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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    テロリストと精神疾患の関連性

     2000年から15年にかけて発生した単独テロ事件で犯人たちの約35%は「何らかの精神疾患を抱えていた」という調査結果が明らかになった。読売新聞電子版(31日)が欧州警察機構(ユーロポール)の報告書内容として報じた。

     非常に正鵠を射た指摘だろう。テロリストとその精神疾患との関連について、7月に発生したドイツの事件を通じて考えてみたい。

     例えば、独バイエルン州のアンスバッハの自爆テロ事件やミュンヘンのオリンピア・ショッピングセンター(OEZ)の銃乱射事件の犯人プロファイルを聞くと、両事件の犯人は精神疾患の病歴があった。後者は治療のために病院に入院していたことが判明した。前者は明らかになっただけで過去2度の自殺未遂を犯している。

     ミュンヘン警察当局の発表では、独犯罪歴史で単独犯行としては最悪の犠牲者を出した銃乱射事件の犯人、18歳の学生は「社会的フォビアと鬱(うつ)」に悩んでいた。アンスバッハの場合、27歳のシリア難民は難民申請をしたが、ドイツで却下されていること、犯行の12日前に、ブルガリアに送還されることが決定していることなどが自爆テロの引き金となった可能性が考えらえる。過去の2度の自殺未遂がどのような状況下でなされたかは不明だが、アンスバッハの自爆テロリストの精神状況が不安定だったことは間違いないだろう。

     もちろん、ミュンヘンの事件はアンスバッハの自爆テロ事件とは異なり、テロではなく、独語では Amoklauf と呼ばれる銃乱射という暴発事件だ。ただし、両者の共通点はいずれも単独犯行であり、精神疾患を抱えていたという事実だ。その結果、前者は銃乱射事件を犯して9人を殺害し、後者は自爆する一方、多数を負傷させた。犯行内容は異なるが、その原因はやはり精神的な疾患が大きな影響を与えたことが考えられるわけだ。

     ミュンヘンの場合、犯人の精神世界はかなり判明した。彼は過去の大量殺人事件に強い関心を注ぎ、バーデン・ヴェルテンブルク州ヴィネンデンで発生した銃乱射事件(2009年3月11日)の犯行現場を訪れ、写真を撮ったり、ノルウェーのアンネシュ・ブレイビク容疑者(37)がオスロの政府庁舎前の爆弾テロと郊外のウトヤ島の銃乱射事件(2011年7月22日)で計77人を殺害した事件に関心を寄せ、ブレイビクと同じように犯行前にマニフェストをまとめていた。銃乱射事件はブレイビク事件5年目に当たる22日に行われた。偶然ではなく,犯人が恣意的に22日を選んだことが考えられる。

     また、犯人は4月20日生まれだが、アドルフ・ヒトラーと同じ誕生日であることを自慢していたという。ドイツのメディアの一部は、「犯人はイラン人、ドイツ人であることを誇るアーリア人優越主義者であり、トルコ人、アラブ人を軽蔑していた」と報じている。

     ドイツ南部バイエルン州のビュルツブルクで先月18日、アフガニスタン出身の17歳の難民の少年が列車の中で旅客に斧とナイフで襲い掛かり、5人に重軽傷を負わせるという事件が起きた。少年は模範的な難民で社会に統合していただけに、そのテロ行為は国民に大きな衝撃を投げかけた。少年がイスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓うビデオは衝撃的だ。だから、「なぜ、17歳の少年が突然、過激派テロリストに変身したか」が大きなテーマとなった。

     少年が射殺された現在、憶測に留まるが、故郷アフガニスタンの友人が亡くなったというニュースが17歳の心を苦しめ、テロ行為に走る引き金となったのではないか。すなわち、最初にISのイデオロギーがあったのではなく、友を失った悲しみがあったのではないか。17歳の少年の精神世界も病み、苦しんでいたのだろう。

     ホームグロウン・テロリストの場合、彼らは西側の物質消費文明を体験し、享受してきた。彼らが西側文化を拒否し、ISのイデオロギーに心を惹かれる背景には、程度の差こそあれ、西欧社会への失望があり、自身の出自ゆえに社会に統合できない絶望感があったはずだ。

     人は価値あることに人生を投入したいという強い欲望がある。特に、若い世代であればあるほど、その願いはシリアスだろう。心の渇きをもつ若者たちにISは偽りの人生の目的を提示し、オルグしているわけだ。ISのオルグに対抗する最善の手段は、時間はかかるだろうが、西側の精神文明の復興以外にないのではないか。

    (ウィーン在住)

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