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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    金正恩氏が核実験を決断するまで

     北朝鮮は6日、4回目の核実験を実施した。北側の発表では初の水爆実験という。欧米諸国では「水爆実験説」には否定的な声が強いが、核実験であったことはほぼ間違いないとみている(爆発が核関連物質によるか否かを決定するのは、放射性物質希ガスの検出有無だ)。

     そこで北の最高指導者・金正恩第1書記がどのようなプロセスを経て核実験の実施を決定したかを、北の報道を含め、これまで明らかになった出来事を整理しながら振り返ってみた。

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    北朝鮮の平壌で水爆実験を指示する文書に署名する金正恩第1書記。朝鮮中央テレビが放映した写真を韓国の聯合ニュースが6日配信した(AFP=時事)

    ①北朝鮮最高指導者の金正恩第1書記は1月8日、33歳の誕生日を迎える。

    ②北、1月6日、4回目の核実験を実施(水爆実験の可能性も)

     北は過去3回の核実験を咸鏡北道豊渓里(東経約129・1度、北緯約41・3度)の実験場で実施した。2006月10月9日に実施された1回目の爆発規模は1キロトン以下、マグニチュード4・1(以下、M)、2回目(09年3月25日)の爆発規模は3-4キロトン、M4・52、3回目(13年2月12日)は爆発規模6キロトンから7キロトン、M4・9だった。ウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)によると、4回目の核実験はM4・9の規模で、地震波などは13年の3回目の核実験と酷似しているという。

    ③金正恩氏、1月5日、水爆実験の実施の文書に署名
     韓国情報関係者

    ④金正恩氏、昨年12月15日、水爆実験の実施を指令
     同上

    ⑤北朝鮮音楽楽団「モランボン楽団」の北京公演が12月12日、突然キャンセルされ、楽団メンバーは帰国した。

     楽団の公演中止について様々な憶測が流れている。モランボン楽団は金正恩第1書記の要請で2012年、結成された女性楽団だ。中国公演は北京・国家大劇院で12日から14日まで開かれる予定だった

    ⑥朝鮮中央通信(KCNA)が12月10日報じたところによると、金第1書記は平壌の平川革命史跡地を視察した際、「今日私たちの祖国は自衛の核弾、水素弾(水素爆弾)の爆音をとどろかせられる核保有国だ」と語ったという。

     以上の6件の出来事(日付)から推測できるシナリオを整理する。

    A・金正恩氏は父親の故金正日総書記の遺訓「先軍政治」を継承、核開発計画を継続。水爆実験はその一つ。「核保有国」の地位を確保し、対米交渉を有利に運ぶ。北の今後の課題は核爆発装置から近代的な核兵器化とその運搬方式の開発だ。

    B.中国共産党政権の事情から北の「モランボン楽団」の公演中止が決定されたことに対し、金正恩氏が激怒、北京政府がホスト国を務める北の核問題の6か国協議をつぶす。北は今回、核実験を事前に北京政府に通告していない。過去3回は通告していた。

    C.権力を内外に誇示し、第7回労働党大会を乗り切る。

    D.金正恩氏33歳の誕生日へのプレゼント説。

     金正恩氏は4回目の核実験を実施すれば国際社会から激しい批判を受け、国連安保理の追加制裁決議の採択など、厳しい状況に対峙することを知っていたはずだ。また、最大の支援国・中国側からの批判も予想していたはずだ。にもかかわらず、4回目の核実験を実施した。金正恩氏は、中国への激しい憎しみと、米国から「核保有国」認知を勝ち取り、国内外で権力を誇示したいという野心を抑えきれなかったのかもしれない。しかし、若き独裁者・金正恩氏には無念だろうが、4回目の核実験は金王朝の崩壊を一層早めることになるのではないか。

    (ウィーン在住)

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