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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    「私は北朝鮮人だ」と答えた時

     ダッカのレストラン襲撃テロ事件で一人の男性が「私は日本人だ。撃たないでくれ」と叫んだという。同テロ事件で7人の日本人を含む20人がイスラム過激派テログループの犠牲となった。

     このニュースを読んだ時、冷戦時代の事を思い出した。旧東欧共産圏に入り取材していた約30年前の話だ。タクシーなどを利用すると、運転手は必ずといっていいほど、「日本人だろう」と聞いてきた。最初の時は相手の狙いが分からなかったこともあって「ああそうだよ」と気楽に答えていた。すると運転手は笑みを見せて「チェンジしないか。レートはいいよ」と声をかけてくる。

     こちらが拒んでも運転手は簡単には諦めない。日本人の客などめったい見なかった時代だ。簡単に引き下がらない、といった感じでしつこく迫ってくる。当方がルーマニア取材中、運転手が「日本人か」と聞いてきた。そこで「北朝鮮だ」と半分冗談のつもりで答えた。すると、運転手や両替業者は当方の様子を見ながら、それ以上ビジネスの話はしなくなった。彼らは当方の話を信じてくれたのだ。

     冷戦時代、東欧では日本人といえば、金持ちの国の国民というイメージが強かった。だから、その金を狙ったスリや両替業者の犠牲となる日本人旅行者がいた。

     (蛇足になるが、ブタペストでビジネスマンと話したことがある。彼は「日本は旧ソ連・東欧共産圏の解放を推進した立役者です。日本は小型ラジオ、ファックス器を作り、世界に送り出してくれた。冷戦時代の反体制派活動家はそれらの小型機材を利用して、地下活動した。大型のドイツ製とは違い、小型で精密な日本製機材は共産圏の解放に大きな手助けとなった」と説明し、「日本企業こそノーベル平和賞を受賞できる」と語っていた)。

     ダッカの襲撃テロ事件ではテロリストは先ず外国人か自国民かをチェックし、外国人と判明すれば殺害したという。自国民に対しては、イスラム教信者であり、コーランの一部を暗唱できるかチェックしたという。

     グローバルな時代だから、テロにも国境はない。イスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)はここにきてテロ・ターゲットを国際空港など国際性のある対象に絞り、自爆テロを行なっている。ISで戦術変更があった可能性が考えられる。少ないテロで最大の効果を得るためではないか。例外はイラクとシリア内のテロだろう。イラク国内のテロでは、シーア派とスンニ派の対立が依然大きな原因となっているからだ。

     イスラム過激派テロリストには日本政府が対テロ戦略に協力していることへの反発がある、と聞く。イスラム過激派テロリストにとっては、異教徒は全て襲撃対象だ。日本政府がテロ対策で国際協力をしなければ、日本人が海外でテロリストに狙われないと考えるとすれば、それは余りにも非現実的だ。日本政府が国民が犠牲となることを恐れ、対テロ国際戦線に協力しなければ、日本は世界から軽蔑されるだけだ。その代価は経済的損失として必ず跳ね返ってくる。海外居住の日本人の安全に対しては、政府と国民が知恵を出し合って危機管理していく以外にない。連帯には犠牲が伴うケースがある。

     無念なことは、派遣された国バングラデシュの発展のために汗を流してきた日本人がテロの犠牲となったことだ。犠牲者に心からの哀悼の意を表したい。

    (ウィーン在住)

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