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    米コラムニスト
    岩城 喜之
    岩城 喜之
    ワシントン支局

    南シナ海問題、中国が狙う「戦略三角形」 元自衛艦隊司令官・香田洋二氏

    香田洋二元自衛艦隊司令官に聞く

    不安定な米政権移行期に強行か

     ハーグの仲裁裁判所が中国の主張を否定する判決を下した南シナ海問題は、今後どう進展し、日米はこれにどう対応すべきなのか。このたび訪米した香田洋二元自衛艦隊司令官に聞いた。(聞き手=ワシントン・早川俊行)

    判決に対する中国の反応をどう見る。

    香田洋二

     香田 洋二氏(こうだ・ようじ) 防衛大卒。1972年海上自衛隊に入り、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年退官。09年から11年まで米ハーバード大アジアセンター上席研究員。徳島県出身。

     中国は判決を認めない、拘束力もない、一方的に提訴したフィリピンが悪いなどと非常に強がっている。だが、強硬な主張をせざるを得ないほど追い詰められている。判決の政治的インパクトは極めて大きい。世界の目を少しでもそらすために、東シナ海での領海侵入など何かを仕掛けてくる可能性はある。

    南シナ海問題の次の焦点は。

     (フィリピン西方の)スカボロー礁だ。中国がここに人工島を造成し、軍事拠点を構築すれば、西沙諸島のウッディー島と南沙諸島の人工島を合わせ、南シナ海に「戦略三角形」が完成する。

     中国は「九段線」(南シナ海をほぼ囲むように設定する独自の境界線)を主張しているが、実効力が伴わなければ意味がない。南シナ海における中国の軍事拠点は現在、海南島、ウッディー島、南沙諸島という「線」だが、戦略三角形の完成によってこれが「面」となる。九段線という広大な海域を管理するには、その内側に強固な軍事的な「面」を築くことが重要になる。

     従って、中国は何としてもスカボロー礁を軍事拠点化したい。問題はこれを強引にやるかどうかだ。強引にやるとすれば、米政権交代後の半年間だろう。政権移行期は非常に不安定な時期だからだ。中国は虎視眈々(たんたん)と狙っている。タイミングを見計らっており、ひょっとしたら2、3年待ってもいいと思っている。

    人工島の軍事化は米軍にどのような影響を及ぼすか。

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     これまで中国軍機と米軍機のニアミスはウッディー島以北でしか起きていない。同島以南には中国の軍事拠点がなかったからだ。このため米軍は南シナ海でかなり自由に行動できた。

     だが、中国が南沙諸島の人工島に艦艇や航空機を常駐させれば、南シナ海で活動する米軍に中国軍がぴったりつくことが常態化する。衝突の危険が高まるとともに、米軍は常に中国の監視下で活動しなければならなくなる。

     ――オバマ政権の対応をどう見る。

     問題の原点は、中国が2013年に埋め立てを始めた時に黙認してしまったことだ。これは明らかにオバマ政権の失政だ。工事がかなり進んでから行動を取り始めたが、遅過ぎた。

     これは中国への過剰配慮からだ。オバマ政権は、誠意を持って西側の価値観を説明すれば、中国も変わるというアプローチにこだわったが、結果はそうならなかった。また、国内経済優先で中国との経済関係を重視したため、安全保障分野が後手に回った。取り返しのつかない失敗を犯した。

     スカボロー礁については絶対に手を出すなと強い姿勢を示している。フィリピンに配備した米軍のA10対地攻撃機はソ連の戦車部隊を撃滅することを想定した航空機だ。測量艦などハチの巣になる。今回は本気だと明らかに力を見せている。力を背景にした外交交渉で止めようとしているが、これをやっていかないといけない。

    日本は何をすべきか。

     日米安保体制の中で、日本が西太平洋、東シナ海でより大きな任務を負うことで、米軍により多くの兵力を南シナ海に展開できるフレキシビリティー(柔軟性)を与えるべきだろう。

     また、日本がいきなり南シナ海で監視や航行の自由作戦を行うのは難しいが、日本は海洋国家として海の基本的人権ともいえる自由航行の理念をどう示すかが問われている。中国が主張する領海内ではなく九段線内を航行するなど、日本独自のやり方で理念を確認する日本版航行の自由作戦は検討されていい。

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