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  • 青木 節子
    青木 節子
    内閣府 宇宙政策委員

    奇跡を知識に変える科学の役割

    廣井孝弘

     惑星科学においては、他の分野の科学と同様に、古来奇跡として考えられてきた現象を解明して、知識または常識として人々を教化してきた歴史がある。最近も話題になった日食は、人類歴史の大半においては奇跡としてしかとらえられず、天文学の発展によってその仕組みが理解され予測もできるようになった例である。惑星科学という言葉は新しいが、ギリシャ時代に既に地球や月の大きさや距離などを計算していたことを考えれば、惑星科学は2000年以上の歴史を持つ古い学問である。

     中世までは地球は平たく、世界の端に行ったならば奈落の底のようなところに落ちてしまうと考えていたために、コロンブスのように「西回りでインドに行こう」という試みをすることは、地球が球形であるという事を命がけで信じなければできないことであった。現在でも、地球が丸いことは直に経験することは少ない我々だが、注意してみれば、水平線がわずかに丸まっていることや、遠く離れていく帆船のマストが下から隠れていくこと、そして月食の時に地球の影が丸い輪郭を持つことに気づけば、自然な結論として、地球は球形であると分かる。

     しかし、過去からの偏見にとらわれていると、それらはすべて奇跡であり、科学を超えたものと頭から信じてしまい、論理的思考を適用して解明する努力を怠ってしまうことがある。ガリレオ・ガリレイは、月の表面がつるつるだから光っているのだと信じている多くの人々に反論し、もしそうならば、太陽の光を正反射する縦に細長い部分だけが光っているはずであり、月の全面がほぼ均等に光っているのは、その表面がザラザラで、太陽の光をあらゆる方向に拡散的に反射しているからであると論じた。実際、アポロ計画のように月を訪れてみれば、月表面の大部分はレゴリスと呼ばれる細かい砂によって覆われていることが分かった。

     科学とはこのように強力なものであり、限られた情報を論理的に深く思考し、すべての観測事実を説明できる内なる真理を求める人間活動である。しかし、ガリレオの時代にあったように、ギリシャ時代の自然哲学を忘れ、聖書や宗教指導者たちによる天地創造の浅薄な理解に洗脳されて科学的思考を停止していた人々が多い時代には、先見の明を持った者たちは迫害されるものである。それでも信念を貫いた科学者たちによって科学は発展してきた。

     観測事実の論理的思考とともに科学者にとって重要なものは閃きである。それは天の啓示ともとらえられるもので、ベンゼン環の構造を、輪を作っている蛇の夢でひらめいたケクレの逸話はその例として有名である。観測・実験でデータを集めて論理的に思考することは重要であるが、それらの原因となる根本法則を導くことは誰でもできることではない。そして、アルベルト・アインシュタインの有名な言葉にあるように、自然法則は美しくなければならないというのがヒントとして与えられている。もっとも、同博士の別の信念である、神はサイコロを投げないという内容によって量子力学を受け入れることができなかったという負の側面もあったわけだが。

     現在の物理学は素粒子物理においてヒッグス粒子が発見されて標準理論が証明され、完成域に達したかのように思われる。しかし、これで終わりではない。奇跡を知識に変えるという科学の役割から見て、人類歴史に長く知られている現象のうち、理解されていないものがまだ多くある。医療現場においては手かざしや祈りの効果が存在し、惑星科学においても、知的生命体にとって理想的な太陽系と、地球・月の系が奇跡的にできた原因も解明されていない。そして、ビッグバンは何によって起こったのか、人間が死んだ後の世界、霊界は存在するのか、そこでの物理法則はなんであるのか、などなど、わからないことが多い。

     今後の科学は、この肉界の科学を超えた霊界の科学を扱い、この宇宙生成の原因、知的生命体の存在意義、死後の世界の現実を解明し、それに基づいて、人生の目的までを我々に教え諭してくれるものとなることを期待する。それによってはじめて、各々勝手に霊界を解釈して競合・衝突している宗教間に調和をもたらし、信じているからでなく知っているからという理由で皆が人生をある理想に従って生きるという世界が実現するのではなかろうか。
    (2017年9月11日記)

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