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    元全国紙経済記者
    ウィーン在住
    ウィーン在住
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    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    高齢者医療の“お家騒動” 母の死めぐり兄妹が訴訟

    治療中止疑い兄を提訴

     高齢化社会が日本列島を襲っている。

     4人に1人が65歳以上で、電車に乗ってもレストランを訪れても道を歩いても、4人に1人は65歳を超えた年配者である。果たして高齢者社会は、日本をどのように変え、家族の姿をどう変えていくのか。

     それは埼玉県のある家族の間に起こった“お家騒動”とも兄妹喧嘩(げんか)ともいえる出来事で、親の死をきっかけに表面化した。

     事件が起こったのは、8年前の2007年6月のこと。東京都内に住む長山寿美(仮名)89歳が、ある日、体調不良を起こし、同居する長男夫婦に立正佼成会附属病院へと救急車で運ばれた。軽い脳梗塞というのが医師の診断だった。

     そこでまず点滴を受け、後にはそこにリハビリ治療が加わった。

     兄夫婦から知らせを受けた妹悦子が、直ぐに病院へ飛んでいくと、その頃には母親も体調を戻し、元気な姿を見せていたという。

     「入院後、母親は医師が驚くほど経過がよく、7月よりリハビリ(住所氏名を書く、輪投げ、平行棒など)を始めたほどで、退院もそう遠くではないと思い、直ぐに転院先を探し始めたほどです。もちろん入院が死につながるような容態には全く見えなかった」

     と悦子は言っている。

     しかし長男・長山夫妻は、母親が入院してしばらくすると、その治療について口を挟むようになり、点滴、リハビリ療法を受ける際など「リハビリへ行くのが遅くなる」といって、母親の点滴速度を速めたりするようになり、時にはそれが嘔吐につながり、それに連れて母親の容態も日増しに悪くなって行ったという。

     また入院中の母親が呼吸困難に襲われた時にも、酸素マスクを付けてあげず、母親を苦しめることは、一度や二度で済まなかったという。それでも母親は必死に息をしていたというが、やがて咽喉に痰が詰まり、目をむき出したまま息絶えていったという。

     それが2007年(平成19年)9月8日のことで、立正佼成会病院への入院後、83日後のことである。

     それから7年の時が経過―。

     長女の村山悦子は、「母親の死は、佼成会病院入院後の兄の措置に原因がある」として、2014年9月、兄長山孝を東京地裁へ提訴したというのが、今回の村山悦子による提訴事件のあらましである。

     その提訴に対し兄の長山孝は、

    「(妹との問題は)一度、決着がついたことで、ここでまた争うつもりはない」

     と妹が起こした東京地裁への訴えには、全く無視の態度を示している。

     兄長山孝のいう決着というのは、何を指すのか。村山悦子が兄を訴えたのは今回が初めてという。ただ母親寿美が亡くなった時、兄妹間で遺産を巡りハードな交渉を行ったことがある。

     結局、兄に遺産の多くを奪われ、妹悦子に回ってきたのは全体の6分の1程度に過ぎなかったという。決して満足した額ではなかったけれど、といって悦子は兄に対し反旗を翻したわけでもない。

     兄が「決着がついている」といったのは多分それを指し、妹との間にトラブルはないと言いたかったのであろう。

    家族の絆が薄らぐ社会

     村山悦子はいう。

    「私に説明することなく、なぜ両者は母の治療を中止し、死なせたのか。たとえ何歳になろうとも死んでいい人間はいない。母の命を絶つという重大問題が、長男夫婦の独断で決められてよいのでしょうか。私は大きな憤りを感じました」

     その母親の死の全貌を明らかにするために、悦子は批判を覚悟で、2014年9月、兄長山孝を東京地裁へと訴えた。

     兄妹間での争いは、決して珍しくはないが、高齢化社会の中で家族の絆が益々薄らいでゆくだろう。(敬称略)

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