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  • 拡大するクリスチャン・フォビア

    ウイーン2

    イタリアのミラノ大聖堂(2012年8月、撮影)

     イタリアの「宗教の自由監視」調査官、トリノの社会学者マシモ・イントロヴィニエ氏(Massimo Introvigne)は「宗教活動で殺害されたキリスト者は今年、少なくとも8万人と推定される」という。バチカン放送とのインタビューの中で語った。

     「統計は非常にあいまいな点もある。なぜならば、アフリカでのキリスト者の迫害が宗教理由によるのか、それとも部族間の闘争の結果かで、数字は全く異なってくるからだ。例えば、コンゴや南スーダンのキリスト者の迫害をどのように見るかで統計は異なってくる」と説明したうえで、「アフリカのケースを除くと、今年はキリスト者の犠牲者数は少なくとも8万人と考えられる。犠牲者数は昨年(10万人)より減少したが、キリスト者への迫害は世界的に拡大してきている」という。
     
     米国務省発行の「2013年宗教の自由レポート」によれば、宗教迫害が強い国はビルマ、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、ウスべスキスタンだ。イントロヴィニエ氏によれば、「最悪国は北朝鮮だ。北では聖書を持っているだけで強制収容所に送られ、多くは処刑されている」という。その一方、「迫害が厳しいのにもかかわらず、北ではキリスト教の信仰を求める青年たちが絶えない。」と述べ、北でキリスト教への関心が静かに広がっていることを示唆した。

     北朝鮮の首都、平壌は“東洋のエルサレム”と呼ばれ、キリスト教活動が活発な時代があったが、故金日成主席が1953年、実権を掌握して以来、同国にいた約30万人のキリスト者が消え、当時、北に宣教していた大多数の聖職者、修道女たちは迫害され、殺害された。それに対し、北側は「通称、宗教問題に関する米国のわが国への批判は根拠のない、政治的扇動に過ぎない。わが国ではコリア型社会主義国家のもとで宗教の自由は保障されている」(労働新聞)と反論したことがある。

     一方、アフリカでの宗教弾圧について、例えば、ナイジェリアでは他宗派の信者を殺害するイスラム過激派テロ組織が暗躍している。アフリカの最大人口を誇るナイジェリアのイスラム過激派グループ「ボコ・ハラム」(西洋の教育は罪)だ。「ボコ・ハラム」は教会、学校を襲撃し、教室を爆発し、教師を殺害するなど、テロ活動を繰り返してきた。同テログループは過去4年間で3600人以上を殺害したという。

     ナイジェリアは、1960年の独立後、クーデター、内戦を繰り返してきた。99年にキリスト教徒のオバサンジョ大統領が就任し、軍政から民政に移行した。同国は36州から構成された連邦国家だ。北部はイスラム教徒、南部はキリスト教徒、アニミズムを信仰する住民が住んでいる。人口的には約半分がイスラム教徒、約40%がキリスト教徒だ。また、キリスト教国ケニア(人口の約80%がキリスト信者)の首都ナイロビでも隣国ソマリアから侵入した国際テロ組織アルカイダ系の「アル・シャバブ」によってキリスト信者達が殺されている、といった具合だ。

     米国内テロ多発事件(2001年9月)以降、イスラム教徒に対するイスラムフォビア(イスラム嫌悪感)現象が欧州の各地で広がっていったが、中東・北アフリカでは少数宗派のキリスト者への迫害(クリスチャン・フォビア)が拡大してきたわけだ。ただし、イントロヴィニエ氏は「キリスト者迫害はここにきて西側社会でも目撃されるようになった」と付け加えている。

    (ウイーン在住)

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