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    元全国紙経済記者
    高橋 克明
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    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    「ラムジーの伝説」がEUを殺した!

     ラムジー選手のゴール伝説については先回のコラムで幕を閉じる考えだったが、欧州のネット世界で「ラムジーが欧州連合(EU)を殺した」という短信が流れているのだ。ラムジー選手のゴール伝説を紹介した立場上、「その後」の予想外の展開についてやはり報告すべきだと考えた次第だ(「お願い、どうかゴールしないで!」2016年6月13日、「『ラムジー伝説』と鳩山氏の急死」2016年6月24日参考)。

     サッカー欧州選手権(ユーロ2016)に初参加したウェールズは20日、対ロシアで3-0で勝利し、ベスト16入りを決めたが、ウェールズのMFアーロン・ラムジー選手(25)がその試合で不幸にも先制ゴールをしたのだ。なぜ悲しいかと言えば、同選手は若い時からその才能を高く評価されて、英プレミアリーグのアーセナルFCとして活躍しているが、同選手がゴールすれば、その翌日、著名な人物が必ず死亡するという伝説があるからだ。

     しかし、幸い、今回はラムジー選手のゴール後、大物の訃報は流れなかった。ほっとしていると、英国民が23日、EU離脱か残留かを問う国民投票を実施し、大方の予想を裏切って離脱派が勝利したのだ。メルケル独首相は、「英国のEU離脱は即、EUの統合プロセスの転回を意味する」と述べている。「EUの死」と報じるメディアすらあるほどだ。

     「ラムジーの伝説」を良く知る友人は、「ラムジーのゴールは翌日、著名人の訃報をもたらしたが、ここにきてその影響力を拡大してきた。ゴールから訃報まで数日後の時間がかかったが、それだけその影響圏は拡大してきたのだ。もはや一個人レベルではなく、EUの死という機関レベルの訃報をもたらしたのだ」というのだ。

     ドイツに次いでEUの経済大国・英国の離脱はEUの国際地位を弱め、国際投資にも影響が出てくるのは必至だ。あれも、これも全てはラムジーのゴールの結果だという話なのだ。

     EUからの離脱を決定したが、残留を希望するロンドンっ子、都市住民、若い国民から国民投票の再実施を要求する嘆願書が集まっている。国民投票の再実施の可能性は不明だが、EU離脱が決定した国民は離脱の重みを感じ出したのかもしれない。一方、EU側はドイツ、フランス、イタリアを中心にEU離脱のドミノ現象を回避するために英国側に迅速な離脱を促す一方、27カ国のEU統合を改めて強固にするために腐心し出した。英国側が迅速な離脱に躊躇しだしているだけに、ブリュッセルと英国間の離脱交渉の行方は少し不透明となってきた。

     いずれにしても、不都合な結果が出てくると、その責任者探しが始まるのが常だ。そこで「ラムジーの伝説」が出てきたのだ。同伝説をネット世界に流したのは、国民投票の実施にこだわったキャメロン首相周辺の人物かもしれない。全ては「ラムジーの伝説」の結果だ。その影響圏からダウニング街10番地も逃れることはできなかった、と弁明するだけで説明責任を果たせるからだ。

     「ラムジーのゴール伝説」だけではなく、伝説は、不幸な結果を乗り越えていくために考え出した人間の知恵かもしれない。国民投票の結果で英国国民は悩み、後悔する必要はない。英国民は「ラムジーの伝説」に感謝すべきだ。

    (ウィーン在住)

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