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    元全国紙経済記者
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    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    若者よ、探査機「フィラエ」を見ろ!

     以下の時事通信13日付の記事を読んで感動し、思わず目頭が熱くなってきた。先ず記事を読んで頂きたい。当方の老化現象による涙腺の損傷でないことを理解して頂けるだろう。記事の見出しは「探査機『永遠の冬眠に』」だ。

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    彗星上の小型探査機「フィラエ」(想像図)ウィキぺディアから

     「2014年11月、彗星への着陸に初めて成功した小型探査機フィラエについて、欧州宇宙機関(ESA)は13日までに、通信回復に向けた信号送信を断念したと発表した。彗星の上空では親機ロゼッタが観測を続けており、親機を経由した最後の通信は昨年7月9日だった。今後は『永遠の冬眠』に入る可能性が高いという。

     フィラエはロゼッタから分離され、『チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星』に着陸した際、機体を地面に固定する装置が作動せず、バウンドして崖の陰に入った。バッテリーで2日半観測したが、太陽電池による充電が不十分で休眠した。
     彗星が太陽に接近したため目覚め、昨年6月13日に通信が復活したが、新たな観測データは送信できなかった。機体の損傷や転倒も考えられる」

     フィラエは2年前、、「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」に着陸した際、ソフトランディングできずバウンドして崖に堕ちた。人間ならば大負傷だ。太陽電池が切れて通信ができなくなった。しかし、フィラエは負けなかった。「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」が太陽に接近すると、フィラエは太陽電池の充電に成功した。そしてフィラエは昨年6月、通信を再開したという。

     「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」で着陸した。それも大負傷を負い、肝心のエネルギーも途絶えたフィラエの姿を脳裡で描いてみてほしい。当方は昨年、このコラム欄でマット・デイモン主演のSF映画「火星の人」(The Martian)を紹介した(「なぜ人は天を仰ぐのか」2015年10月10日参考)。火星に一人取り残された宇宙飛行士の話だ。

     フィラエの場合、飛行士の話ではなく、探査機だ。しかし、感動は変わらない。故障したが、自力で太陽光で充電し、送信を再開したのだ。探査機にとって、通信は聖なる使命だ。あらゆる困難を乗り越えて、その使命を貫徹するため全力を投入する姿は人間、探査機の違いを超え、感動を呼ぶ。たとえフィラエが新たな観測データを送信できなかったとしてもだ。

     当方は、英国の冒険家、作家のベア・グリルス氏(Bear Grylls)のドキュメンタリー番組「MAN vs WILD」(日本では「サバイバルゲーム」で放映)が大好きだ。元イギリス軍特殊部隊SASのグリルス氏は困窮下で生存する術を具体的に実演する。一人で砂漠に降ろされ、そこから脱出したり、人里離れた山奥で食糧を探し、山や川で魚や虫を取りながら生き延びる。その生き様は21世紀の現代人が忘れかけているものだ。

     人は生存するための潜在的な能力を保有している。日本でも受験に失敗し、絶望状況にある若者もいるだろう。当方は日本の現状をもはや良く知らないから、具体的なアドバイスはできないが、欧州宇宙機関のフィラエの姿を忘れないでほしいのだ。

     人生を全力で走りきることは感動的だ。その道は決して平坦ではなく、逆風も吹き荒れる。「人生は平坦ではないほうがいい」と言った宗教家がいた。ドラマのない人生ほどつまらないものはないからだ。失敗も成功も懸命に生きる者にとってドラマの材料に過ぎないからだ。

    重力波の観測成功で世界は湧いている。ブラックホールの謎の解明にも前進が期待される。いよいよ、138億年前に誕生した宇宙がその謎を明らかにするかもしれないのだ。宇宙が解明されれば、“小宇宙”と呼ばれる人体の誕生の謎も同時に解けていくのではないか。フィラエは小型探査機に過ぎないが、宇宙の謎に挑戦した勇士だ。その健闘に拍手を送りたい。

    若者よ、あのフィラエの姿を忘れないでほしい!

    (ウィーン在住)

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