急レポートしているのだ。欧州でも朝鮮半島の政情に大きな不安を感じだしていることが推測される。

     そこで15日付「プレッセ紙」の1面トップ記事の概要を簡単に紹介する。
     記事の見出しは「金正恩氏包囲網」(Drohkulisse gegen Kim)だ。海岸沿い軍事施設を視察中の金正恩氏の写真が大きく掲載されている。

     4月15日は北では「太陽節」と呼ばれ、金正恩委員長の祖父、故金日成主席の105回目の誕生日に当たる。その日を祝って、金正恩氏が核実験を計画するのではないかというのだ。中国の王毅外相は朝鮮半島の政情に危機感を高め、「状況がコントロールを失う前に、挑発と威嚇を即中止すべきだ」と要求している。もちろん、北と米国へのアピールだ。

     プレッセ紙は「極東の政情は急速に緊迫感を高めてきた。北朝鮮ウォッチャーは、1994年に死去した金日成主席生誕105年を迎えた北が核実験を実施すると予想し、朝鮮半島の状況は一挙に深刻な状況に陥ると予想している」という。その背景は、トランプ米政権が北への圧力を強化してきたからだと説明している。

     具体的には、米放送NBCが情報機関筋として、「トランプ政権は防御的先制攻撃を計画している。80機の戦闘機を運ぶ米原子力空母カール・ビンソンが朝鮮半島近海にまもなく到着する一方、トマホーク巡航ミサイルを発射できる駆逐艦2隻のうち1隻は現在、朝鮮半島から約480キロ離れたところで待機中」という。

     一方、北側は「如何なる攻撃にも応じる。核兵器には核兵器で対応する」と強調し、核戦争も辞さない姿勢を見せている。プレッセ紙は「約1000万人が住む韓国の首都ソウルから軍事境界線まで40キロに過ぎない。北軍は境界線沿いに多数の大砲や中距離ミサイルを配置している、北は核兵器を使用せずとも通常兵器で十分、韓国側を攻撃できる」と分析する軍事専門家の意見を報じている。

     同紙は「トランプ政権はシリアでの空爆とは違い、朝鮮半島の場合、軍事攻撃が大きな危険を伴うことを知っているはずだ。興味深い点は、トランプ大統領が7日、地中海の米海軍駆逐艦からシリア中部のアサド軍のシャイラト空軍基地へ巡航ミサイル、トマホークを撃ち込む指令を出したのは中国の習近平国家主席の米国訪問中だったこと、そして米軍が今月13日、アフガニスタン東部のナンガルハル州のイスラム過激派テロ組織『イスラム国』(IS)の拠点に非核兵器では最高火力を持つ『MOAB』(GBU-43)を初めて投下している。両者の米軍の軍事活動は単なる偶然ではなく、北朝鮮への警告を含んだ軍事行動だったはずだ」と受け取っている。

     いずれにしても、欧州紙は朝鮮半島の政情の行方次第では世界的な紛争が勃発しかねないと読者に伝えているわけだ。

    (ウィーン在住)

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