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  • 2015/12/24
  • 「北」の核で政策変更も

    新春座談会「トランプ新米政権と日米同盟」(下)

    375

     竹林 米国にとって、具体的な脅威となっている北朝鮮に対してトランプ氏は、金正恩朝鮮労働党委員長に会ってもいいよ、と言っている。トランプ氏の頭の中にある北朝鮮外交とはどういうものか。日本にとっては拉致問題解決は最優先の課題だ。米国が人権問題を含めてどう対応するのか注目される。

     加瀬 北朝鮮に圧力をかけるために中国を利用するというところぐらいは考えているかもしれない。しかし、では、中国に何らかの圧力をかけたとして、それが成功しないうちに、北朝鮮がどんどん核開発を進めていったらどうするのか。これまでの米国の政策というのは、あくまでも北朝鮮が核を持つことを全面否定する政策を取ってきたが、例えばイランを見ると、ある程度認めた上で、イランと核開発停止合意ができたわけだ。

     今、米国のシンクタンクの中でも、北朝鮮の核を阻止しようとして、ここまできてしまった。もうすでに保有しているものをここで破壊することは恐らくできない。そこで、北朝鮮は核保有国として承認して、キャップを作り、ここまでは認めるとする。例えば、濃縮ウランの、どこまではいいとか、核弾頭とミサイルは切り離すとか、いろいろとやり方はあるが、何らかの形でキャップを作ることしかもうできないのではないかという考え方だ。もう一つ、テロリストに核はどこから流出するかと考えた時、イランは今のところないかもしれないが、シリアや北朝鮮はあるかもしれない。その脅威を考えると、米国も日本も妥協して、北朝鮮に何らかのキャップをし、逆に拡散防止を図るという政策に変えるべきだという主張が、一部で出始めているわけだ。

     過去にとらわれないトランプ氏なので、そういう交渉ができるかもしれないよと言われれば、そういう考え方を採用するかもしれない。

     渡部 長期的な考え方ができずに、その場の交渉がうまくいかない場合に、逆切れするかもしれない、と懸念させるようなトランプ氏の性格は、うまくいけば、北朝鮮あるいは中国を動かす原動力になるかもしれない。そう考えて、トランプ氏の圧力をうまく交渉に使おうとする政策関係者がトランプ氏の周りに集まるかもしれない。トランプ氏だって、自分の圧力で大きな問題を解決できるなら、やってみるか、という気になるかもしれない。選挙中には、トランプ氏は米国は余計な軍事介入をしないという姿勢を主張してきたが、北朝鮮は米国の領土に核ミサイルを飛ばすだけの技術を獲得しつつあるので、場合によっては、リスクを冒してでもやる価値があるとトランプ氏が考えるだろうし、それなりの支持も得られるかもしれない。

    「積極的平和主義」を継続せよ

    先手打った安倍・トランプ会談 渡部
    間違ったメッセージ伝達に懸念 加瀬
    安保法制整備の意義は大きい 竹林

    渡部恒雄

    渡部恒雄氏

     渡部 例えば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は当初、北朝鮮に相当厳しい圧力を掛けたことで、北朝鮮が動いた。そのときは、米国は北朝鮮とは一切交渉しないという姿勢を明確にしていたため、ブッシュ大統領に関係が近い日本の小泉首相に接近し、日本人の拉致を認め、謝罪して、問題解決を前進させた。そういう効果を使える可能性はあるかもしれない。その意味で、オバマ大統領は北朝鮮に完璧になめられていた。彼は戦略的忍耐というスローガンで北朝鮮に何の働き掛けもしなったが、武力行使はしないことを見透かされており、圧力ではなく核とミサイル開発へのフリーハンドを与えてしまった。

     竹林 軍事関係でアジア重視のリバランス(再均衡)政策を見直すのかという問題がある。南シナ海における中国の軍事的進出についてトランプ氏は非常に怒っていた。この政策転換はわが国にも直結する問題だが。

