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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    藤本健二氏の「平壌の友人」について

     独週刊誌シュピーゲル最新号(8月6日号)は13年余りの間、故金正日労働党総書記の「専属料理人」だった藤本健二氏の最近の平壌訪問をなどについて同氏と会見し、その印象をまとめている。

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    藤本健二氏の「平壌の友人」について掲載する独週刊誌「シュピーゲル」

     「平壌に到着してホテルで待機していると、高級ベンツ車が近づいてくる。その車窓が開くと運転しているのはなんと金正恩労働党委員長だった」という3カ月前の訪朝エピソードから始まるシュピーゲル誌の記事の見出しは「平壌の友達」だ。ちなみに、藤本氏は6月末にも北の奥さんと娘に会うために訪朝している。息子さんは既に亡くなっている。

     藤本氏とは過去2度、会ったことがあるというシュピーゲル誌の Wieland Wagner 東京特派員は藤本氏の訪朝談を紹介しながら、北の現状を書いている。同特派員は、「藤本氏ほど北の独裁者を個人的に知っている外国人はいない」と強調し、その情報を高く評価している。

     32歳の独裁者は69歳の遊び友達、藤本氏に、「日本では自分のことをどのように見ているか」と聞く。すると同氏は躊躇することなく、「言葉で表現できないほど最悪の印象を持っています」と答える。藤本氏以外の人がそのように応答すれば、その場で粛清されるかもしれないが、藤本氏の論評に対し、正恩氏は「分かっている」と頷いたという。イエス・マンに取り巻かれている正恩氏にとって、本当のことを言ってくれる人間は幼い時に一緒に遊んでくれた藤本氏以外にいないのだろう。

     4年前の藤本氏歓迎夕食会には、金正恩氏の叔父の張成沢(元国防委員会副委員長)が同席していたが、その叔父は正恩氏の逆鱗に触れ、処刑された。粛清や処刑に慣れている北朝鮮指導部も金正恩氏の叔父殺害には心底から震え上がったという。そして今回、張成沢が占めていた席には金正恩党委員長の側近、崔竜海党副委員長が占めていたという。

     金正恩氏は今年5月6日、36年ぶりに開催された第7回北朝鮮労働党大会で新設された党最高位の党委員長に就任する一方、開幕の演説で「核開発」と「国民生活の向上」を主要課題とした「並進政策」を掲げ、2016年から2020年の「国家経済発展5カ年戦略」を発表したばかりだ。

     一方、北の現状は「北の国民は国の支援をもはや誰も期待していない」という。藤本氏によると、金正恩氏は開発計画を放棄する考えはない。その通りだろう。正恩氏は「国連の制裁にもかかわらず、国の近代化が進められている」と自慢していたという。

     制裁下で北はどうして近代化に乗り出すことができるのかについて、藤本氏は、「北はもはや共産主義国ではない。平壌では米ドルが国民が最も信頼する通貨だ」と指摘し、北では予想以上に資本主義経済の風が吹いているという。

     藤本氏は「(正恩氏との)友人関係が保証されるならば、北でまた生活することも考えられる」と述べ、寿司職人として平壌で昔のように働けることを夢見ているというのだ。

     ところで、金正恩氏は政権就任以来、100人前後の党・軍幹部を処刑してきた。当方はこのコラム欄で「処刑された人はその後どこに?」(2016年2月22日参考)というタイトルのコラムを書き、金正恩氏が処刑した人々の亡霊、恐怖感などに悩まされているのではないかと指摘し、金正恩氏の体重130キロ説に対する当方なりの解釈を披露した。

     それに対し、藤本氏は全く反対の意見のようだ。「正恩氏がストレスと恐怖心から逃れるため暴飲暴食に走り、その結果肥満体となったという情報は馬鹿げている。それが事実ならば、正恩氏は本来、痩せていなければならない」と反論している。

     蛇足だが、藤本氏の説明は一理はあるが、ストレスと恐怖心がある一定限度を超えると、暴飲暴食に走る人は少なくない。金正恩氏がストレスや恐怖心に悩まされていないとすれば、藤本氏は「平壌の友人」がどうして体重130キロまで太ってしまったのかを説明しなければならないだろう。

    (ウィーン在住)

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