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    尾関 通允
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    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    南北は拡声器放送でディベートを

     北朝鮮が6日、4回目の核実験を実施したことを受け、韓国軍は8日、昨年8月25日の南北高官会合の合意に基づき停止した拡声器を使った北朝鮮向け宣伝放送を再開した。それに対し、北朝鮮軍も同日、拡声器による放送を始めたという。朝鮮半島の南北国境線周辺が文字通り騒々しくなってきたわけだ。

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    北の過去4回の核実験ロケーション図(CTBTOのHPから)

     北側が昨年8月に開催された南北高官会合で韓国軍の拡声器放送の停止を執拗に要求したことはまだ記憶に新しい。北側は同放送内容が北の国民へ影響を与えると危惧していたからだ。

     一方、北側が開始した拡声器放送は何を流しているのだろうか。多分、金正恩第1書記の指導力を鼓舞する一方、韓国側を米国の傀儡政権と呼び、朴大統領を個人的にも中傷誹謗しているのではないか。

     ところで、2カ国関係が険悪化すると、それぞれ倉庫に戻していた拡声器を持ち出して放送を再開し、ボリュームを最大限にして敵側に向かって発信するわけだ。拡声器放送が相手国への心理戦の有力な武器として利用されているわけだが、南北が隣接しているという地理的な条件もあるが、少々異常な光景ではないか。

     韓国聯合ニュース日本語電子版によると、北側の拡声器放送の内容は韓国側に届いていない。ボリューム不足(出力不足)がその原因という。韓国軍関係者は、「北側は韓国軍兵士を威圧するというより、韓国側の拡声器放送の内容を妨害することが狙いだ」という。妨害目的だから、妨害電波を流せばいいだけで、声量のあるアナウンサーを動員して韓国批判を展開させる必要はないわけだ。

     なぜ、当方が南北両軍の拡声器放送問題をテーマとするかと言えば。騒々しいからではない。ドイツが東西両ドイツに分断されていた時、旧東独側はミュンヘンに拠点を置くラジオ・フリー放送を妨害するために必死に妨害電波を流していたことを思い出したからだ。旧ソ連・東欧の共産政権は当時、西側の情報が国民に伝わることを阻止するために妨害電波を流していた。

     参考までに言及すれば、妨害電波は北朝鮮や旧ソ連・東欧共産党政権だけの専売特許ではない。世界に12億人以上の信者を誇るローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁も妨害電波を流すのだ。教会の内密が外部に流れることを防ぐためでない(バチリークス防止策ではない)。バチカンが妨害電波を発信するのは新ローマ法王を選出するコンクラーベが開催中に限定されている。

     例えば、べネディクト16世の退位を受けて新しいローマ法王の選出が進められていた時だ。バチカンのサンピエトロ広場に集まった市民や信者たちの携帯電話が一時、不通になるといった事態が生じた。原因は明らかだ。バチカンがシスティーナ礼拝堂で開かれている法王選出会(コンクラーベ)内の枢機卿たちの会話が盗聴されないために妨害電波を流していたからだ。

     話を南北間の拡声器放送に戻す。

     平壌は妨害電波を流せば、それこそ電力の浪費であり、周辺住民に迷惑をかけるだけだ。そこで、当方は南北両国に提案したい。北は拡声器放送から流れる韓国軍の対北批判に対し堂々と反論すればいい。一方、韓国側も朴政権批判に対し反論するべきだ。

     南北国境線上で両国政府が拡声器放送を通じて単に罵倒、中傷するのではなく、ディベート(論争)すれば、世界のメディアは必ず注目するだろうし、南北間の論争文化のレベルは飛躍的に向上するはずだ。

     根拠のない主張は国際社会の笑いものになる。だから、批判する側は論理を整理し、事実に基づき反論しなければならない。南北国境線の拡声器放送から生まれるディベート文化は近い将来、南北の再統一に貢献するだろう。

    (ウィーン在住)

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