     渡部 アジアリバランスといっても、ではオバマ政権の実際の政策はどうだったのか、を考える必要がある。オバマ政権のアジア太平洋へのリバランス政策は、イラクとアフガニスタンでの戦争での過大な軍事負担を減らし、それをアジア太平洋に持ってくるという政策だった。

     オバマ政権発足当初は、米中G2論というような、中国政府との協力により、地域や世界の課題を解決することを期待していたのに、中国は協力姿勢を示すどころか、アジアの周辺諸国に拡張的な姿勢を示した。トランプ氏は中国との貿易赤字にも不満を持っているが、最近では安全保障面でも中国に厳しい。おそらくトランプ政権は、オバマ政権の手垢が付いたリバランスという名前を継承することはない。共和党もそもそもオバマ氏のリバランス政策自体が問題だったと思っている。彼らは、オバマ政権は、リバランスの名前ばかりで、実際の中国に対する圧力はむしろ弱腰だったと考えている。

     トランプ政権は、アジア太平洋における軍事プレゼンスを弱める気は全くないと思う。そんなことをしたら、ますます北朝鮮、中国に対して間違ったシグナルを送ることは理解している。むしろ圧力を高める方向に行くのではないか。米軍の現時点での軍事プレゼンスはそれなりにあるが、中国にどのようなシグナルを送るかが注目されるだろう。

     第2期オバマ政権では、中国の南シナ海での人工島建設に対して、米太平洋軍が、航行の自由作戦を遂行してきたが、それでもオバマ大統領とライス国家安全保障担当補佐官は、中国とのバランスに配慮して、カーター国防長官やハリス太平洋軍司令官がしたいことを、100%は許可してこなかったようだ。トランプ政権では、軍の声がより強く反映すると考えられるので、対中シグナルも、より力の要素が反映される方向に行く可能性もある。

    訓練や配備等で中国に圧力

    加瀬みき

    加瀬みき氏

     加瀬 米国の政権は、特に政党が変わると、必ず前の政権とは逆のことをやりたがる。トランプ氏も、オバマ氏は弱い米国をつくってしまったというイメージがあるので、それに対抗して強い米国と言っている。そのためには軍事力を誇示するのだと思う。

     オバマ政権は、結局「イスラム国」(IS)との戦いは避けられなくなり、おまけにイラク情勢、シリア情勢も悪化し、人材も予算もそちらに割かれてしまった。これはしばらくは変わらないと思うが、アジアではトランプ氏の特有の発言と、目に見える形の訓練や配備などで、中国に圧力を掛けると思う。

     非常に心配なのは、間違ったメッセージが伝わる可能性だ。トランプ氏は政治には素人であり、周りの軍人も、実際に政権の中にいた人たちではない。相手がどう捉えるかということを、必ずしも分かっていない。中国側あるいはロシア側がどうメッセージを受け取るかということに気を付けてほしい。

     竹林 日本の安全保障の根幹は日米同盟だ。その強化が必要だが、見通しはどうか。日本が軍事負担増を迫られるのではないかとの懸念もある。安倍首相が大統領当選後のトランプ氏と会い、彼を非常に信頼できる指導者だと確信したと評価したことがあったが、トランプ政権下での日米関係はどうなるか。

    日米協力事項を認知させよ

     渡部 軍人が多いということは、日米同盟の価値を実感している人たちがいるということだ。フリン氏(次期国家安全保障担当補佐官)もそうだし、マティス氏(次期国防長官)は海兵隊出身なので、日米同盟のそもそもの意義を疑うというような人は政権にはいない。トランプ氏が言っているのは、もう少し日本が金を出してくれという類の話だ。本質的な話ではない。

     トランプ氏にとって一番大事な人物は、クシュナー氏やイバンカさんら身内だ。その次に補佐官ら側近がいて、政権の閣僚ということになるだろう。米国の大統領にとっては諸外国のリーダーも大事な相手だが、その中で「そうだな、やっぱり安倍の話を聞いておこう」となれば違うと思う。そうするのが外交の業だと思うし、現にブッシュ(子)大統領にとって小泉首相はそういう相手だった。

