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  • 同性カップル証明、渋谷区は条例案を撤回せよ

     東京都渋谷区は同性愛のカップルを「結婚に相当する関係」と認め証明書を発行する条例案を議会に提出した。婚姻制度の理念を無視した偏った内容で、同区だけでなく日本社会に深刻な事態を招くのは明白だ。桑原敏武区長は撤回すべきである。

     極めて偏向した理念

     「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」と名付けられた条例案には、看過できない法的問題点がある。憲法の「個人の尊重及び法の下の平等の理念」を強調する一方、婚姻を男女間に限定した24条との整合性を欠いており、極めて偏向した理念が背景にあることがうかがえる。

     民法の家族法は婚姻制度を設け、扶助・貞操など夫婦間の義務を規定しているが、その目的は生まれてくる子供の身分の安定・福祉にある。法律婚の保護が義務付けられているのは子供を守るためである。その義務を遂行すべき行政が当事者の人権だけの観点から同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めることは極めて不適切である。

     成立した場合、「夫婦」や「婚姻」をめぐる価値観の混乱は避けられないだろう。性の問題はどこまでが多様性で、どこからが逸脱行為かは、人によって考え方が分かれる。同性カップルを夫婦と同等に扱うことに一定の社会的コンセンサスがあるとは言い難い現状の中で、条例案は同性愛者だけでなく「両性愛者」「無性愛者」という、一般住民の理解を超えた「性的指向」も性的少数者に含め、「一切の差別を行ってはならない」としている。

     条例推進派は「法的拘束力はない」と説明する。しかし、禁止事項を定め、問題によっては区長が「関係者名その他の事項を公表することができる」としており、住民や区内で働く人間を精神的に拘束する内容だ。

     家庭と学校教育への影響も避けられない。条例案4条の3で「学校教育、生涯学習その他の教育の場において、性的少数者に対する理解を深め、当事者に対する具体的な対応を行うなどの取組がされること」とし、学校教育への介入も謳(うた)っている。独自の副読本などで教育することも考えられる。渋谷区内にある学校にも他区から通学する児童・生徒らがいる。同性愛に違和感を覚える区外の住民が区内の学校への入学を避ける動きも起きるかもしれない。

     同性愛者だけでなく、両性愛者や無性愛者も含めた性的少数者をめぐっては、学校と家庭の価値観が対立することも予想される。その場合、成長過程で精神的に未成熟な子供の人格形成を歪(ゆが)めかねない。両者の整合性を図るため、区は家庭教育にも介入するというのだろうか。さらには、同性愛行為を「罪」とする宗教は少なくないが、条例案は、こうした宗教団体の布教活動禁止や同性カップルの結婚式強制への懸念も生じさせる。

     民主主義の原則を無視

    このような多くの問題を抱えた条例案を区民への十分な説明によるコンセンサス形成もなく、突如議会に提出するというのは、民主主義の原則を無視するものである。桑原区長が撤回しなければ、区議会が賢明な判断を下し、廃案とすべきである。

    (3月5日付社説)

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