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  • 菊田 均
    菊田 均
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    小名木 善行
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    大島 直行
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    時広 真吾
    時広 真吾
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    渡辺 久義
    渡辺 久義
    京都大学名誉教授

    記憶のクリーニング

     先回の記事で、一見非常に奇妙な問題解決手法「ホ・オポノポノ」について触れました。私はなにもその宣伝マンではないのですが、この奇妙なものの見方が、実は意外に奇妙ではなく、むしろかなり正常なものであり、私たちが遭遇する種々の問題を解決するのに極めて有効ではないかということを示してみたいために、一つの実例を紹介しようと思います。

     この手法の普及者として最も有名なのが、ハワイ出身のイハレアカラ・ヒューレン博士です。ヒューレン博士がシメオナ女史からホ・オポノポノの手法を伝授された後、ハワイのある収容施設に請われて、約5年間、奉職したことがあります。そこの主たる収容者は、殺人や強姦などの重罪を犯した精神障害者です。

     博士が収容者たちの治療に当たるという名目で着任した当初、その施設は満室でした。収容者の間では暴力が日常茶飯事であり、その暴行は職員にも及んでいたため、収容者が暴れないように大量の薬を投与し、手錠と足かせでベッドに縛り付ける。職員も怖くて、様々な理由をつけて欠勤するというのが常態でした。つまり、施設の関係者の中で誰一人として、収容者たちを治して退院させることができると考えている人はいなかったということです。

     資格を持った精神科医でもないヒューレン博士がこの施設に着任して取りかかった仕事は何だったか。博士は職員のミーティングに一度も顔を出したこともなく、収容者の誰一人に面接したこともない。やったことは、ただ一つ。毎朝出勤すると、収容者たちの名簿を見ながら、その一人ひとりについて「クリーニング」をひたすら続けたのです。

     この「クリーニング」というのが、ホ・オポノポノの中心的な手法です。収容所でこれをどのように実践したかというと、収容者たちの名前を一人ひとり確認しながら、「なぜこの人が、このような重罪を犯すようになったのか。その原因は私の中のどの記憶にあるのか。その記憶をクリーニング(つまり浄化、消去)してください」と念ずるのです。

     これを毎日、何カ月も続けていくうちに、博士は自分の体の内部に、ある「痛み」を感じ始めました。それは名前を上げて念じ続けている収容者たちが彼らのうちに抱えている「痛み」なのです。それを博士は共有し始めたということです。博士が感じ始めたその「痛み」が博士の中から消えていけば、その「痛み」は同時に、収容者の中からも消える。それが、クリーニングの考え方です。

     実際、収容所は何か変化したのでしょうか。数カ月経つと、収容者たちが次第に落ち着いてきて、投薬の量が減り、手錠、足かせを外せるようになってきました。更にしばらく経つと、回復する収容者も出てきて、やがて別のより軽度な施設に移せるようにもなってきたのです。

     そのような変化の恩恵を受けたのは、まず職員。彼らのストレスが大幅に軽減され、常習的な欠勤が減ってきました。次に恩恵を受けたのは、施設内の植物たちです。それまでどんな植物を植えても枯れて育たなかったのが、きちんと育つようになりました。さらに、誰もいない夜中に流れっぱなしになることの多かったトイレの水が止まりました。

     絶対に治らないと思われていた収容者たちが次々に退院していき、博士がそこを辞める頃には、施設内の暴力は全くなくなっていました。そして最終的に、その施設の収容者は一人もいなくなった、つまり、その施設は必要なくなったのです。

     収容所の本来の目的から見れば、これは大変な成果でしょう。もっとも、懐疑的に見れば、この変化がたとえ事実だとしても、それがヒューレン博士の行為と直接の因果関係があるかどうかは確認できません。しかし、博士以外のすべての職員が収容者たちの治癒を想像もせず、努力もしていなかったとすれば、博士の行為が施設内の劇的な変化に何らかの力を及ぼしたと考えても、おかしくはないでしょう。

     それを是認した立場で考えてみると、施設内で起こった変化は次のように解釈できます。ヒューレン博士が施設に着任して、収容者たちの抱えている深刻な問題を見た。その問題の第一の原因は、収容者本人にあるのではなく、それを見た博士自身の潜在意識の中にある「記憶」にあると考えた。つまり、博士の中の「記憶」が再生されることによって、博士は目の前に収容者たちの問題を見ることになったと解釈したのです。そこで、博士はその問題の原因となっている自分の中の「記憶」を消去することに専念した。そして、その記憶が消去された時、その記憶を共有していた収容者の中からも、記憶が消去された。その結果、収容者は自分が抱えていた記憶が二度と再生されることがなくなったので、問題からも解放された。

     このように見ると、問題が解決していくプロセスのほとんどは、博士の内面、つまり「セルフ」の中で展開されていることが分かります。それで、この問題解決法を正式には「セルフ・アイデンティティ・スルー・ホ・オポノポノ」と呼ぶのです。

     この手法の根底にある考え方が、「私が遭遇するすべての問題の原因は私の(記憶の)中にある。故に、その問題は私が責任をもって解決すべきだし、また私によって解決できる」というものです。

     このような極端な考え方を肯定的に受け入れるにはかなりの抵抗がありましたが、結果的には、この考え方によって、私の蒙が大きく開かれた気がしています。この考え方は、すべての問題の解決を「自分の内面」から始めようとする。したがって、自分が出会った問題に対する「弁解」がまったくないし、他者への批判もまったくない。「これほどスッキリした潔い考え方があるのか」という清々しさを感じるようにさえなったのです。

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