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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    党大会の会場内で何があったのか

     36年ぶりに開催された第7回朝鮮労働党大会には100人を超えるジャーナリストが取材のため平壌入りした。そのジャーナリストたちは党大会開催の会場内には入れず、最終日のわずかな時間しか内部取材できなかったという。少々手遅れなテーマだが、党大会会場取材拒否から推測される金正恩党委員長の不安な日々を紹介したい。

     取材許可を与えながら、取材を認めないということは不自然なことだが、このニュースを聞いたとき、党大会は予定の会場ではなく、別の場所で開催されているのではないか、といった声すら聞かれたという。

     党代表たちが会場に入る姿が画面に映っていたので彼らが会場にいるのは確かだが、肝心の金委員長はひょっとしたら会場内にはおらず、党代表たちは舞台に設置された大スクリーンに映る金正恩委員長を迎えて、その演説に傾聴していたのではないか、という思いが沸いてきた。

     なぜ、そんな煩わしいことをする必要があるのか、と考える人がいるかもしれない。答えは簡単だ。それが北朝鮮の現状だからだ。代表を含む5000人余りの党関係者と金正恩党委員長が党大会の会場に結集して協議しているとする。換言すれば、北の指導者が全員一カ所に集まることになる。

     米軍事衛星が党大会会場を映し出す。そして米潜水艦から巡航ミサイル(トマホーク)を党大会会場に照準を合わす。トマホークは北の中短距離弾道ミサイルとは異なり、正確に党大会会場を爆発するだろう。金委員長を含む北の全指導体制がその瞬間消滅し、北の独裁政権は終焉を迎える。

     金委員長は自身の安全を最も懸念している。だから、党代表は会場に入り、本人は秘密の場所からビデオで顔を出し、演説するという危機管理をしていたとしても不思議ではない。ジャーナリストに会場入りを認めたならば、そのトリックがばれてしまう。
     もちろん、海外から招いたジャーナリストたちを会場に入れ、取材させれば、米軍はジャーナリストが犠牲となる危険な空爆はできない。ジャーナリストを自身の安全のための人質に使える。

     しかし、金委員長は招いたジャーナリストに対しても不安を払しょくできないのだ。彼らのなかに米国側の特殊部隊員がまぎれこんでいるかもしれないからだ。あれこれ考えた末、ジャーナリストを外に待機させることにした、という推測が成り立つわけだ。

     もう一つ、付け加えなければならない。党関係者の中に暗殺者が混じりこんでいないという保証はない。会場に武器の持ち込みは禁止されているが、極小サイズの小型銃だって考えられる。父親の故金正日総書記も数回、暗殺の危機に直面したことがあったことを、息子の正恩委員長が知らないはずがない。

     朝鮮国営中央放送は後日、金委員長が潜伏している場所と党大会開催場所をあたかも同じ場所のように映し出すだろう。そのようなトリックは日頃から訓練されているので簡単な作業だ。

     独裁者には自由はない。極言すれば、多くの国民を非情にないがしろにしてきた独裁者には衣食住を含む本当の自由がないのだ。それでも独裁者になりたい人はその不自由な生活をその代価として払わなければならない。

     今から考えれば、金委員長の実兄、金正哲氏が弟に後継者を譲ったのは賢明な選択だった。身辺の危険を感じながら不安な日々を過ごしている弟(金正恩委員長)をしり目に、正哲氏は英国のギタリスト、エリック・クラプトンの演奏に一時的とはいえ熱中できるわけだ。

    (ウィーン在住)

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