     しかしそうするためには、米国にだけ気を使って関係づくりをしていればいいのではない。日本がアジアの安定のために自らのリソースを使って努力をしていく過程で、米国と共通の利益と目標を共有してこそ、影響力のある同盟相手となれる。

     現に今まで日米両国はそういう関係に向かって努力してきた。これまでも、まがりなりにも、北朝鮮の暴発を抑止し、中国の膨張もある程度まで抑える効果はあったと考えるべきだろう。安倍政権は「積極的平和主義」として、地域安定のために主体的に取り組んでおり、このような継続は重要だ。

     要するに自国の領域を責任を持って守り、地域の安定にも貢献するために、日本が何をできるかを考え、実行することだ。今後の日米の協議でも、日本の予算の制約、憲法の制約はあるが、その中で効果的に遂行できるものを示し、協力事項を合意し、それを次期大統領にも認知させることができれば、同盟は安定し、地域の安全保障にも貢献できるだろう。

    竹林春夫

    竹林春夫

     竹林 安保法制はそれを先取りした形で、積極的に安倍政権はやってきた。そのことに反対する人もいるが、それこそ一国主義の典型だ。国際社会に生きるという視点で考えれば、安保法制を整備した意義は極めて大きいと言わざるを得ない。安倍政権に提言することは。

     加瀬 日本として何ができるか、すべきかということと同時に、プレゼンを変えなければならないと思う。日本人はそもそも、知る人ぞ知る、分かる人はちゃんと分かってくれるという考え方の人が多い。米国人は察してくれることはない。きちんとプレゼンし、明確に伝える必要がある。ましてやトランプ氏はそうだと思う。

     つまり、これは一体いくらの価値があるのかというふうに彼が判断するのだと考えて、日本が米国にとってこれだけの貢献をしているんだぞと訴える。経済的には、これだけ日本の自動車会社が米国で雇用を生んでいるのだ、でもいい。安全保障、北朝鮮問題でも実は日本がこれだけ貢献しているのだよと、米軍と自衛隊はこれだけ協力をして、自衛隊あるいは不沈空母の日本がなければ米国だって困るのだよということを、分かってるだろうではなくて、ガンガン言わなくてはだめだと思う。そういうことによって日本の価値を上げていく。実際は今までと変わらなくても、それをトランプ氏にいかにうまく売り込むかというところが、ポイントだ。

     竹林 この間の安倍首相とトランプ氏との対談は、売り込みの第一歩であり、また年末の真珠湾の慰霊の訪問は、日米の信頼関係の強化に大きな意味があったのではないか。

     渡部 あれは大事な会談だった。ビジネスマンのトランプ氏にとって、まず最初に売り込みに来たのはその気があるということを示すことだ。これは安倍首相もそうだったし、ソフトバンクの孫正義氏との面会もそうだった。特に、孫氏は米国経済にお土産を持って行ったわけで、これは米国市民にアピールできるわけで、嬉しかったはずだ。相手がオファーなり、カネを出すというのは、自分の価値を認めているということだから、そういうものを恥ずかしいとか、みっともないと思うセンスだと出遅れる。欧州のリーダーは出遅れた。欧州には、それぞれ反難民感情が強い右派勢力を抱えるなどの事情があるから仕方がないが、今回は日本は先手が打てた。安倍さんは、トランプ氏やプーチン氏、フィリピンのドゥテルテ大統領のようなワンマン型リーダーとの関係づくりがうまいので、良かったなと思う。(笑い)

    国際社会の信頼得て貢献増を

    TPPの成長戦略の再考必要 渡部
    きちんとプレゼンして訴えよ 加瀬
    首相は強靭な指導力と胆力を 竹林

     渡部 もう一つは加瀬さんが言ったことには全く同感で、日本のしていることには、プレゼンテーションすることが重要だ。プレゼンテーションをする時に大事なことは何かというと、トランプ氏は2カ国でしか物事を考えられないということだ。多国間は好きではないし考える気はないようだ。

