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    尾関 通允
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    中村 仁
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    石平
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    長谷川 良 (ウィーン在住)
    長谷川 良 ...
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    朝日新聞と戦争とリベラルの未来

     ども宇佐美です。

     いきなり告知で恐縮ですが、アゴラ編集長の新田さんとの共著で8月28日に「朝日新聞がなくなる日」という本を出すことになりました。

     この企画を新田さんから初めて聞かされた時は「その手のヘイト本を書いても敵ばかり作ることになって損ばかりするから嫌だ」と思っていたのですが、都議選や加計学園問題や日報問題に関するリベラルメディアの報道の在り方を見るにつけ、「さすがにこれはおかしい」と考え直しこのタイミングで言っておくべきことは言っておこうと決意した次第です。

     まず私の朝日新聞に関する認識ですが、少なくとも一時期までは名実ともに日本の「リベラル」の代表としてのクオリティペーパーであったと思いますし、またこれからもそうあるべきだとは思っています。ただ現状については、時代の変化の中でリベラルとしての使命を見失い保守層の揚げ足をとる「ゴシップ新聞」化しかけているように感じています。

     私は世間的に見れば「保守」に分類されるタイプの人間ですが、保守とリベラルは相互に鏡像のような関係でお互いがお互いの主張を批判しあうことで切磋琢磨する関係にある、と思っています。実際私はアンチなりに朝日新聞を愛し読み続けてきた人間でして、そういう「アンチ朝日新聞ファン」の私の肌感覚からして、リベラルの代表である朝日新聞の言論が劣化したことで、保守言論が劣化し、それが現状の政治の混乱・空洞化を招くことになったのではないかと半ば確信しています。

     そんなわけで私としては、リベラルの再生の観点からも、また保守の再生の観点からも、やはり朝日新聞には改めて原点に立ち返って「21世紀のリベラルとしての使命を再発見してほしい」という思いを込めて、本書を書いたつもりです。新田さんにもその意思を伝えた上で、本書のコンセプトは「朝日新聞への口汚い応援歌」としています。以下本書の内容とも関係しますが、私なりの朝日新聞論について簡単に述べておきたいと思います。

    『朝日新聞がなくなる日』

    『朝日新聞がなくなる日』


    朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース – [単行本(ソフトカバー)]
    新田 哲史
    ワニブックス
    2017-08-28

     私は、朝日新聞のリベラルの原点はやはり太平洋戦争にあるのではないか、と考えていまして、「戦争で取り返しのつかない悲劇を招き、また、戦争に至る過程で数々の人権侵害が行われた」という反省を立脚点として「二度と戦争をしない、そのために国際紛争は武力ではなく話し合いで解決し、国内においては人権を制限しかねない軍部という勢力が再び台頭しないようにする」という理想、これはそのまま日本国憲法の精神なのですが、を掲げるに至ったということなのでしょう。

     こうした思想は理想論ではあるものの理屈としては筋は通っていて、具体的には安全保障の理論として「非武装ー国連中心主義」が長らく朝日新聞では展開されてきました。サンフラシスコ講和条約に対する全面講和論などがその典型だったわけですが、結局は冷戦という現実への対処として日米安保や自衛隊の存在というものを消極的ながら事後的に認めるようになったのはみなさんご存知の通りです。ただそれでも朝日新聞においては、「日米安保ー自衛隊」の存在に関しては「再び日本を戦争に巻き込みかねない危険な存在」として否定的に報道されてきたのは、彼らのリベラルとしての意地なり信念というものなのでしょう。

     このあたり国連中心主義という理想を建前として掲げつつも、冷戦という現実の前に日米安保に実質安全保障を委ねてきた日本外交の姿そのものとかぶるわけで、やはり保守とリベラルはお互い鏡像の関係にあるのだと感じるところです。そういう意味では、私は冷戦という現実に対する理想論からの歯止めとして朝日新聞の果たしてきた役割は大きいと考えていまして、ある意味では朝日新聞のおかげで日本は米ソの争いに直接に巻き込まれず、せいぜい「アメリカの不沈空母」としての役割を果たす程度で国防負担が軽いままに経済発展することができた、というのも事実なのだと思います。実際日本が朝鮮戦争やベトナム戦争の当事者になっていたら、今の平和国家としての日本の姿はなかったでしょうからね。

     しかしながらこれはあくまで過去の話であって、冷戦という構造が終わった現在、日本の地政学的環境は「アメリカの不沈空母」であり続ければいいというものではなくなりつつあり、「アメリカのアジアにおける最大の同盟国」としてパートナーの役割を果たすことが求められるようになってきているのが21世紀なのだと思います。他方現実論として中国が海洋進出の野望をあらわにし、北朝鮮がICBMの保有を間近にするという脅威が存在する中で、「日本がアジアの平和・秩序を守るためにどのような対応を取るべきか」という議論に対する解答が国際的に迫られており、保守勢力としてのそれに対する一つの答えが「限定的な集団的自衛権の容認」ということだったのですが、この時朝日新聞はリベラルとしての理想論でこの議論に対峙することがうまくできなかったように思います。従来の理想論としての「非武装ー国連中心主義」がもはや中国にも北朝鮮にも機能しないことが明らかな中で、21世紀のリベラルとして依ってたつ理論を打ち立てられず「集団的自衛権は憲法違反」という対案のない否定の議論しか展開できなかったというのが私の感想です。

     結果として朝日新聞のこうした姿勢は国民の支持を得られず安保法制をめぐる議論は空振りになってしまったわけですが、その後「対案なき保守勢力の否定」ということが朝日新聞のトレンドとなり、他方で吉田調書問題・従軍慰安婦問題を通して積極的な報道に対する信頼を失い、消極的な反権力アジテーションの技術のみが歪に発展し「ゴシップ新聞化」しつつあるのが、朝日新聞の現状なのではないかというが私の理解です。今回の著作ではこうした理念を失い、反権力としてのテクニックだけが発展している現在の朝日新聞の状況を「反権力ごっこ」と揶揄させていただきました。

     他方で「では保守勢力が今健全な政治を行なっているのか」というと、やはり長期的な財政課題を無視して、本当に必要な社会保障や雇用制度の改革には手をつけず、短期的な経済浮揚のテクニックを駆使し、小手先の改憲に走っている感は否めません。こうした保守の劣化は、リベラルの劣化と裏表というのが私の意見で、やはり朝日新聞にはリベラルとして健全な報道をしてもらわなければ困るわけです。

     そのためにはやっぱり苦しくとも、リベラルとしての21世紀の日本のあり方を朝日新聞は示すべきで、例えば護憲に固執せずに「21世紀の平和国家としてのあり方を実現するための改憲論」を展開して、集団的自衛権に頼らずともすむような国連改革なり自衛隊改革なりの在り方や、人間の安全保障の観点から少子高齢化時代の社会保障制度のあり方を提案する義務があるのではないかと思っています。

     そんなわけで、私なりに精一杯愛を込めて朝日新聞を中心とするリベラルメディアをディスり尽くした本ですので、みなさん是非ご一読いただければと思います。やっぱり私も「日本は二度と戦争すべきではない」という朝日新聞の主張自体には深く同意するんですよ。なんせ私自身戦場に立ちたくないですしね。あとは議論の実質を伴わせてくれという話でして。
     ではでは今回はこの辺で。


    「宇佐美典也のブログ」より転載
    http://usami-noriya.blog.jp/

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