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    豊田 剛
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    宮城 能彦
    宮城 能彦
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    戦後政治の損失~それは真正リベラルの喪失だ~

     「リベラル」という言葉を聞いて、本稿の読者は何を思うのだろうか。「リベラル=左翼」「リベラル=反日的思想」「リベラル=共産党」と連想をする方が一定数いるだろう。それは非常に残念であり、かつ国益の損失であることを知っていただきたい。

     政治学の本場であるヨーロッパにおいて、リベラルとは左翼的政治思想を意味し、経済政策に関しては社会主義的傾向を志向すると認知されているのは確かである。だが、ヨーロッパにおいてのリベラル派や左翼というのは、実は反日に代表されるような「反国家」「国家の否定」ではない。また、共産主義を賛美するものでもない。左翼やリベラルの発祥ともいえるフランス革命において、王政打倒をする勢力を左翼・リベラルの側に立った当時の民衆が担ったのは確かだろう。非常に、急進的で共産主義的な革命に近い。これに対して、「保守主義の父」と呼ばれているエドマント・バークは名著「フランス革命の省察」で徹底的に批判している。

     しかし、それから何百年の年月が経過しただろうか。時の経過、時代の移り変わりで、政治思想もまた変化をする。近現代のヨーロッパにおいて、リベラリズムとは、むしろ個人主義的で自由放任な社会を克服する要素が加わっている。そして、国家や政府を否定せず、それどころか政府による一定の規制を求める立場だ。政府による福祉政策を重視しつつ、安全保障に関してはリアリズムの立場をとることも多い。愛国心を否定せず、むしろ愛国心を持ち、君主国ならば君主国を否定せず、君主を尊重する。

     よく、日本の「自称リベラル」の人たちは、スウェーデンモデルを賛美しているが、スウェーデンモデルを作りあげたスウェーデンのリベラル政党やそれに付随する勢力は自国の立憲君主制を否定していないし、安全保障政策は日本の保守派の主張に近い。

     振り返って、日本のリベラリズムはどうだろうか。日本のリベラル勢力は「革新勢力」とも呼ばれており、国会に議席を有する政党でいうなら、民進党や社民党、共産党などに代表される。確かに、彼らも福祉の充実を訴えているが、その財源を論争する際の主張を観ていると、まるで米国の共和党の極右勢力「ティーパーティー」に代表されるような、財政均衡主義、緊縮財政の推進をそのまま引用しているというから、ただ笑うしかない。

     ヨーロッパにおいて、リベラル派の福祉政策および経済政策は、金融政策と財政政策のポリシーミックスを採用する、いわゆるケインズモデルを主張。経済成長によって得られた税収により、所得の再分配を掲げている。戦後の高度経済成長期の日本はまさにこの政策を採用して、現在の世界に誇れる国民皆保険制度を実現し、さまざまな社会保障制度を充実させてきた。これを行ってきたのは、どこの政党だろうか。1955年に、自主憲法制定と自主防衛の確立を訴えて、保守合同し結成された自由民主党に他ならない。

     自由民主党に対する保守派からの批判は多々あるが、日米安全保障条約の改定や自衛隊の創設、核武装容認論者もいるほどで、石原慎太郎元東京都知事が自由民主党国会議員時代に結成した党内政策集団の「青嵐会」が存在した。マスコミは、こぞって「自民党の極右勢力」と批判したほどだ。

     日本の進歩的文化人と呼ばれる人たちや朝日新聞を筆頭とする左派メディアは、自由民主党を「右翼」と罵ってきたが、経済政策の流れを考察するとリベラル的傾向が目立つ。バブル崩壊以降、新自由主義的経済政策が目立つようになり、増税・緊縮財政路線に転換したが、この「自民党にとっての異常事態」のときに、「経済右翼」と批判したメディアは少ない。そして、新自由主義的経済政策を継承して、さらにデフレ経済に追い込んだのが、あの「悪魔の3年半」の政権を担った民主党政権に他ならない。

     2012年末に成立した第2次安倍内閣以降、デフレからの脱却を訴えて、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、成長戦略の三本柱で現在も進めている「アベノミクス」は、実はその根底にある経済思想は、欧米のリベラル派が好む社会自由主義に基づく。ケインズモデルといってもいい。保守政権といいながら、実は経済政策は欧米の左派政権が行う政策なのだ。確かに、財務省による圧力とその御用学者や御用メディアにより、消費税率を上げ、公共事業費は増えず緊縮財政路線に変質している部分はあるが、アベノミクス初期に立ち返ることができれば、経済成長は可能だし、デフレからの脱却も可能で、安全保障政策で積極的平和主義を掲げて、安全保障法制を成立させ、リアリズムに基づく国際政治を行っている点では、欧米とくに北欧では現代的なリベラル政権ともいえる。

     また、自主憲法制定を掲げて結党された中山恭子代表率いる日本のこころを大切にする党も、一部から「極右」などとレッテルを貼られるが、経済政策の中身はケインズモデルの立場に立ち、給付型奨学金の創設または教育費無償化を訴えているから、どこをどのように解釈すれば極右になるのは理解できない。

     昔、自主独立と自主憲法制定を訴えて、拉致問題にも積極的に取り組んだ民社党が存在した。日本では、保守政党と呼ばれて、西村眞悟氏などの政治家がいたが、経済政策においては社会自由主義路線であり、現在の日本のこころを大切にする党に近い印象も受ける。

     本来のリベラル的な政策をしている政権や政党を、「ネトウヨ政権」「極右政権」などとレッテルを貼る自称リベラル勢力は、振り返ってみれば、経済思想はまさにティーパーティー。そして、反日的な主張を展開する。彼らは左翼は左翼でも、旧ソ連や中国共産党についていった社会主義勢力であり、いわゆる共産主義勢力だ。現在の日本は、本来のリベラル、自由主義社会を基調とし西欧的なリベラル勢力を失って、その役割を保守勢力が担うという「ねじれ状態」に陥っている。我が国には、本当のリベラリズムが存在しない。これこそが、戦後政治の損失である。

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