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    握手する安倍晋三首相(左)とトランプ次期米大統領=昨年11月17日、米ニューヨーク(内閣広報室提供・時事)

     だから多国間のTPP(経済連携協定)を止めて2カ国でやろうと言っている。日米同盟もそうで、日米同盟の日本と米国のそれぞれの利益を考えることはできるけれど、日米同盟が、公共財としてのアジアの安定を担保しているという発想は恐らくゼロだ。だから説明する際に、公共のために役立っていると説明するよりも、日米間で米国はこれだけ得をしていると説明するほうが効果的だと思う。

     加瀬 公共財とか国際秩序だとか、そもそも自由とか民主主義とかそういうものに価値観を置いているとは思えない。同盟関係にも価値を置かない。NATO(北大西洋条約機構)なんてもう過去の遺物だとか、日米安保だって日本がもっとカネを出せという発言は、その背後にあるもっと広い国際秩序とか平和とか安定というものは彼の頭には全くないことを示している。

     米国だけがどうしてお金を出して犠牲を払うのか。その考え方なのだ。米国が今までつくってきたもので、皆が恩恵を得ているけれども、他国もそれに少しずつだけれども貢献することによって米国だって恩恵を得ていることは彼には分かっていない。そういうものが壊れることを米国とかヨーロッパのインテリ、専門家たちは恐れている。いったんそれが壊れてしまったら、取り戻すことはなかなか難しい。

     竹林 「世界の警察官にはなれない」という指摘もあるが、警察官にはならないけれども守るところは守って、自分の国益は自分で守るというのは当然のことだ。日本のマスコミの多くは孤立主義になるのではないか、一国主義になるのではないかという見方をしている。米国にしてみれば自分の国を守るのは当然のことだ。

     渡部 その通り。米国の利益は必ずしも自分の領土・領海にだけにあるわけではない。しかも米国の場合は、世界的な国際秩序の維持により、グローバルなビジネスを展開して儲けている。これを誰か、雑でもいいから試算して、トランプ氏に見せてあげる必要があるのではないか。

     加瀬 例えば、ドルが基軸通貨であるのは米国が一番信用できるから、皆が使っているだけのことだ。ドルが基軸通貨である以上、米国の企業とか米国本土が関係なくても、ドルでやっている商売はすべて米国が規制できる。米国が守っていると同時にその背後で規制ができる。

     イランに対する経済制裁の一部は、イランがドルで行っていた石油の売買ができなくなることだったが、他の国とイランの取引はドルで決済している以上、米国が規制できるのだ。米国は直接取引はなくともその仕組みを守っている。だから、ドルで売買することに皆、安心している。それが突然、明日無価値になると誰も思っていないのは、米国がそれを守っているからだ。でも、それはお互いさまのバランスであって、それによって米国もいろんな恩恵を受けているのだが、米国人には当たり前過ぎて分からない。

     竹林 経済問題は、オーソドックスな経済専門家がほとんど政権にいないし、TPPにしても、2国間貿易はできてもマルチはできないとなると、今後、どういう形になるか。次期商務長官に親日派でジャパン・ソサイエティー会長のウィルバー氏が就く予定なので、日本にとっては扉が開いているような気もする。TPPの問題はどうなるか。

     渡部 TPPは日本にとってどのようなメリットがあるのかもう少し深く考えた方がいいだろう。TPPというのは、一つのルールを、すべての加盟国に適用することだ。特に重要なのは東南アジア諸国だと思うが、東南アジアのこれからまだ伸びしろのある国と共通のルールやスタンダードを共有することで、日本も非常に大きな経済圏を共有できることになる。

