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    宇佐美 典也
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    「謝罪」されても許さない人々

     韓国紙中央日報(日本語電子版3月8日付)は従軍慰安婦をテーマとした2本の映画を紹介していた。1本は今月1日から既に上映中で、もう1本は今月16日から上映される。タイトルは「雪道」(イ・ナジョン監督)とカナダ出身のティファニー・シュン監督の「謝罪」(The Apology)だ。いずれも重いテーマを扱っているが、中央日報は「日本からの謝罪を受ける時まで忘れないために……」という見出しで、2本の映画を紹介していた。

     当方は中央日報の記事の見出しに考えさせられた。慰安婦のコメントから取ったものだろうが、「日本からの謝罪を受ける時まで忘れないために……」という個所だ。政治的には2015年12月28日、日韓両国外相が慰安婦問題の解決を実現させた。ソウル外務省で「日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した」(岸田文雄外相)と表明されたばかりだ。

     日本側は合意内容に基づいて10億円を韓国側に既に振り込み済みだが、慰安婦をシンボルとした少女像は依然、ソウルの日本大使館前にある一方、釜山でも新たに建立された。そしてドイツ南部バイエルン州のヴィーゼントで今年3月8日、欧州初の慰安婦像の除幕式が行われている。すなわち、韓国側の現状は日韓合意内容の完全履行からは程遠いわけだ(「韓国政府の統治能力が問われる」2017年1月5日参考)。中央日報記者は日韓合意内容を熟知しながら、上記のような慰安婦のコメントを見出しに報じたわけだ。

     ところで、被害者と「謝罪」について、3通りの解釈が考えられる。①謝罪があれば、許す、②謝罪がなくても許す、③謝罪があっても許さない。中央日報の見出しは、①のような立場を装いながら、③の立場であることを強く示唆している。

     上記の解釈が間違いないとすれば、日本側の謝罪表明は余り意味がないことになる。なぜならば、彼らは謝罪されたとしても、絶対に許さないからだ。そして慰安婦を支援する韓国支援団体や一部左翼政治家はそのことを知っているから、慰安婦問題を政治利用するわけだ。

     毎年、ノーベル文学賞候補者に上げられる村上春樹氏は「『相手が分かった。もう許す』というまでは日本側は謝罪しなければならない」と共同通信社とのインタビューに答えている(「日本は韓国の『誰』に謝罪すべきか」2015年4月26日参考)。

     ということは、慰安婦の生存者の数は100人を割ったが、生存されている慰安婦全てが「許す」というまで、日本は謝罪し続けなければならないことになる。この場合、政治的な日韓合意は余り助けとならない。厳密にいえば、政治的・外交的解決ではなく、「謝罪されても、許すことができない」生存者と個々の和解交渉を進める方が賢明ということになる。問題は、謝罪されても許さない人々とどのような和解、共存が可能かだ。

     その前に、上記の②の例を考えてみたい。相手から謝罪されなくても、相手の蛮行を許す人々だ。ひょっとしたら、その数は少ないかもしれない。そのような人々は自身が過去、受けた痛み、屈辱を止揚し、許すことができないが、許す以外にその悪夢から解放されないということを理解した人々ではないか。

     ③の立場の人々に②になってほしいと願うことはできないが、②のような世界に入らない限り、③の立場の被害者も自分を過去から救い出すことができないはずだ。

     朴槿恵前大統領が罷免されたことを受け、60日以内に韓国で次期大統領選が実施される。新大統領が誕生すれば、日韓合意について見直しが行われる可能性が高い、と予想されている。

     日韓両政府が合意した内容を一方の国の事情から見直しされることは好ましくないし、韓国の国家の品格が疑われることにもなるが、日本側は現実的観点から日韓合意の見直しを覚悟しておかなければならないだろう。その際、「謝罪されても、許さない人々」と対峙していることをくれぐれも忘れることなく、冷静に事の対応に臨むべきだろう。

     一方、韓国側は、慰安婦問題を旗印に国際社会で外交を展開することだけは避けるべきだ。現職大統領の罷免で国家の品格は既に傷ついているのだ。慰安婦問題で謝罪外交を再び展開すれば、国際社会での韓国の品格は完全に地に落ちてしまうだろう。

    (ウィーン在住)

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