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    経済ジャーナリスト
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    4年後の東京五輪の成功を祈る

     当方は猫ひろしさん(39)という日本人男性を知らなかった。ネット情報から有名なコメディアンだとを知った。知らない男性の言動について、ああだ、こうだ、というのは失礼なことかもしれないが、猫ひろしさんがリオデジャネイロ夏季五輪最終日の21日、男子マラソンを完走後、語ったコメントを読んで「この人には夢があったのだな」と強く感じた。その夢を実現するために日本人からカンボジアに国籍を変え、五輪に参加したということが分かった。

     猫ひろしさんの国籍変更の詳細な経緯は知らないが スポーツ選手の中では五輪や世界大会に参加したいために国籍を変える人はいる。世界大会や五輪に参加するためには一定の規定をクリアしなければならないし、参加枠も決まっている。全員が参加できるわけではない。

     例えば、米国では水泳競技で五輪に参加するためには厳しい予選を通過しなければならない。その予選は本大会より厳しい、といわれるぐらいだ。猫ひろしさんの場合、日本人のマラソンの五輪枠組みに入れなかったが、カンボジアではまだチャンスがあったから、国籍を変更したのだろう。

     もちろん、スポーツ選手の国籍変更理由はそれだけではない。自国の所属競技協会との関係が悪化し、国際大会への参加の道が途絶えた選手が別の国の選手として参加するケースも少なくない。

     当方が住むオーストリアはウインタースポーツのメッカだ。冬季五輪も2回、開催した。アルペンスキー競技だけではなく、スキージャンプもトップ級だ。アンドレアス・ゴールドベルガ―というジャンプ選手がいた。ワールドカップ総合を3回獲得した名選手だった。葛西選手と同世代の選手だ。彼がコカインなど麻薬問題でオーストリアのスキー・ジャンプ協会から半年間の資格停止の処分を受け、長野冬季五輪に参加できなるという状況が生じた。そこでゴールドベルガ―選手はスロベニアの国籍を取ろうと試みたことがあった。国際的スキー・ジャンプ選手の国籍変更は当時、世界のメディアでも大きく報道されたことがあったので、読者の中にも記憶されている人
    も少なくないだろう。

     猫ひろしさんは2011年、国籍を変更し、ロンドン大会ではカンボジア代表に選出されたが、国籍変更後、1年未満しか経過していないなどの理由から大会参加を拒否された。だから、リオ五輪はカンボジア人の猫さんの五輪デビューとなったわけだ。

     猫ひろしさんは完走した。時間は2時間45分55秒で、参加者155人中139位、完走者中140人中、139位だった。読売新聞電子版によると、猫ひろしさんは「カンボジア人も日本人もブラジルも応援してくれた。最高の42・195キロでした。後半、苦しくて足が動かなくなったが、僕を選んでくれたカンボジアでも放送されている。絶対に歩かないぞと踏ん張った」という。走ることが大好きな男の気概を感じた。

     夢を持つことは大切だ。それを実現する為に努力することはもっと素晴らしい。「走る」という競技は多くのスポーツ競技の中でも最も古い競技だろう。走り出した少年が人より早く走りたくて練習を繰り返し、そして五輪大会に参加したいという夢が膨らんでいったのだろう。猫ひろしさんは大きなドラマを書いたわけだ。

     リオ夏季五輪大会は幕を閉じ、いよいよ2020年の東京大会だ。リオ大会では、水泳競技で5個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプスの活躍、、そして陸上男子400mリレーで銀メダルを獲得した4人の日本人ランナーの勇姿が忘れられない。多分、もっと、もっと多くのドラマがあったのだろう。

     リオ五輪大会開催中もシリアやウクライナ東部で戦闘が続き、多くの犠牲者が出ている。また、ドーピング問題でロシアの陸上選手が五輪参加できずに終わった。4年後の東京五輪を人類の連帯と和解を誇示できるスポーツ祭典としたいものだ。東京五輪の成功を祈る。

    (ウィーン在住)

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