     中国の被害妄想もあり、TPPは中国封じ込めのための外交の道具というイメージがあるが、当たり前だが、TPPは経済協定であり、経済的に加盟国が利益を得る協定であり、中国が将来加盟したいと思うような魅力もある。中国を排除するツールではなく、中国が将来加盟して共通のルールを守ってくれるようにするツールだ。ただし、TPPが発効しないということになっても、日本はこれまでアジア近隣諸国とつくり上げてきた経済のネットワークがあり、東南アジア諸国連合(ASEAN)との包括的EPA(経済連携協定)も持っている。TPPに比べれば、まだまだ質が低いがそれを上げていくなど工夫もできるだろうし、TPP加盟国で戦略を立てて、米国に加入圧力をつくり出すことだって、考えてもいいと思う。日本の経済をアジアの地域経済とどのように連携させて、成長させていくかということを、そもそもから考えることが必要だ。

     一昨年、私は安保法制に反対する人たちに、いくつかの説明と解説をした。日米同盟による安定は、日本の防衛だけでなく、アジアが安定し、そこでの経済活動を担保し、経済成長にも役立つ。これはトランプ氏にも学んでもらう必要があるが、世界における安全保障と経済の利益をきちんと計算すべき時だろう。トランプ氏の登場が、日本にとっても、いい頭の体操になると思う。

     もしトランプ氏がいなくなっても、米国の内向きの動きが止まるわけではない。トランプ氏はトリックスターであり、トランプ氏の後に、引き続いて米国にはいろいろな変化が起こってくる可能性がある。新しい状況に合わせるのではなく、日本が損をしないような状況を創り出す必要がある。そのように考えれば、TPPで日本がやろうとしている経済戦略は何なのか、TPPがもし止まるのなら何をするか、というような発想に行く必要があると思う。

     私は、TPPを国会で通したのは、戦略的には正しいと思う。米国が動かないから、日本もギブアップというのでは、あまりにも、戦略的でない。トランプ氏が反対していようが共和党にはTPP賛成派が多い。トランプ氏の力が強いうちはおそらく議会は動けないけれども、議会がどこかの段階で通そうかというふうに状況が変わることだってあるだろう。

     加瀬 日本が日本として何をするべきか。私は数十年前に銀行に勤めていたが、その頃から円の国際化が語られていた。それはどこに行ってしまったのかと思う。そのうちに中国にいろいろな形で追い越されている。日本は追い詰められないとやらない国だ。明治維新後、アジアの中では先頭を走ってきた国だからかもしれないが、自分たちはいつもアジアの中では上にいるような気分になっているのか、米国に支えてもらっていると思っているのか、どうもなかなか決断ができない。ここでトランプ氏のような人が大統領になって、日米同盟も将来がよく分からない、TPPもダメそうだ、日本は見捨てられるかもしれない、北朝鮮がミサイルを撃つかもしれない、このような危機感がある時に、例えば、もう少しアジア地域の貿易圏構築ないし経済発展に向けて、日本が仕組みをどうつくっていくのか、支えていくのかということをここで考えるのはいいことだと思う。日本に対する信頼は、東南アジアでも非常に高い。それをベースにする。

     また、日本はプレゼン下手だなと思う。実は日本がやっていることはたくさんある。アジア通貨危機の時も、新宮沢構想による支援を各国が利用したが、日本でも、ましてや米国ではほとんど知られてない。非常に貢献したにもかかわらず、最後は米国が解決したような思い込みもある。日本は、やっていることをきちんとアピールすべきだ。やることはやって、その上でちゃんと宣伝をする。そうすれば、米国からももっと重要視されるようになっていくのではないか。そうなるよう期待したい。

     竹林 そのためにも、やるべきことをやるという政府、とりわけ安倍首相の強靭(きょうじん)なリーダーシップと胆力と国民からの支持が必要だろう。普天間基地の辺野古への移設という日米合意の実行もやるべきことの一つだ。また、首相が公約している憲法改正を実現し、日本の国柄を明確にして国際社会からの信頼を得ながら、さらに国際貢献していくことが肝要だと思う。そして、それらを分かりやすく確実にアピールしていく能力も求められよう。

     本日は、ありがとうございました。

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